岡田克也外相は4日の記者会見で、後任者に引き継いだ日米核密約文書がなくなっていると外務省元幹部が指摘していた問題で、破棄・紛失の経緯を確認できなかったとの調査結果を発表した。2001年の情報公開法施行前に、これらの文書が文書整理の一環で廃棄された可能性が「小さくない」としている。
この元幹部は東郷和彦元条約局長。衆院外務委員会などで、密約関連文書を「赤ファイル」に整理し、対処方針メモとともに1999年に後任の谷内正太郎元外務次官に引き継いだと説明。この文書の一部が、外務省が公表した密約調査関連文書の中に見つからなかったと証言していた。
調査は、岡田氏や外部有識者らによる調査委員会で行った。谷内氏は同委に対し、資料は引き継いだが「赤ファイル」の記憶はない▽文書には目を通さずに、すべて担当課に下ろした▽後任者には資料を引き継いでいない――などと証言。東郷氏が文書リストを送ったとした藤崎一郎駐米大使(当時の北米局長)も「はっきりした記憶はない」と説明。関係職員への聞き取りでも、文書やメモを確認した人はいなかったという。
同委では、東郷氏から谷内氏に対して資料が引き継がれたとの説明では双方が一致したとしつつ、ファイルやメモの存在は「確認できなかった」とした。その上で、なくなった文書が写しだった場合は廃棄は「直ちに違法とまでは言えない」とする一方、原本が含まれていたとすれば「極めて遺憾」とした。