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[19113] 魔法戦記リリカルなのは Yuno  (逆行 改変 )第六話投稿
Name: 剣聖◆a5c84342 ID:10285d3b
Date: 2010/06/03 17:48
以下注意。


まずこれはユーノが主役になります。影薄い時もあるかもしれませんが。

次にオリキャラ達がかなり出てきます。それに伴って原作キャラとオリキャラのカップリングもあると思います。

ユーノつよし、です。オリジナルの魔法もいくつか......

更新超不定期になります。何故なら他にも書いてるから。

最後に、多分ユーなのです。

それでは、以下短いですがプロローグです。





















プロローグ
















ーーーあれ?視界がボヤけてる......?


金髪の青年は床に腕を投げ出して倒れたまま、周りを見る。
その口からは紅いドロドロの血が出ていた。
口だけでは無い。
全身所々から血が出ている。
バリアジャケットはとっくの昔に維持できなくなっており、管理局の立派な制服はボロボロ。

そんな瀕死の彼の視界に、安らかに眠る金髪の少女が入った。


ーーーよかった、ヴィヴィオは無事か。


ホッとして、そう声に出したいが出せず、心の中で呟く。

無茶をし過ぎた。

特にゆりかごの最後尾までチェーンバインドで壁抜きなどしたのが、そもそもの間違いなのだ。
だが、そうしなければ救えない命が在った。だから彼はやった。


ーーー僕は彼女の分まで人々を救うことが出来たんだろうか?


心の中で問いかけるが、それに答えるものは無い。
相棒たる紅い宝石もすでに亀裂が入り、機能を停止している。
ビキビキと悲鳴を上げる空間内で、










「ーーーなのは......」









最後に彼は、小さく、本当に小さく、愛しい失われた彼女の名前を呼び、この世を去った。




ここでこの変わってしまった物語は終焉を迎える。


そして始まるのは、新たなる全く違った物語。

それがハッピーエンドになるのか、バットエンドになるのか、分からない。

ただ一つはっきりと分かるのは。



この物語の主人公が彼だと言うこと。



翡翠の少年は諦めずに歩く。

何故なら、彼女から受け継いだのだから。





諦めずにどんな困難があっても立ち向かう「不屈の心」を。










[19113] 第一話 それは違う過去なの
Name: 剣聖◆a5c84342 ID:10285d3b
Date: 2010/05/26 23:16











第一話 それは違う過去なの











(......あれ?)


彼、ユーノは自分の体に疑問を持った。
僕は傷だらけだったはずだ。なのになんで痛みが無い?いや、死んだんだったか?でも、この感覚は......

彼は、閉じていた瞼を開いた。



死んでたら開けないはずの瞼を。



「生き、てる......?」


目から入る太陽の光が、これが現実だということを教えてくれる。
ユーノは信じられなかった。
自分はヴィヴィオを助けるために命の全てを差し出したはずなのだ。
なのに何故......?

ガバッと身を起こし、両手を目の前に持って来る。
そこでユーノは更なる異変に気がついた。


小さいのだ、手が。
しかもそれなりにマメを潰したせいで硬いはずの皮膚が、やけに柔らかそうに見える。


「......」


服を見る。民族衣装だった。
髪を触ってみる。短かった。
足を見てみる。小さかった。


「......はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


ぶっちゃけ言うと、子供になっていた。
九歳ぐらいのあの頃に。







~只今絶賛混乱中です。暫くお待ちください~








「はぁ、はぁ......」

『大丈夫ですかユーノ?病院に行きますか?』

「いやレイジングハートそうゆうのはいいから」


相棒たるデバイスの言葉に突っ込んだ後、ふぅーと息を吐くユーノ。
取り合えずレイジングハートから聞いた話と照らし合わせてみる。


・先程までユーノはゆりかごに居た。これは夢でも何でも無い。何故なら頭の中にオリジナルの魔法の術式が在って、使えるから。

・現在はジュエルシードを奪われた次の日らしい。これからこの世界、「第九十七管理外世界」にてジュエルシードがばらまかれた地域を探っていく予定だった。

・何故か魔力量は未来の時と同等。これにはレイジングハートも驚いていた。



これらから読み取れる可能性は、


「逆行ってヤツなのかな......いやでも......」

『だとしたら魔力量のことがおかしいです』

「うん、もしかするとリンカーコアもって、意外だね」

『何がですか?』


紅い球体をチカチカさせながら、レイジングハートはユーノに尋ねる。
ユーノは歩きながらも胸元のデバイスに言った。


「いやだって、さっきまで『病院行きますか?』なんてことを言ってたのに......」

『......あんな魔法プログラムを突然インストールされたら誰だって信じます』


レイジングハートは体があったらため息でも吐いてそうな呆れた声で返す。

ユーノが先程レイジングハートに入れた魔法プログラムは正直に言って信じられなかった。
それこそ天才魔導士が開発に二十年はかかるであろう魔法達。
特にチェーンバインドとラウンドシールドの改良具合は凄まじかった。

まるでユーノのために作られたかの用な魔法になっていたからだ。


「まぁ、五年かけて作り上げた魔法だしね」

『五年、ですか......』


二十年じゃなくて五年ですか、と内心でツッコミを入れるデバイス。
ユーノの天才っぷりがうかがえた。


「......十年前、か......」

『ユーノ?』


ユーノは返事を返さず、黙って空を見上げた。



ーーーどんな事をしても、過去は取り戻せないんだよ!いい加減目を覚ませ、フェレットもどき!!



悪友にぶん殴られた時のセリフが、頭に思い浮かぶ。
そう、あの時彼は思い知った筈だった。

失った物は、どう足掻いても取り戻せない物だと。

だが、今はどうだ?自分は彼女を取り戻しているといっても過言では無い。
ならばどうする?折角のチャンスを捨て去るのか?


「......絶対に、死なせない」

『......誰をですか?』


突然のユーノの宣言に、恐らく未来のことが関わっているのだろうと考えながらも、レイジングハートは尋ねてみる。

ユーノは空を、かつて彼女が自由に舞っていた蒼い蒼い空を眺めながら、答えた。





「大事な、とても大事な、僕の恩人さ......」














「ジュエルシード、封印!」

『Sealing』


あれから五時間後、ようやく一個目のジュエルシードを見つけ、ユーノは封印する。
発動前に見つかったのはラッキーだった。
前は戦ったのだから。
今回は海鳴に来るのが早かったためだ。


「さて、暴走体になる前に見つけれてよかったよ」

『前は戦ったのですか?』

「まぁね.....半ば不意打ち気味で。取り合えずもう一個は見つけれるはずだよ」


自分の記憶(うろ覚えだが)と照らし合わせつつ、ユーノはレイジングハートをスタンバイモードに戻す。


「次のヤツも暴走体にならなきゃいいなぁ......」










「グォォォォォォォォォッ!!」

「......暴走しちゃってるね......」

『えぇ、ものの見事に』


夜の森の中を蠢く黒い生物を見て、ユーノはため息を吐く。二個目を見つけたと思ったら間に合わなかった。
その結果が目の前の君の悪い生物。

そんなユーノを視界に捉えたのか、金色の双眼を光らせ、その生物は臨戦態勢を取る。


「でもまぁ」


ユーノはパチン、と指をならして結界を展開。
そして手にレイジングハートを。






「肩ならしには、ちょうどいいかもね」






そう、経験から来る余裕の笑みで言った。


『Set UP』


レイジングハートの自動詠唱により、バリアジャケットが形成される。
そしてユーノの手に収まったのは、長さが違えど、彼女の杖とほぼ同じ杖。


「いくよ、ジュエルシード」

「ガァァァァァァァッ!!」


知能のレベルが低い獣は、ユーノに向かって突っ込む。
その巨体に似合わぬ凄まじいスピードで迫って来る敵に対して、彼は立ったまま動かない。
そして杖を持った右腕をダラン、と下げたまま、彼は左手だけを向ける。
そして一言。


「ラウンドシールド」


デバイスの補助を全く受けずに発動された防御魔法が展開される。
魔力によって編まれた深緑の魔法陣が壁のようにユーノの前に現れた。

当然敵はソレをかわすだけの思考能力は無い。
正面から壁に激突した。


「グォッ!」

「スバル達に比べたらとてつもなく遅いよ」


壁と拮抗することすら出来ずに吹き飛ぶ黒い塊を見て、ユーノは言ってやる。
そしてユーノの周りで小さな、一つ直径五センチくらいの魔法陣がいくつも展開された。
その数約二十。

高速回転するその魔法陣を横目で見て確認してから、ユーノは右手に持つレイジングハートを振った。


「チェーンバインド」

『Shot』


魔法陣から一斉に、緑色の鎖が放たれる。
但し超高速で。さながら弾丸のように。

その放たれた鎖達の威力は凄まじく、木々を薙ぎ倒し、地面にクレーターを作りながらも突き刺さる。
そして勿論敵にも。


「グォォォォォォォォォッ!」


次々と体を貫かれ、絶境を上げる。
だがそれだけでは終わらない。
ユーノは左手の手のひらを上にし、グッ!と握り締めた。

瞬間、見当違いの方向に行った鎖も、地面に突き刺さった鎖も、一斉に締め上げられる。
悶えていた敵を中心にして。


「グッ、グォォォォォォォッ!」


解こうと敵はもがくが、幾重にも頑丈に編まれた鎖はビクともしない。

ユーノのは射撃や砲撃といった攻撃魔法が全くと言っていいほど使えない。
せいぜいが魔力刃の形成が限界だった。
これは武装隊としては致命的な欠陥。
後衛ならともかく、彼が目指したのはバリバリの前衛だ。

ならば彼はどうしたのか?
苦手な攻撃魔法を習得しようと躍起になった訳では無い。

彼は、自分の得意な魔法で戦えないか考えた。
そして答えがこの攻撃。
チェーンバインドの構成を自分でほとんど行い、レイジングハートには補助の術式、加速と回転の術式を頼んでいる。
これにより彼は射撃を手に入れた。
しかも捕縛機能付きの、ある程度誘導もきく。

更に、もう一つ。


「悪いけど、バインドは自信があるんだ」


ユーノはそう苦笑しながら、ポツリと、とどめの一言を言った。







「弾けろ」

『Burst』


レイジングハートの合成音とともに、バインドを構成していた魔力が弾け、大爆発を引き起こした。






『......すごいですね』

「全然凄く無いよ。皆思いつくことだろうし」


それを現実にしているのが凄いんです、とレイジングハートはまた心の中でツッコミ。
先程まで敵が居たところはクレーターが出来て真っ黒になっており、一つの蒼い宝石が浮かんでいた。

バインドを構成している術式にあらかじめ細工をしておいて、後にトリガーたる小さな魔力を使うことで、大爆発を引き起こす魔法。
バインド一つにソレだけの術式を込めれる人間が、次元世界中に何人いることやら......


『本当に、貴方は規格外です』

「レイジングハート、なんか言った?」

『いえ何も。それよりも早く封印しましょう』

「あっ、そうだね。もう封印はしてるけど」


どうやら先程のバインドに封印の術式も加えていたようだ。
それを全くすごいと思っていない少年は、杖を宝石にかざす。

そして宝石、ジュエルシードはレイジングハートの中に収納された。


「さて、と。次は.......ッ!」

『ユーノ!?』


突然、ユーノは声を途中で切り、チェーンバインドを放つ。
チェーンバインドが虚空を貫き、「パキン」と何かを砕いた。
レイジングハートは驚愕した。何せ自分も気がつかなかったのだから。


「今のはやっぱり、隠密性のサーチャー!」

『二時の方向!来ます!』


ユーノはレイジングハートの言葉通りに其方を向く。
すると今まで魔力なんかまったく感じなかったそちらから......









赤い色の砲撃が襲って来た。



轟音を立て、空気を切り裂き、その砲撃は彼に直後する。

大地が、振動し、えぐれた。
















物語は変わる。
この世界を物語としてしか見れない存在のせいで。














後書き
眠いけど書き上げた。
コメント返しは明日で......
複数連載だと、いい感じに煮詰まらなくなる。
では、お休みなさい。



[19113] 第二話 新たなる敵と味方!?なの
Name: 剣聖◆a5c84342 ID:10285d3b
Date: 2010/05/27 20:41







第二話 新たなる敵と味方!?なの












「やったか......」


もうもうとはるか前方で立ち込める砂煙を見ながら、木の上にいた男は呟く。


「ユーノごときが何故あれ程の実力を得ていたのか......憑依か?だがこれで原作通りに......」


彼は転生者と呼ばれる者。
その彼が持つ知識ではユーノは弱いキャラだった。
出番も少なく、戦闘には確実に不向きなキャラ。
キャラ。そう、彼にとってユーノは「人じゃない」のだ。


「しかし......」


己が作った破壊痕を改めて眺める。
彼が放ったのはAAクラスの砲撃魔法。まともに喰らったら非殺傷設定とはいえ、只では済まないだろう。


「まぁいい。ユーノがダメになっても俺が代わりになるだけだ......クックックッ......」


男は気味の悪い、欲望の笑みを浮かべる。
これが目的。
物語を正しくするなどと大義名分を言いつつ、自分が主人公になりたいだけの、ただの欲望。
所詮、男にとってはこの世界は自分が楽しむための物なのだ。








「オイ」



だが、こうゆうヤツは大概ぶっ飛ばされる。
何故なら戦う時に背負う物が違いすぎるから。


「なっ!?」


男は空中にいるのに、イキナリ話しかけられたのに驚く。
バッと後ろを向くと、話しかけてきた十五歳くらいの、黒髪黒目の少年が、宙に浮いていた。


「貴様、何者だ!?」

「だれでもいいだろ?取り敢えず......」


チャキ、と胸元から少年が取り出したのは、剣の形をしたペンダント。
それを見て男は理解した。


「お前も、転生者か!」

「テメーラと一緒にされるのは少しばかりムカつくがな」


はぁ、とため息を吐く少年の周りに光りが展開し、いつの間にか黒い服を身に纏っていた。
そして両手には、二本の太刀。


「さてと、ーーーー、いざ参る」


少年は刀を構えて名乗った。


「クソ!原作キャラの家族かよ!」


男は怒りと嫉妬の炎を燃え上がらせながら、自分の持っているデバイスを向ける。
その黒い銃型デバイスの銃口に光が収束してゆき、


スパッと、銃身が断ち切られた。魔力の収束も掻き消える。


「はっ?」

「いやはっ?じゃねぇよ。こんな至近距離で砲撃とか何考えてんだ?」

「っ!?」


冷や汗を垂らしながら、切られたデバイスをもった状態で、男は後ろを向く。
そこには太刀を持ったまま此方を見て来る少年。
その体からは黒い魔力光が出ていた。


「バ、バカな......こ、こんな力の差が......」

「背負っている物が違いすぎるんだよ」


太刀を再度軽くひと振り。
そして二本の内の右手の方を前に向けて、


「さて、覚悟は出来てんだよな?」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


男は逃げ出した。
こんな化け物に叶う筈がないと。
魔力ランクAAAの自分が全く手出し出来ない敵などと、戦いたくはない。
森へと入り、簡単な幻術魔法を発動。
とにかく逃げる、逃げる。
死ぬ気で逃げる。


だが、


「グエッ!?」


突然虚空に発生した鎖に止められた。

緑色の鎖に。

幾重にも締め上げられ、咄嗟に男はバインドブレイクを発動するが、


「な、なんではずれねぇんだ!?」


いくら魔力を注ぎ込んでも、そのバインドは壊れない。
焦る、ただ焦る。
そんな男の頭上に、


「スクロールシールド」


緑色の魔法陣が出現した。

男もソレに気がつき、上の魔法陣を見る。
魔法陣は徐々に男に迫って行き、


「バリアバースト」



ドゴォォォォォォォォン!!



盛大に緑の光を撒き散らしながら爆発した。
それを喰らってようやく、男は薄れ行く意識の中で悟った。


自分は主人公などでは無いと。











「イキナリ砲撃放ってきたからビックリしたけど、やっぱり対したことないね」

(AAクラスの砲撃バリアジャケットだけで防ぐとかどんだけー)


ユーノの台詞に口調がぶっ壊れながも突っ込むレイジングハート。但し心の中で。
レイジングハートの言うとおり、ユーノはなんとあの砲撃をバリアジャケットだけで防ぎ、爆炎に紛れて森の中に隠れていたのだ。
バリアジャケットが少し焦げているが、本人は全くダメージ無し。

ユーノ曰く、「ただの力任せな砲撃で、フェイトやはやてと比べるのすらおこがましいよ。というかあんな砲撃でダメージ喰らったら一生の恥」らしい。
確かに魔力任せで集束も照準も半端だったが、バリアジャケットだけで防ぐのは多分ユーノだけだ(バリアジャケット強化の魔法は多少使っている)。

夜の木々が風に揺れる中、ユーノは地面に倒れているアフロ頭になって気絶している男を見ながら、自分の後方の闇に立っている人に話しかけた。


「で?貴方は誰ですか?この男の仲間ですか?」

「仲間だったらデバイス切ったりしねーよ」


苦笑しながら月明かりの当たる大地に踏み出して来たのは、先程の黒髪黒目の少年。
「?」と、ユーノはその姿を見て首を傾げた。
バリアジャケットを展開していない。デバイスも待機状態だ。


「和平の使者は槍を持たない、ってな。取り敢えず話を聞いて貰えないか?」

「......貴方の名前はなんですか?」


ユーノは問いかける。
その言葉にニッコリ笑って、彼は答えた。


「高町隆矢(りゅうや)だ。そっちはユーノ・スクライア、だろ?」


その名は、ユーノが聞いたことのない名前だった。
高町の性を除いて。
















「さて、まずはどこから話せばいいのか......」


公園にあるベンチにて、近くの自動販売機で買った赤いコーラの缶を傾けながら、隆矢は考える。
ユーノはそれを黙って待った。
ちなみに手には青いサイダーの缶。

サラサラと、風の力で木々の葉が自然の音色を響かせた。

決まったのか、隆矢はしゃべり始める。


「よし、俺の普通の人とは違う点から言うか。実はな、俺は......転生者なんだ」

『病院行けよ』

「グハッ!?」

「ちょ!?隆矢さん!?」


隆矢、いきなりのレイジングハートの容赦ないツッコミを受け吐血。
ユーノ、慌てて背中をさする。違うユーノ。これは肉体的じゃなくて精神的なダメージなんだよ。それもかなり痛い。


『転生者?バカですか?信じられる訳ないでしょう?中二病は自分の部屋でやってください』

「あれ......?何でだろう?なんかキレイなお花畑が見える......」

「隆矢さぁぁぁぁぁぁんっ!?そっちに行っちゃダメェェェェェェッ!レイジングハートもキャラ壊れてるよ!?」


隆矢、あの世の一歩手前。
ユーノ、必至に隆矢に声をかける。
レイジングハート、余りの不思議の連続にAIにバグが生じたようです。








「危ねぇ......後少しであの世に逝くとこだったぜ......」

『逝けばよかっ「そぉい!」むぐ!?』


生還した男に毒舌を吐こうとしたレイジングハートは、ユーノの手に握り締められる。
このままだとエンドレスになりかねないからだ。


「えーと、転生者って......?」


ユーノは疑問を尋ねる。
ソレだけでは、自分の名前を知っていた理由にはならない。


「そのまんまの意味だ。前世の記憶持ちってこと。ちなみに前世は十六歳でトラックに跳ねられて死亡した」


サラッとデンジャラスなことを言うが、誰も突っ込まない。
隆矢は言葉を続ける。


「その世界でな、あるアニメが在ったんだ」

「アニメ?あの、テレビに映っている」

「そうだ」


話が見えない。何故アニメが関係してくるのか。


「アニメのタイトルは『リリカルなのは』」

「ーーッ!?」

『?』


レイジングハートは訳が分からず、チカチカと点滅するがユーノは分かった。
次に、彼が何を言うか。



「この世界は、そのアニメの世界にソックリなんだよ」



ユーノは絶句。
あまりのことに、言葉が出なかった。
なにせ、自分達の全てが物語、作り物だというのだ。













あの「事件」も。





「だけど、ソックリってだけで完璧な訳じゃない。主人公のなのはには『隆矢』なんて兄貴は存在しないしな」


それは「この世界」での話だ。
ユーノはどこか遠い思考で考える。
あの戦いも、全てが作り物。見る人間を楽しませるためのストーリーでしかなかった。


つまりは、彼女が死んだのもーーー


「で、そっちはどうなんだ?」

「......そっち?」


誰にぶつけていいのか分からない怒りを胸に秘めつつ、返事を返すユーノ。
その手は血がにじみそうなくらい、強く握られていた。


「俺の記憶がただしけりゃぁ、お前、ユーノ・スクライアは大して強くなかった。だがお前は強い。俺みたいなにわかの強さじゃなくて、本物の強さを感じる」


急に真剣な顔になり、彼はユーノを見た。
その目は、見定めるような印象を与えてくる。


「......僕は、未来から来ました」

「......?未来から?ロストロギアでも使ったのか?」

「いえ、ソレがさっぱり。ゆりかごの中でヴィヴィオを助けた時に死んだはずなんですが......」

「......はっ?」


隆矢は、人生で久しぶりに間抜けな顔を晒した。
ユーノはその表情を見て疑問に思う。
記憶が確かなら、彼はさっきアニメという名のこの世界を見たと言ったはずなのだ。
もしかすると、ゆりかごの戦いはアニメの後の話だったのだろうか?

隆矢は漸く正気に戻り、恐る恐るユーノに尋ねた。













「なのはは、どうしたんだよ?」






「ーーーえっ?」


今度はユーノの思考が停止する番だった。
隆矢は更に続ける。


「俺の知識では、ヴィヴィオを助けるのはなのはだぞ?なのはは何やってたんだよ?」


その一言に、先程まで胸に抱えていた怒りは跡形もなく消え去る。
暫くして俯いたまま、ユーノはポツリ、と。震える声で言った。




















「なのは、は。亡くなっていました」



ーーー十一歳の、あの日に。






そう告げた彼の顔は、ただ、悲しみの色に染まっていた。













「そう、か。そんな世界も、あるってことか......」

「......」

『ユーノ......』


あれから時間が立ち、月も幾分か動いている。

一人の少年と一つのデバイスが聞いたのは、とある少年の過去。
それは冗談にしては余りにも悲しくて、作り話にしては笑えなかった。


「......あー、次はこっちの話、いいか?」


シンミリした空気の中、頭をがしがしと掻きながら気まずそうに口を開く隆矢。

ユーノはソレを聞いてパンッ、と両手で頬を叩く。
気合が入ったのか、先程までの表情をカケラも感じさせずに頷いた。

それを見て、隆矢も話し始める。


「よし......実は俺以外にも転生者はいる」

「貴方以外にも?」

「あぁ。俺が仲間だけでも二人いる」

『先程の男も転生者の一人ですか』

「ほぼ百パーセントな」


アフロ頭(になった)男をユーノは思い出す。
あの後森に放置してきたが大丈夫だろう、きっと。


「さて、転生者には三つのパターンがある」


前に手を出し、指を三つ立ててからまず一つ目、薬指を下ろす。


「まず原作知識......つまりアニメを見ていない人間だな」

「あ、確かに全員が見てるって訳じゃないですよね」


ユーノも納得する。
新聞だって、世の中の一人一人、全員が見ている訳じゃないのだ。


「次に二つ目、原作知識を持っている者」


中指を下ろす。
残るは一本。


「最後に、俺みたいに原作キャラの血縁者など、だな。これは俺以外知らないが」


指が全部下ろされグーの状態に。
ユーノは今聞いた話を脳内で反復。自分の知識に仕舞い込んだ。


「そして、それらから更に三つに行動が分かれる」



「原作に関わってストーリーを変えるか」

「原作を維持してなるべく干渉しないようにするか」

「原作に関わらない、もしくは流れに任せるか」



『三つ、ですか』

「あぁ。まっ、過激派穏便派個人団体などなど様々に分かれてるんだが」



さっきのアフロは個人の過激派だと思う、と彼は付け足す。
というか、アフロと呼ばれる男A哀れ。


「つい半年ぐらい前までかなり転生者同士の争いは激しかったんだ。だけど俺等で止めた。長くなるから止めておくけど、今は二つの団体が纏まってるから大丈夫だ。但し、さっきみたいなバカもいるが」

「確かに......いきなり砲撃魔法は無いですよね」


苦笑しながらユーノは隆矢の意見に同意。
非殺傷設定とはいえ、いきなり攻撃するヤツなどバカ以外になんと言えと。


「この時点で原作とは随分ズレてる。お前の過去とも大分違うだろ?」

「確かに」


そう、この時点で『原作』とやらとはかなり違っている。
まずユーノの逆行、実力。
次に転生者達の存在。
そして、何よりもーーーー



「所でさ、ユーノ。これからのこともあるし、来ないか?」

「......?」

『どこへですか?』


首を傾げるユーノの変わりに、レイジングハートが尋ねる。
それに笑顔で、高町隆矢は言った。







「ウチに、高町家にだよ」


それを聞いた瞬間、ユーノの顔が強張る。

それは、ユーノにとって最高の提案でもあり、最悪の提案でもあった。



そして、何よりも、嬉しいことはーーーー


ーーーー高町なのはが、魔法のことを現段階で全く知らないこと。


















翡翠の少年は仲間を得る。
愛しい彼女の代わりに。









後書き
連続投稿なんだよ!
赤松板の方は土日に一気に書き上げる。
高町隆矢というオリキャラ登場。
説明も追加します。いつか。

感想ありがとうございます。
では。

なのはを、やっと出せる......!



[19113] 第三話 感動の再開!そして......なの
Name: 剣聖◆a5c84342 ID:10285d3b
Date: 2010/05/28 23:15









第三話 感動の再開!そして......なの










「......」

「おーい?いつまで黙ってるんだ?」


あれから黙り込んだままの少年に、ため息を吐きながら喋りかける男。
二人はある家の前に立っていた。

その家の表札には「高町」の文字。


彼にとっては、愛しの彼女の家であり、自分が決して入ってはならないであろう場所。
その家の前に、二人は立っていた。










話は少し前にさかのぼる。












「......ダメですよ」


ユーノはベンチに座り込んだまま、苦虫を噛み潰したかのような表情で答えた。
その翡翠の輝きを持つ瞳には、負の精神がありありと見て取れる。
その瞳を見て、隆矢も少し表情が強張った。


「......なんでだ?さっきの話を聞くかぎり、お前はなのはに会いたいんじゃないのか?」

「......僕に、そんな資格は無いんです」


俯いたまま、ユーノはそう呟く。その声は何かを押し殺したような響きを伴っていた。
そんな彼を見て隆矢は少し、ほんの少しイラツク。
見た目ガキがそんな顔してんじゃねぇよ、と。


「それに、魔法のことはなのはには絶対秘密にしなきゃならないし......」

「あのなぁ、一度会ったくらいでバレる訳ないだろ」

「ソレでも、可能性は無くは......!」

「......あー!メンドくせぇ!」

「へむっ!?」


ずっとうじうじするユーノが頭に来たのか、いきなり近づいて腕と腰の間に抱え込む。
そして早歩きで動き出した。
そんな行動に勿論彼は抗議。


「ちょっ!?何するんですか!?おろして下さい!」

「黙れガキ!精神大人の筈なのにガキ!」

「ガ、ガキって!」

『......確かにうじうじ悩んでガキっぽいですね』

「レイジングハートォォォォォォ!?」


相棒からの裏切りと一歩分ずつ進んでゆく感覚に、ユーノは精神が削られてゆく思いだった。





『......なのはさん、とやらの名前が出始めてから、ですがね』



その性か、レイジングハートが小声で付け足したことを聞くことが出来なかった。



 








「なぁ、ユーノ。何時までジッとしているつもりだ?」


先程門を開けようとして高速で止められた隆矢は少しふて腐れながら呼びかける。
レイジングハートもそれに同意するかのように赤い光を放っていた。

一方、ユーノの頭の中では思考が渦巻く。



ーーー本当に自分は彼女に会っていいのだろうか?



これが、ユーノの最大の悩み。
ユーノの頭をフラッシュバックするのは、あの時の記憶。

彼女が死んだときの、記憶。

誰がなんと言おうと、ユーノが彼女の死の原因だ。
ユーノ自身がそう決めている。
他の誰でもない、僕のせいだと。


そんな自分が、本当に彼女に会っていいのか?


ユーノは考える。
永遠に答えが出ないであろうことを。



何故なら、ユーノは自責の念と同じくらい、なのはに会いたいのだから。



だけど、そんなことはダメだと自分に言い聞かせ、ストップをかける。
そんな思考を断ち切ったのは、



ガラッ



ユーノの目の前の門が開かれる音だった。

そして、ソレを開いたのは、







「もうお兄ちゃん! こんな時間まで何して......」


茶色の髪を白いリボンでツインテールに縛り、黄色の服を着た少女。

高町なのはその人だった。


そんな彼女の表情を見た瞬間、



プツリ、とユーノの心の何かが切れる音がした。

気がつけば、


ポロポロと、涙を彼は流していた。目の前の彼女が死んで以来、どんなことがあっても泣かなかった涙を、彼は流していた。


「えっ?えっ!?え、えっと、私何かしちゃいましたか!?」


わたわたと手を振り回しながら、なのはは慌てる。
そんな子供っぽい動作すら懐かしすぎて、

ユーノは、彼女を抱きしめていた。
ギュッと、力強く。


「ふ、ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


なのはの混乱は最大規模に突入。
なにせ兄に携帯で呼ばれ門を開けたら美少年が居て更に急に泣き出して、更に抱きついて来たのだ。
もうなのはの脳の処理能力を超えている。
なのはは顔を真っ赤にしながら慌てて、


「えっ、えっと!で、出来たらそのひっつくのは......」


が、なのははそのセリフを最後まで言い切れなかった。


抱きついて来ている少年の横顔が、余りにも悲しそうで、なのに嬉しそうで......

ギュッと、なのはも思わず抱きしめ返していた。














《貴方もなかなかやりますね》

《それほどでもないさ》


クルン、と携帯をストラップを掴んで回しながら隆矢は玄関の扉を開ける。
ユーノとなのはの間に挟まれているであろうレイジングハートに念話を飛ばしながらも、彼は玄関に立っていた兄に言った。


「ただいま。あれ、しばらくそのままにしてやっといてくれないか?」

「お帰り。......お前が言うんだから安全なんだろうが......大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ」


今までの人生で一番の自信と確信を持って彼は答えた。







「アイツがなのはに何かするなんて絶対にあり得ねぇよ」










そして十分程経ち、


「っ!ご、ごめん!」

「あっ、い、いえ......」


正気に戻ったのか、ユーノは顔を赤くしながら勢いよくなのはから離れる。
対するなのはも顔真っ赤で、二人はお見合い状態に。

深夜特有のシーンとした空気の中、意を決してなのは口を開く。


「わ、私高町なのは!あ、貴方の名前は!?」

「え、えっ!?あ、あの、ユーノ・スクライア......」


イキナリの質問にすこしユーノはビックリしつつも、ちゃんと答える。
彼女は名前を聞いて先程までの慌てようを無くして、ニッコリ笑い、


「よろしくね、ユーノ君!」


言った。少し大声で。
ユーノもそれを聞いて、


「っ!よ、よろしく!」


反射的に返した。少し大声で。

まぁ、そっくりな二人だった。












「君がユーノ・スクライア君か」

「はい、初めまして」


只今ユーノは高町家のリビングのソファーに座っていた。
念話で打ち合せた結果、ユーノは変質者に攫われかけた所を隆矢に助けられた、という設定になった。
なのはを始めとした高町家の人達が本気で心配してくれたので、良心がスゴく傷んだが。

で、そんな設定を考えた二刀流剣士はフローリングの上で正座中。
理由は「こんな夜まで外に遊びに出てた」から。


そんな訳で互いの自己紹介もして話しの中、キリがいい所で、


「えっと、じゃあ僕はこの辺で......隆矢さん、ありがとうございました」


そう言って立ち去ろうとしたが、


「まぁ待てよ」


ガシィ!と隆矢に超高速で立ったばかりの背中に回られ、腕を捕まれる。
ユーノ、ビックリ仰天。なぜなら、


《何魔法使ってるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?》

《安心しろ。恭他兄の方が早い!》


高速機動魔法より早い人間というのもある意味問題だと思われる。
ユーノの抗議をサラッとスルーしつつ、隆矢は声に出して自分の意見を述べた。


「もう大分夜も遅いんだぜ?両親も居ないんだろ?泊まっていけよ」

「なっ!?何言ってるんですか隆矢さん!?」


顔を思いっきり捻って隆矢の顔を見る。
そこにはニヤニヤした悪い笑みを浮かべた策士(?)が!


「両親が、いない......?」

「ユーノ君......?」


高町家の住人の疑問の目線がユーノを射抜いた。

結局、ユーノは両親が居ないということ、まだ海鳴に来たばかりで学校に通ってない、といえ新たな設定を付け加えるハメになった(両親は本当にいないが)。
だが家は有るので、と断ろうとしたが高町家の好意には逆らえなかった。
とどめの一言は、


「ユーノ君、泊まってくれると私嬉しいな」


というなのはの上目遣い攻撃と言葉のコンボだった。









「本当に、高町家の人は皆さんは優しすぎますよ......」

「そこは向こうでもやっぱ一緒だったか」

「はい」


隆矢はベットに横たわりながら、ユーノは床に敷いた布団に包まれながら、笑い合う。
隆矢の部屋に決まったのはなのはが「私の部屋でいいんじゃな「隆矢さんの部屋じゃダメですか!?」というユーノの妨害により決定。
ユーノ、さすがになのはの部屋に泊まるのは男として無理らしい。


「......」

「お前、今自分がこんなに幸せでいいんだろうか?とか考えてたろ?」

「なっ!?な、なんで......」

「似たような思考の持ち主に会った事があるからな」


隆矢はあきれ顔で言った。やれやれとばかりに手を上に向けながら喋る。


「あのなぁ、幸せで何が悪いんだよ?」

「えっ?」


その返答はユーノの予想とは違っていて、思わず隆矢の顔を凝視してしまう。


「お前みたいな奴の幸せっていうのは、周りの奴が幸せってこと同義なんだよ。だから安心して幸せになっとけ」

「で、でも......」

「でももテロもねぇ。いいから早く寝ろよ。明日から忙しくなりそうだしな。話の続きもあるし......」


そう言い残してガバッと布団を被る隆矢を見て、ユーノは、



「ありがとう、ございます......」



精一杯の、感謝を述べた。





















この展開が何をもたらすのか。
それは未来への一歩を踏み出さないと分からない。

















後書き
遅いけど投下。
明日はアスネギ書くぞー!
ソレにしても自分の文才の無さに頭を抱える毎日。
そして来週の英語のテストから逃げたくなる毎日。



この作品は、


一期・ユーノ過去編(なのは死亡後~ユーノ死亡まで)

二期・転生者戦争編(無印半年前、隆矢デバイス入手後~戦争終了まで)

三期・魔法戦記リリカルなのは Yuno (改変無印スタート~ジュエルシード事件解決まで)


という構成に 今 の 所 なっています。

更に続きも考えてますが。
ではまた次回!




[19113] 第四話 ジュエルシード集めなの
Name: 剣聖◆a5c84342 ID:10285d3b
Date: 2010/05/30 16:04







第四話 ジュエルシード集めなの













朝、高町家のとある一室に窓にあるカーテンのスキマから明るい朝焼けが入り込んでいた。
その光からのがれるようにベットの中を蠢く子供が一人。
その子供は白い布団に包まれながら現実と夢の狭間を彷徨っていたが、


チャララ~チャラララ~♪


現実からの音に少し意識を覚醒されられた。
ソレでもまだ眠いのか、その音を鳴り響かせる携帯電話を見ずに取ろうと片手のみを動かす。
でも寝ぼけた朝の状態でそんな事が出来るはずがなくて、ピンク色の携帯はベットの下に墜落してしまった。


「う~ん......」


唸りながらも左手をベットの下に伸ばす。
そしてカーペットの上に落ちた携帯を掴み取りボタンを押す。
その瞬間先程までの音楽がピタリと止まり、部屋に沈黙が訪れた。
その腕を伸ばした子供は携帯を自分が包まっている布団の中に連れ込み、時間を確認。
布団を目をこすりながらも捲り、起き上がった。


「ふぁ~ぁ......」


普段はツインテールにしている髪を揺らしながら少女は腕を天井へと伸ばす。
そして閉められている窓へと視線を動かし、カーテンを開け放った。

白い光り輝く太陽の光が完璧に部屋を満たす。


「......よし!」


高町なのは九歳。まだ一人で起きられるか不安な頃である。












高町家には道場がある。
その道場内は板張りの日本古来の文化を感じさせる雰囲気をかもし出していた。

そんな道場の真ん中で対峙するのは二人。
一人は黒髪に黒目の十五歳くらいの少年。
もう一人は金髪に碧眼の九歳くらいの少年。
前者は長い木刀を二本両手に持ち、後者は長い木刀を一本だけ右手に携えていた。
二人とも相手の目を見て、いつでも飛び出せるように足に力を込める。


「......ふっ!」


飛び出したのは金髪の少年。五メートルの距離を縮めんと、板張りの床を力強く蹴る。
対して黒髪の少年は動かない。
二つの木刀をダラン、と下げたまま身体を屈める。
金髪の少年が迫った瞬間、常人には絶対に視認出来ないであろう速度で木刀が二本振るわれる。
上段と下段、二つの攻撃に彼は跳んだ。


「!」

「はぁっ!」


下段からの右側からの木刀による攻撃は右足で相手の手首を踏んでかわし、上段の左側からの木刀による攻撃は自分の持っている木刀を打ち付ける。

ガンッ!と木刀どおしが当たる鈍い音がして、木刀二本が宙に舞う。
二人共、片手で扱っていたため余り強く握られてなかったのだ。
ソレでがら空きになった腕を金髪の少年は右手で掴み取り、右足を軸にして回転。回し蹴りを放った。
左足の足の裏が黒髪の少年の顔面に迫る。
だが黒髪の少年は少し頭を屈めることによりソレを回避。そして踏みつけられていた腕を強引に動かして、金髪の少年に木刀による一撃を打つ。
その一撃を身体をバネのように反らすことで回避。
そして床に背中側からぶつかり、受身をとって起き上がり距離を取る。
再び睨み合いになった二人の頭上からクルクルと高速回転する二本の木刀が振ってきた。
ソレを見て、黒髪の少年が突っ込んだ。


「ラァァァァァッ!」

「ッ!」


二本の木刀が丁度二人の間に落ちかけた瞬間、木刀どおしの衝突音と激しい踏み込みの音が道場内に響き渡る。


「それまで!」


二人の闘いを傍観していた男と女性のうち、男がストップをかけた。
ピタッと戦っていた二人の動きは止まり、木刀の動きも止まる。
黒髪の少年の木刀は金髪の少年の首筋に突きつけられ、金髪の少年の木刀はもう片方の木刀に防がれていた。

つまり、黒髪の少年の勝ち。


「......ふぅー」


大きく息を吐きながら、金髪の少年、ユーノ・スクライアはひんやりした道場の床に転がった。

熱を持った体が道場の床によって冷やされてゆく。


「中々やるじゃねぇか。よっぽどいい人に教わったんだな」


黒髪の少年、隆矢の質問に少し苦笑いしながらも答える。


「主にシグナムさんやザフィーラさんに教わってましたから」

「あぁ、なるほど」


隆矢は「恐らくあの二人スゴイスパルタなんだろうなー」と呟く。
その光景を見ていた男、士朗と女性の美由紀は漸く関心しながらも二人に話しかけた。


「いや~、ユーノ君スゴイじゃないか」

「本当だねー。普通の人だと隆矢相手にあそこまでもたないよ」


二人に褒められ照れながらも床に手をついて起き上がる。
朝から何をしているのかと言うとユーノがたまたま隆矢が起きたさいに一緒に起き、どうせなら一緒に鍛錬でもする?ってことになったのだ。
で模擬戦でもということなのだが......正直、隆矢の想像以上だった。
原作三期のなのはがある程度接近戦も出来たことからユーノもある程度はできるんじゃないか?とは思っていた。だが素人目に見てもかなりの技術、力を持っていた。

考えてみればわかり切ったことだ。ユーノは射撃・砲撃魔法がつかえない。だとしたら接近戦の訓練をするのは当たり前。何故ならそれしかユーノには無かったのだから。


「......努力のエース、か」

「......?隆矢さん何か言いました?」

「いや、なんでもない」


ボソッと呟いた言葉を誤魔化しつつ、使っていた木刀三本を壁にかける。
その時、隆矢は外から足音が聞こえた。
だが聞き覚えのある足音だったので何も言わない。

そしてユーノと美由紀と士朗が話していると、ガラッと道場特有の木製の障子扉が開かれた。


「おはよー。お父さん、お姉ちゃん、隆矢お兄ちゃん、ユーノ君」

「あっ、お、おはよう。なのは」


少しどもりながらもユーノが真っ先に返し、その後に士朗達もおはようと言った。


「ってあれ?ユーノ君汗かいてるよ?」

「えっ?あ、あぁ。朝早く起きたから、少し鍛錬に参加させて貰ってたんだ」

「へぇー......はい、タオル♪」

「あ、ありがとう......」


太陽のように光り輝く笑顔を直視しつつ、顔を真っ赤にしながら受け取るユーノはまるで初恋の少年のようだった。いや実際そうなのかも知れないが。


《あぁ、僕みたいな奴が本当にこんな笑顔を見ていいんだろうか......》

《おーい、思考が念話で漏れてる漏れてる》

《彼女に聞こえないよう気をつけてください》


一人と一球からの忠告にハッとなり、ユーノは顔をタオルに埋めて誤魔化す。
なのははそれを少し赤いニコニコ顔で見ていた。
なんとも初々しい二人である。







 

「......ユーノ君には俺と戦って貰わなければならないな」

「うぅ、妹に負けてる......」


二人はそんなことを言ってたそうな。
ちなみに隆矢はさっさと食卓へ移動していた。
高町隆矢。転生前を合わせると三十歳越すが、恋愛事にはさっぱり興味無し。
まぁ、義弟になるかも知れないと考えると少し気になりはするが。











さて、食事も終わって家から出て、高町なのはは通学するためにバスに乗ろうとしていた。
当然、バスに乗って学校に通っているのはなのはだけでは無い。
高町なのはの友達も勿論居る。


「なのは、おはよ!」

「なのはちゃん、おはよう」

「おはようアリサちゃん、すずかちゃん」


高町なのはの親友のアリサ・バニングスに月村すずか。
その二人に挨拶を返し、一番後ろの五人席の二人の間に座る。
座ると同時にバスの扉も閉まり、バスは動き出した。
ふと、なのははアリサがジーと自分の顔を見ているのを感じ、首を傾げる。


「どうかした?」

「......アンタ、なんかいつもと表情違うくない?」

「へっ?そう?」

「確かに......言われてみると少し違う感じはするかな」

「何か昨日の夜か今日の朝あったの?」

「昨日の、夜......えっと」


なのはは腕を組み目を瞑って脳みそフル稼働で考える。
昨日は確かアリサちゃんすずかちゃんと一緒に近道を通って塾に行って、塾が終わって帰って、ご飯食べて、お風呂入って、歯を磨いて、何故か隆矢お兄ちゃんに急に呼ばれて、そして......

カーッとあることを思い出したなのはの顔が傍目から見ても分かるくらいに真っ赤に染まる。

ソレを見たアリサは面白いものを見つけたといった感じで、なのはに顔を近づけた。その顔はニヤニヤはしており、なのははイヤーな予感がした。
助けを求めてすずかの方を見たら、何かワクワクした表情をしており、大変気になるようだ。

つまり絶体絶命、大ピンチ。

なのはは冷や汗を垂らしつつどう回避しようか考えていたが、


「おーす!おはよ!すずかになのはにアリサ」

「おはよう」

「おはようレン君にハル君」

「あっ、おはよう」


意外な所から援軍(?)は現われた。
バスの扉を潜ってはいって来たのは紅宮(あかみや)連(レン)にハル・フォーマス。
レンの外見は黒い髪に赤い瞳。紅い瞳は怖く感じることは無く、陽気な彼の性格をはっきりと写し出している。
ハルはサラサラした青い髪に緑色の目。彼の爽やかな、冷静な性格とばっちりあっていた。
そんな二人に、なのははあわてて挨拶する。


「お、おはよう二人共!」

「.....?どうしたんだなのは?少しばかり様子がおかしいぞ?」

「あっ、やっぱアンタもそう思う?」

「うぐっ!」


援軍にならなかった。
ハルの鋭さは天下一品。友達になってから三年目になるが今だにハルに嘘をつけないなのは。
グイグイと迫ってくる親友達に、なのはは苦笑で返しごまかそうとするが、








「あっ、もしかして好きな男でも出来たとか?あっはははは」


すずかから事情を聞いたレンが笑いながらそう言った。
それにすずかがにっこり笑いながら相槌を打つ。


「レン君ってこういう時勘がいいよね」

「そうか?」


きょとん、とした顔で首を傾げる少年。
その少年の隣ではヤカンのように耳から煙を噴出したなのはがアリサに揺らされていた。


「あうう~」

「えっ!?アンタまじ!?まじなの!?ちょ、何時の間にフラグ立てられたのよアンタ!?」

「待て落ち着けアリサ!なのはが死ぬぞ!残像が出来ている!」

「あっはははは」

「ふふふっ......」


なのはを残像が出るほど揺らすアリサ。
ソレを止めようと羽交い締めにするハル。
そんな光景を少し離れて見るレンとすずか。
そして顔真っ赤っかななのは。




平和な光景が、そこにあった。











《んじゃ、ジュエルシードは俺の知識と変わりないハズだな》

《はい。恐らく》


隆矢は学校で、ユーノは隆矢の自室で念話による会話をしていた。
ユーノはベットに腰掛けながら、隆矢に一番気になっていることを尋ねる。


《そういえばさ、ジュエルシード、場所がわかっていても取りに行くなって言ってましたよね?あれってやっぱり転生者達が関係しているんですか?》

《......あぁ。この世界が物語の世界にソックリだってことは言ったな?》

《あっ、はい》

《ソレで転生者達の八割は今二つの団体に分かれているんだ。ソレでトップはともかく下の奴らの仲が悪くて悪くて......》

《あー、つまり》

《そっ、組織間の問題なのさ》


更にもう一つの理由。
現在、かなり原作ブレイクが進んでいる。
なのはが魔法少女をしていないこと、ユーノの逆行、隆矢などの原作キャラに近いオリキャラ達の存在。
つまり「原作をなるべく変えない組」としては、これ以上ストーリーを変えられると、トップはともかく部下達が黙っておかない。
「原作をなるべく変える組」としては、自分達のあずかり知らぬ所で勝手に変えられるのは気にいらない。

そして組織間の仲の悪さ。
下手するとまた「転生者戦争」でも起こりかねない。


《だから人の命がかかった場合はともかく、余り不用意に物語を変えるとマズイって訳だ》

《組織って、そんなに大きいんですか?》

《一つの組織にAクラスからAAクラスが三十人以上、トップに至ってはAAAクラス。そんな組織が二つだぞ?》

《うわっ......管理局の人手不足が少しは解消されそうだ》


ユーノは思わず呻いたそうな。











「という訳で、ユーノ。こいつらが俺の仲間な」

「おー!?生ユーノだ!」

「食べ物みたいに言うな」


ズビシッ!と黒髪の少年にツッコミを入れる青髪の少年。
ユーノは昼すぎの神社前でそれを眺めながら少しポカーンとしていた。
隆矢が転生者戦争を一緒に戦った仲間だ、というから隆矢の同い年くらいを想像していたのだ。
なのに来たのは自分と同い年くらいの少年。あっけにとられるのも無理は無い。


「あっ、事故紹介遅れちゃったな。俺の名前は紅宮 連。レンって呼んでくれ」

「全くお前は......自分の名前はハル・フォーマス。好きに呼んでくれ」

「あっ、は、初めまして。ユーノ・スクライアです。よろしくお願いします」

「敬語は要らないぞー。同い年なんだし」

「お前は......」


初対面の人間にあんまりな対応をしているレンに、ハルは頭を抑えながら呻く。
ユーノもソレを見て苦笑。
まるでどこかのオペレーターに振り回される執務官のようだったからだ。


「よーしお前ら。打ち合わせ通りな」

「「「はい!」」」


隆矢がデバイスを出しながら言って、ユーノ達もデバイスを出す。

うちあわせというのは、簡単な作戦のことだ。
まず、この神社での戦闘はアニメにちゃんと出ているということ。
それは次のプールでの一戦と違って知っている人が遥かに多いという意味である。


つまり転生者が集まる可能性が高い。
なのでユーノが単独でジュエルシード封印、他の三人が転生者迎撃。
以上である。
ちなみに、他のジュエルシード大丈夫なのかというと発動前を見つけるほど正確な場所はアニメじゃ分からないので大丈夫、らしい。



ピィィィィィン


「!」

「ユーノ!神社だけに結界!」

「もうやった!」

「来ます。数は一、二、三......七人。いずれもA−からAA+です」


隆矢がいち早くジュエルシードの反応を感知。
レンがユーノに呼びかけ、ユーノも返し、ハルがサーチャーからの情報を伝える。


「よし!じゃあいくぜ!」


隆矢の掛け声とともに、各自散会した。







「ジュエルシード!封印!」

「Sealing」


レイジングハートにジュエルシードが吸い込まれ、収納された。
これでジュエルシードは三つ。
あの後懐かしい獣の化け物をユーノは開始十秒で捕縛。
そしてバースト。お終いである。
ジュエルシードが無くなったせいで元に戻った子犬を眺めつつ、ユーノは辺りを見渡す。
戦闘音が鳴っているが、今は最初に比べて小さい。


「そういえば、あの二人どれくらい強いんだろう......?」


隆矢の仲間だから相当強いんだろうけど、とユーノは結界により灰色に染まった世界を眺めながら戦闘が終わるのを待っていた。









「フレンベルグ!カートリッジロード!」

『Explosion!』


ガシュッ!という効果音とともにレンが腕に装着したナックルから薬莢が飛び出す。
対する相手は空で杖を構えながら震えていた。


「らあっ!」


ドンッ!と紅い魔力光が迸ると同時、上空にいる魔導士に向かってレンは跳ぶ。


「ひっ!?く、くるなぁ!」


ドシュ!と杖の先から魔力弾が放たれた。ソレをレンは身を翻してかわす。
そしてレンが履くシューズに展開された羽が光り輝いた。


『Himmel Flügel』

「はっ!」

「なあっ!?」


レンの機動魔法、「ヒメィルフルゲル」は近代ベルガ式のレン専用オリジナル魔法。
足元に展開された特殊な羽が空気を利用した足場を足の裏に、レンのイメージ通りに展開する。
つまり、レンは空を蹴ることが出来るのだ。


「こいつで、お終いだぁぁぁぁぁっ!」

『Riese』

「うっ、うわっ」

「ファストォォォォォォ!!」


紅い魔力が凝縮し、炎を纏った一撃が魔導士に放たれた。
その拳はたやすくプロテクションをブチ抜き、魔導士に命中。
メゴッ!と音を立てて吹き飛んび、地面へと墜落した。


「うしっ!」

『Vollendung(完了)』


レンは空中で拳を握り締めた。


魔導士二人撃破。戦闘時間一分八秒。








「散れ夢の如く、灰となりて」

「え、詠唱魔法!?」

「くっ!距離を詰め」

「放て、サウザンド」

『Arrow』


ハルが持つ中~遠距離戦特化型デバイス、エアストロの弓の弦に当たる部分にトゲのようなものが大量についた矢が装填される。
そして解き放たれたそれは、空中分解して小さな一センチ程度の矢となる。
だがその矢は、着弾すると爆発する魔力の矢。
一つ一つはたいしたことも無いが、


「塵もつもれば山となる」


瞬間、千に及ぶ爆発が起こった。
勿論そんな爆発に生半可な覚悟で戦う人間が耐えれる訳なく、


「墜落してるが......やれやれ。助けてやるか」

『それがよろしいかと』


ため息を吐きながらハルは墜落している魔導士に向かって飛んで行った。




魔導士二人同時撃破。戦闘時間二十五秒。






「さて、ラストはお前だな」

「な、なんでだ......俺たちはAAだったんだぞ......」


森の一角で切られたアームドデバイスを握りながら、男は震える。
近くには断ち切られたデバイスを持ったまま気絶する男が二人。

男は僅かに後ずさりするが、隆矢は逃さない。


「神速」

「や、やめっ」

「一閃!」


男が気絶する前最後に見たのは自分のデバイスが粉々になるシーンだった。




魔導士三人撃破。一分ジャスト。







「......強いですね」

「これぐらい強くないとマズイ時が有ったんだって」

「まぁ、あの時は本当に......」

「命がけだったからなぁ......」


ユーノの言葉に三人は遠い目をしながら答える。
夕焼けが神社の階段も全部オレンジに染めていた。


「しっかし......新米転生者どもも懲りないねぇ」

「中にはニコポナデポしようとする奴もいるからな」

「まったく......ここは現実だというのに......」

「ニコポナデポ?」

「ユーノ、お前は知らなくていいことだ。脳みそがもったいない」


そんなやり取りをしつつ階段を降りると、



「あれ?ユーノ君?隆矢お兄ちゃん?それにレン君にハル君も......どうしたの?」

「な、なのは!?」


何故か高町なのはがいた。
なのはは息を少し切らしながら全員を交互に見渡す。
驚きの声を上げたユーノを除く三人が念話で会議。


《なんでなのはがここに居るんだ?》

《恐らく結界を張る前に感じたジュエルシードの反応のせいだろう》

《マジで?なのは~お前どんだけ才能あるんだよ》

《でもどうする?》

《おっ!いい方法思いついた!》

《?》



そんな会議が行われてるとは知らず、ユーノは大慌て。


(あわわわわわっ!?おおおお落ち着け僕!まだ魔法はばれてない!どうやってごまかすか、それを考え《おーい》なんでこの非常事態にそんなに冷静なんですか!?》


隆矢に念話で思わず怒鳴るが、


《後よろしく》

《はっ?》


惚けたユーノを置いて三人は、


「じゃ、俺帰るな!」

「また明日」

「先帰ってるから、んじゃ」

「えっ?あっ、うん」

《うぉぉぉぉぉぉぉい!?》


内心で思いっきりつっこむが、さっさと三人は帰ってしまった。

後に残ったのは、なのはにユーノだけ。


(二人きり......嬉しいけどいやいや待て。僕みたいな罪人が彼女【以下省略】)


なのははニッコニッコしていたが、その顔が赤かったのかは夕日のせいで分からない。




結局、ユーノはごまかすことに成功したらしい。




ちなみに、高町家からお世話になりましたと言って退出しようとしたが失敗したそうだ。







少年は蒼き宝石を集める。
それが、前の彼女の望みでもあったから。














後書き
本気出したよ......戦闘シーンめんどいので省いたシーンあるけど!
ドイツ語はあんまり突っ込まないで。適当に近いから。
キャラ紹介とか後で追加するので。
しばらくこっちメインで更新していきたいと思っています。

では、次回は遂にあの子の登場です。



あ、あと、何か魔法のネタはないでしょうか?
ザコ敵、中ボス、ラスボスの魔法を考えるのが大変で......
あぁ、自分の貧弱な脳みそを呪うZO......







[19113] 第五話 金色の少女と......?なの
Name: 剣聖◆a5c84342 ID:10285d3b
Date: 2010/06/01 21:59







第五話 金色の少女と......?なの











週末の朝、高町家の道場内に木刀が打ち合う壮絶な音が響いていた。
その音は道場に向かってテクテクと歩く高町なのはの耳にも入る。
運動神経が鈍く、木刀など振ったことなどないなのはにとってはただただ、関心しか出来ない。
そして道場に近付くほど音は大きく大きくなり、障子扉の前に立つと二人の声まで聞こえる。


ガンッ!!


一際大きい音が聞こえたかと思うと、先程までの音が嘘のようにやんだ。
ガラッと、なのはは障子扉を開け放つ。
そして見えたのは疲れたせいか膝に手をついている金髪の少年ユーノと、木刀をジャグリングのように回している隆矢の姿。


「おはよー、ユーノ君、隆矢お兄ちゃん」

「おはよ」

「お、おはようなのは......」


隆矢は宙に浮いていた木刀を掴み取りながら、ユーノは息を切らし汗を垂らしながら答える。
そしてなのはが下から放ったタオルを片手でシッカリとキャッチ。







ユーノが高町家に来てから、二週間がたとうとしていた。









「しかし、先週の子とまた会うのか......」

「......すまない、アリサが迷惑をかけた」

「アリサの慌てっぷりはすごかったからなぁ......」


バスの中、ユーノ、なのは、ハル、レン、恭也の五人はある場所に向かっていた。
ある場所とは月村家、つまり月村すずかの家である。

しかしバスに揺られているユーノの顔はどうも暗い。
何故暗いのかと言うとアリサもいるとのことだからだ。
何故ユーノがアリサに苦手意識を抱いているのか?その理由は先週に、




「アンタかぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「グベボラシャ!?」


「ユーノォォォォォォォォッ!?」




といった風に、喫茶翠屋の手伝いをしていたユーノに、アリサが顔面ドロップキックを喰らわせたからだ。
ちなみに短パンだったのでパンチラは無し。
ユーノはギャグ補正なのか、モロに直撃。見事に気絶した。鍛えていたのに......

ちなみにユーノはアリサが何故自分にドロップキックしたのか分かってない。
それもかえって不安にしているのだろう。ユーノはバスから外の風景を眺めながらも、天才的(本人はそう思ってない)な頭脳を使い、理由を弾き出そうとする。
だが脳が答えを出す前に彼に話しかける者が居た。
言わずとも知れた彼女、なのはである。
なのはは何が楽しいのかニコニコ顔で彼に言葉を伝える。


「ユーノ君、すずかちゃんのお家にはね、猫さんが沢山いるんだよ!」

「へ、へぇ~......そ、そうなんだ......」


なのはの言葉にユーノも冷や汗を少し垂らしながら返し、思い出す。
すずかの家には自分が少し苦手とする猫が大量にいることを。


(フェレットじゃないし......大丈夫だよね?)


変身魔法を使っていた時の命がけの鬼ごっこを思い出し、更に暗くなるユーノだった。
対象的になのはやレンがニコニコ顔なので、余計にそう見えたそうな。












《隆矢さん、状況は?》

《まだ見つかってない。発動前に見つけられればいいんだが......》


ユーノは念話で隆矢と会話する。
隆矢は今庭でジュエルシードを捜索しながらバッタリ会った転生者達をボコボコにしているのだ。
ちなみに数は既に二十三人。


《なんでそんなに数が?》

《フェイトの初登場シーンだからな。フェイトは組織が確認できなかったらしいし》

《フェイト、か》

《......つらいか?》


隆矢の心配そうな声に、ユーノは軽く笑いながら、


《大丈夫ですよ。だって友達ですから、助けないと》

《......そうか》


ピピピピピピピピンポーン。


「おーい、すずかー!」

「お前はバカか!インターホンを連打するなと何回ーー」


《おっ、こっちでも聞こえた。見つけたら呼ぶから、なんか適当に理由つけて来てくれ》

《了解です》


ハルに悪戯行為を咎められるレンを見て、苦笑しながらユーノは返した。

ふと、何気なくレイジングハートを見る。
赤く光るこのデバイスにはジュエルシードがこの前のサッカーチームの少年の分を含めて五個入っている。
ありがたい、ありがたいのだが。


(なんか......嫌な予感がする)


不気味にうまく行きすぎじゃないかと、不安になった。















月村家の巨大な庭の外、アスファルトの大地に突き立つ電柱の真上に、一人の少女が立っていた。
その少女の手には黒い機械の武器がある。


「......ジュエルシード......母さんの、探し物......」


少女の瞳は優しそうで、何故か悲しそうな光を宿していた。










「それにしても......すずかの家はやっぱ猫が多いなぁ」

「里親が決まっている子も居るんだけどね」


只今すずかとレンを先頭に、ろくな人は月村家の庭へと向かっていた。
先頭で仲良く喋る二人を、後方で四人は見ながらユーノが問いかけた。


「あの二人やけに仲がいいよね?」

「あぁ......」

「色々あったのよ。少なくとも、私はすずかがアイツと喋ってる時以上に笑ったのは見たことが無いわ」

「そうだね......付き合ってるって訳じゃないんだろうけど......」

「友達以上、恋人未満か」

「小学生だし、そうゆうのはまだ早いわよ」

「アリサちゃん。なんで私を見ながら言うの......?」


そんなこんなでのんびり喋ってると、


キィィィィィィィン!


《ッ!来た!》


ユーノは感じ、二人に目配せする。二人も念話で返事を返した。
ちなみになのはは感じ取っていない。ハルが作った簡易結界のお陰だ。
ハルの作ったこの結界は結界というよりは補助魔法に近い。
中の魔力反応を極力小さくする力、これにより魔導士として訓練した者で無いかぎり、ジュエルシードの反応は感知出来ない。


「あ、僕トイレ行って来る」

「場所わかるの?」

「うん。先に行って待ってて」


そう言い訳をして、ユーノは皆から離れて月村家の中に戻る。
長い廊下を歩き、トイレの中に入る。
トイレの中で即座に転移魔法の準備。ユーノの右腕を螺旋状の魔法術式が包み込み始めた。

マルチタスクを使い、バリアジャケットを纏う。更に思考も同時展開。


(僕がフェイトを止められるのか......?実力はこっちが上かも知れないけど......)


そう、フェイトを止めるのに力だけではダメなのだ。
フェイトの心に届くぐらいの強い意思の言葉。ソレを自分はフェイトに伝えられるんだろうか?
ユーノが目指す最良の未来には、彼女が笑顔でいることも含まれている。
彼女が笑顔でいるために必要な人物を関わらせなくしたのは自分。
ならば、


(僕が、やらないとね......)


これも、自分の罪。
罪ならば、罪人らしく償おう。

転移魔法の術式が完成。
一気に展開して、


「......?」


ハテナマークを少し浮かべながら、ユーノの姿は月村家のトイレから消えた。










金髪の少女はジュエルシードの反応がしたと同時、結界が張られたことを感じた。
つまり、別の魔導士がいるということ。


「......」


彼女は一瞬、仲間に伝えるか迷って一人で行くことにした。
仲間は今は休んでいる筈なのだ。
余り邪魔したくはない。


「いくよ。バルディシュ」

『Yes sir.』


そんな優しい少女は相棒に声をかけ、飛んだ。

母親の願いを叶えるために。










ユーノは森の中、冷や汗を垂らしていた。
口はピクピクと痙攣し、顔は青ざめている。
別に美少女三人組に魔法ばれた、とか。そんな深刻なことじゃない。
ハルの特製結界のおかげでなのは達が結界内に入らない範囲に張られているからだ。
では何故ユーノがこんな状態になっているのか?それは、







「ニャァァァァァァァッ!!」


子猫がでっかくなっていたからだ。
いや、そこまでは前回と一緒なのだが、何故か体が青い。
で、顔は白くヒゲも生えており赤い首輪に金色の鈴。


つまりリアルドラえ◯んが居るのだ。
はっきり言ってキモい。


「......やっぱりこうゆうのが許されるのは漫画だけだよ」


なのはに見せて貰った漫画のキモくないドラ◯もんを思い浮かべながら、彼は呟く。彼もアニメに出ているのだが。


「っと、来たかな......」


魔力反応を感じ、空を見上げる。
高速接近する黒いバリアジャケット姿の少女が見えた。


「レイジングハート!ジュエルシード封印!」

『Sealing』


予め構成していた封印術式を展開。一気にジュエルシードを対象から分離させ、封印する。
緑色の光が、宝石を包み込んだ。


「っ......」


まただ、とユーノは頭を悩ませる。
先程の転移魔法の時にも感じた僅かな違和感。この違和感のせいで少し魔法の構成が甘くなっている。


(だけど......)


今は、その違和感の正体を考えている暇は無い。
何故ならフェイトはもうこちらに対して臨戦状態だからだ。

ジュエルシードを挟む形で、二人は対峙する。


「......ロストロギアの探索者、か」

「......なんで集めてるのか知らないけど、諦めてくれないかな?これはとても危険な物なんだ」

「......」


フェイトからの返事は無く、バルディシュを前に突きつけて来る。
やはり、戦うことになるらしい。
仕方無く、ユーノもレイジングハートを前に向ける。


「話は......捕縛させてから聞かせてもらう」

「......」

『Scythe Form』


今度も返答は無く、返って来たのはパルディシュの合成音声だけ。
バルディシュの形が少し変わり、金色の魔力刃が展開される。
それはまるで死神の鎌。
その魔力刃を見て、ユーノは魔法を発動。


『Flash Blade』


今度は何事も無く発動。
レイジングハートの尖った杖の先端から緑色の魔力刃が五十センチ程展開され、さながら槍のよう。
その魔力刃をフェイトに突きつける。
フェイトもバルディシュを前に構えた。



陽光がジュエルシードに当り、煌く。


最初に動いたのはフェイト。
フェイトが視界からブレ、ユーノの後ろに移動。フェイトの十八番である高速機動魔法。
そのままデバイスを彼に向かって振るう。

だが振った瞬間には彼はフェイトの視界から消えていた。


「なっ!?」


フェイトは思わず驚愕の声を上げ、辺りを見わたす。
だが少年の姿は何処にも無い。


「っ!?上!」


上空で魔力の集まりに気がつき、上を見上げる。
そこにはレイジングハートを持ったまま、周りに二十の小型魔法陣を浮かばせるユーノの姿。


「ショット!」


ユーノのトリガーワードとともに、ユーノの周りの魔法陣から緑の鎖が放たれる。
それは重力の加速もあって、真っ直ぐにフェイトに向かった。


「バルディシュ!」

『Blitz Action』


フェイトの呼びかけに答え、バルディシュが高速機動魔法、ブリッツアクションを発動。
豪雨の様に降って来た鎖の山を余裕を持ってかわす。
そしてそのまま空に。
だが、


「レイジングハート!」

『Blade UP』

「えっ!?」


まるで動きを読んだかの様に、彼はそこに居た。
ユーノは強化魔法で刃を強化。
一気に上段からフェイトに向かって振り下ろす。
それをフェイトは驚きながらもバルディシュの刃で防いだ。
ギチッ!とつばぜり合いになり、バチバチと魔力刃がスパークを出す。
だが強化した分、ユーノの方が有利だ。次第に緑色の刃が金色の刃にめり込んでゆく。
フェイトがソレを見て離れようとした所で、


「ブレードバースト!」

「っ!?」


本日何回目か分からないくらいの、驚き。
指向性を持った爆風がフェイトを大地へと叩き飛ばす。
魔力刃をそのまま爆発させるという飛んでもない魔法を喰らったが、オートガードのお陰でダメージは殆どない。
そして地面に着地して、






パシュン!と緑色の鎖がフェイトをからめとった。


「ディレイドバインド!?」


知識で知っている魔法をその身に受け、フェイトは急いでバインドブレイクを発動ーーーー


チャキ


「動かないで」


ーーーする前に、ユーノに後ろから杖の先端を突きつけられていた。


(くっ......どうして?)


フェイトは心の中で困惑の声を上げる。
いくらなんでもユーノの動きはフェイトにとって異常だった。
まるでこちらの動きやクセ、戦闘の仕方を全部知っているかのような。

フェイトは顔を悔しさに歪めながら、動きを止めた。






実際の所、ユーノが今回こんなに有利に運べたのはフェイトとよく戦っていたからだ。
しかも組んだことも多いし、フォローもしたことがある。

ユーノが圧倒的に有利なのは確実。
だがユーノは少しホッとしていた。
先程からのレイジングハートの調子の悪さ。
魔法を構築するのに乱れる所や、発動に少し時間が掛かること。恐らくこれは......


(いや、今はそれよりフェイトの方が先だ)


先程から近くに居る筈の隆矢に念話を送っているのだが、いまだに反応が無い。
届いていないか、返す暇が無いのか......とりあえず、


ジュエルシードにレイジングハートをかざし、収納する。























筈だった。


気がつくと、ユーノは宙を舞っていた。


「......えっ?」


自分の身に降り注いだことなのにどこか他人事のように声を出していた。
右の頬が痛い。
殴り飛ばされたのだと、木々に衝突間際で気がついた。


ドゴォォォンッ!と木に巫山戯た速度でぶつかり、木々を三本程へし折って漸くユーノは停止した。


「ぐっ......!?一体......」


ボロボロの地面に倒れこんだユーノは、痛みを堪えつつ体を起こすが、何かが接近していた。

それは、銀色に輝く人型の雷。
それはまるでタックルするように肩を前に出してユーノに迫っていた。


「ラウンドシールド......」


ボソッと、弱々しく呟くが、何時もの頼れる翡翠の盾は出現しない。

レイジングハートも反応しない。


『Thunder Burst』


耳に無機質な合成音が入ったと同時に、ソレは弾けた。


銀色の電撃が轟音を立てて吹きすさび、辺りに電流を撒き散らす。

砂埃が舞い上がり、視界が塞がれた。
だが突然その茶色のカーテンは消し飛ぶ。
消し飛ばしたのは、一人の少年。歳は十歳程度。燃えるような紅い髪に、黒い瞳。
袖無しの黒い服、黒のズボン、黒の靴。
そしてその手には二本の短剣が収まっていた。
少年は爆発でデコボコになった大地を歩き、爆心地へと歩く。
そこには一人の少年、ユーノが転がっていた。
金髪の髪は土に汚れ、何かを抱え込むように少し丸まって倒れている。


「......」


ソレを一瞥して、少年は彼女の所へ戻ろうとした。
だが、ふと立ち止まる。


ゆっくりと振り替えると、








「ま、て......」


ユーノが、ゆっくりと起き上がっていた。
だが体は震え、バリアジャケットはボロボロ。所々焦げてさえいる。

だがそれでもユーノは立った。
身に抱え込んでいたのは杖。相棒たるその杖にはヒビが入っていた。


「......」


まて、と言われたからなのか、ただ眺めていただけなのか、少年は動かない。

ユーノは震える唇で言葉を紡ぐ。


「君の......名前、は......?」


ユーノが言ったのは、この状況じゃ普通は言わない物だった。
少年はそれを聞いてもただ、無表情。


「......シン」


ポツリ、と一言だけ言って少年は歩き出す。
それを聴いて倒れたユーノが最後に見たのは、ジュエルシードをデバイスに収納するフェイトの姿だった。



























新たなる登場人物に、弱き翡翠の彼はどうするのか。
それはまだ分からない。






















後書き
自分にほのぼのは無理だ......
さて、ユーノ君実は知らない間に弱体化してました。
そして新キャラ。
このストーリーのもう一人の主人公たる彼。
これからどうなるのか!?作者も大体しか分からない!(えっ


では。






[19113] 第六話 戦いの後に
Name: 剣聖◆a5c84342 ID:10285d3b
Date: 2010/06/03 17:47









第六話 戦いの後に


















「うっ......?」


ユーノは体の鈍い痛みで目が覚めた。
ゆっくりと体を起こす。
何やらフカフカの毛布に包まれている。だがこの感触は今までの人生で感じたことはない。
目を開けてよく見てみると、やはり高そうな羽毛布団だった。


「ユーノ君!」

「おわっ!?」


突然の大声にユーノは変な悲鳴を上げて上半身だけ飛び起きる。
慌てながら声の発信源を見ると、そこに居たのはなのはだった。
いやなのはだけでは無い。
すずかにレン、恭也に月村忍も居た。


「よかったぁ......心配したんだよ?体は大丈夫?怪我とか......」

「ユーノ、体は大丈夫か?」

「えっ、あっはい。痛みも無いですし」


ユーノは二人の問いかけに体を見渡しながら返す。
所々痛みがあるものも、酷い外傷は無い。精々擦り傷程度だ。
どうやらちゃんと非殺傷設定でやってくれたらしい。ありがたいことだ。


「でもビックリしたよ......ユーノ君が帰ってこないから探してみたら、庭の一角で倒れてたなんて......」

「猫でも追いかけて転んだのか?」


レンは呆れたような表情でそう言う。
恐らく適当に誤魔化すために言ってくれたのだろう。
が、


「レン君ならともかくユーノ君がそんなことする筈無いよ」

「おい、俺ならともかくってなんだ。ともかくって」

「すまないな、レン」

「あっはっはっ。まぁ確かにね」

「クスッ......」

「恭也さんに忍さんも!?後すずか!笑ってないでほらっ!」

「ぷっ......」

「ユーノも笑ってんじゃねぇぇぇぇぇぇ!」


なんというか、墓穴を掘っていた。

ちなみに、その後やって来たアリサとハルにも笑われたそうな。


だがみんなが笑っている中で、どこかユーノは笑っていないように見えた。















「なるほどな......」


時間は経って夜。
隆矢の部屋にてユーノはフェイトとの戦闘のことについて語っていた。
全てを言い終わった後、ユーノは下を向いて俯く。


「すみません......」

「気にすんなって。こんなイレギュラーが起こるなんて思ってなかったしな」


暗い表情のユーノに笑いながら隆矢は返す。


ユーノが暗くなっている理由。それは単に負けたからだけでは無い。
理由は、今ここにいないレイジングハートがそれをものがたっていた。
レイジングハートの不調、それはユーノの魔法のスペックについて行けなかったせいだ。
いや、実際には高度なAIを駆使して魔法をちゃんと使えていたのだ。

だが、その分負担がかかっていた。

そのせいで徐々に不調になっていき、今日の結果に繋がる。
今はハルの元で修復中。機械を使って修復に三日はかかるレベルのダメージを受けていた。

そして、ユーノが一番気にしているのはその不調に気がつくことが出来なかったということだ。
いや、本来なら気がついて当たり前だった。
なにせユーノはあの事件以来、そういった人やデバイスの調子を人一倍気にする人間だからだ。
なのに何故気がつかなかったのか?
理由は簡単。


(浮かれて、たんだ)


武装隊に入り、彼女の意思を継ぎ戦っていたころは彼は強かった。
魔法の力云々の前に、精神的に強かった。
だが今はどうか?
幸せと言う名のぬるま湯に浸かったせいで、自分は、弱くなったのではないか?


(僕は......)










ーーーー本当に、ここに居るべきなんだろうか?








そんなネガティブな思考を断ち切る声。


「おーい?またうじうじ悩んでただろ?」

「うっ......」


ズバリ言い当てられ、ユーノは僅かに呻く。
断ち切った少年、隆矢はそんなユーノを見てガシガシと頭をかいた。


「全く......なんでお前やハルやレンは精神的には大人な筈なのにそんなに悩むんだ?」

「隆矢さんが大人すぎなだけです。って、レンも悩んでたりするんですか?」


ユーノはむすっと告げるが、意外な人物の名前に驚く。
彼にとって確かにハルは悩んでそうなイメージがある。
だけどレンはそうでもない。むしろ反対、逆だ。いつも元気一杯で言い方は悪いがバカでーーー

ふと、そこまで考えてユーノは何か違和感を感じた。
だがやがて思い出す。




初めてあった頃のなのはにソックリなのだ。


自分のことを勘定に入れず、ニコニコの笑顔を顔に浮かべて、他人のことを気にする。
まさしく、なのはソックリだ。


「まぁ、あんなバカにも色々あるってことだ。お前みたいにな」

「......」


色々ある、という事を否定出来ずにユーノは黙りこくった。
そんな彼を見て隆矢は更に苦笑。どうやってネガティブ思考から復活させるか考えていると、


《聞こえるか?》


急に、ハルからの念話が来た。
ユーノは慌てて尋ねる。


《れ、レイジングハートは大丈夫ですか!?》

《大丈夫だ。予定通り、三日後には直る》

《そ、そうですか......よかった》

《ところでだ、ユーノ》

《なんですか改まって?》


ユーノはハルの言葉に首を貸しげ、それを聞いていた隆矢は懐かしそうな表情を浮かべる。
なぜか?理由はとても簡単。
隆矢も同じ問いかけをされたことがあるから。






《デバイス、強化しないか?》





その提案はユーノにとって今一番、有難いものだった。





月が、夜の闇を明るく照らす。
















「......」


窓際に立ち、月を眺める少年が居た。
その顔には何も浮かんでおらず、ただただ、無表情。


「......」

「......なんだ?」


そんな少年をソファーに座って眺める少女が一人。
金髪の髪を持つ少女、フェイトはココアが入ったカップを持ったまま、無言で彼、シンを見つめる。


「......ううん。なんでもない」

「昼間のことか」


なんでもないと言ったのに、こちらが思ったことを言い当てて来るシンに、フェイトはほんの少し、苦笑する。
シンという少年とは一年の付き合いになるが、今だに悟られてばかりだ。


「昼間、名前言ってよかったの?」

「所詮存在しない筈の名前だ」


フェイトの疑問に、短く、最低限の答えだけを返す。
その答えになっとくしなかったのか、フェイトは更に問いかけた。


「......私の時は一ヶ月近く教えてくれなかったのに?」

「聞かれいたら答えていた」


またもや短く、事務的に返す。
その返事に小さく呆れ、カップに口をつける。
ホットココア特有のほのかな甘みと温かさがフェイトの口内を満たした。
そこへその静かな空気をぶち壊すかのように、バァン!とドアが開いた。


「ただいまー!」

「お帰り、アルフ」

「静かに入れ」


ドアから笑顔で入って来た赤い髪の女性、アルフにフェイトは優しくお帰りと言い、シンはまたもや無表情でアルフに注意した。


「固いこと言ってんじゃないよ。ほい」


そのいつも言われる注意に笑いながら返し、ドンッ!とアルフはテーブルの上に何かを置く。
それは白いビニール袋。中身は食材。


「ありがとうアルフ」

「フェイトのためならこれくらい!」

「そうか。なら苦手な野菜を代わりに食べてやるのはやめろ。将来的にまずいだろう」

「うっ......」

「そ、それは......」


無表情だが、どこか呆れを含んだ目線で二人を眺めながら言うシン。
その視線と言葉を喰らい、アルフは呻き、フェイトはオロオロする。
そんな二人を放置して、彼はビニール袋を右手でつかみ台所へと向かった。
そして向かいながら問いかける。


「洋食か和食か?」

「えっと......和食」

「じゃ、私も和食!ただし肉で!」

「分かった」


どうやらフェイト的にはこの前のステーキよりしょうが焼きの方が食べやすいらしい。
で、アルフは使い魔として主人の決定に賛同。
つまりこの選択、もっぱらフェイト次第。何故なら三人しかいない中でフェイトの決定にアルフがついたらそれで決まりだ。
ちなみにこの多数決。それを分かっていたシンは、フェイトに直接聞いていたのだが、本人の性格上中々決まらず、シンが多数決にすると言ったのだ。
ちなみにフェイト、そのことに気がついていない。

台所に消えていったシンの後ろ姿を見つめながら、思い出したかのように、アルフはフェイトに尋ねる。


「所でフェイト。あの、ジュエルなんとかってのは?」

「うん。ここにあるよ」


フェイトはスッとバルディシュがはまった右手の甲を目線上に持って来る。
金色のデバイスはジュエルシードを出して浮かばせた。
クルクルと回るその綺麗な青い宝石を見ていると、とてもじゃないが、危険物には見えない。
実際はとてつもなく危険な物質なのだが。


「さっすが私のご主人様!」

「うん、ありがとう。でも私じゃなくてシンのおかげだよ」

「?アイツが何かしたのかい?」

「うん、実はーーー」


フェイトはジュエルシードをしまった後、掻い摘んで説明した。
ジュエルシードを見つけたが別の魔導師がいた事。戦って負けたこと。そこをシンが助けに来てくれたこと。

一通り聞いて、アルフは何故かジロジロとフェイトの顔を見る。
きょとん、としてフェイトは首を傾げた。


「......アルフ、どうかした?」

「いや、なんでもないよ」


(まさか、ねぇ)


フェイトの、いつもとはちょっとだけ違った反応にアルフは心悩ませる。
こんな風にフェイトが饒舌になるのはあの時までそう滅多に無いことだった。

だが、あの時から。

少しづつだが、柔らかいちゃんとした笑顔を見せるようになった。


「やっぱりアイツのせいなんだろうね......」

「なにがだ?」

「うわっ!?いきなり気配消して隣りに立つんじゃない!」


件の人物がいきなり隣に現れたので、アルフは飛び退く。
驚かれた少年はなんら関心をしめさず、テーブルの上に何かを置いた。


グツグツ


「......ねぇ、なんだいこれ?」

「鍋」

「いや、それは見たら分かるけど」


日本の伝統料理の一つである鍋。
テーブルの上にそれが鎮座していた。勿論鍋敷きの代わりたる濡れタオルも置いてある。


「いい匂いだね」


沸騰する鍋から漂う野菜や肉の匂いに、フェイトは正直な感想を述べた。
パカッ、とシンは蓋を取りお玉を突っ込む。
鍋の中では豆腐、肉、野菜、キノコなどなど様々な食材が入っている。


「へぇー、美味しそうじゃんか」

「言っておくが、味は保障しないぞ」

「でもそう言っておきながら何時も美味しいよね」


性格通り、口に手を開けてクスっと笑いながら言う、フェイト・テスタロッサ。
それに対してシンは、


「......」

「えっ!?なんで無言でニンジンを大量に入れてるの!?」


フェイトの取り皿に嫌いな食べ物攻撃をしたのだった。

フェイトは精神的に大ダメージ。アルフはそれを止めようとするのだが、シンはやめない止まらない。










そんな三人の風景は、どこか家族を連想させた。



















戦いの後に、少年の魔導の杖は進化をとげる。
そして、赤と銀の少年は何故彼女と居るのか。


















後書き
グハッ!短い......
ユーノどうして弱くなってんだよゴラって思った人のために説明を。

①ユーノは逆行前はなのはの意思をついで、背水の陣状態だった。
②戦闘楽and幸せすぎて戦いに対する意識が弱まっていた。
③レイジングハートがユーノの魔法技術について行けず、不調になっていた。

これらのせいで、ユーノは弱くなってました。
ちなみにシンのことはまだ説明集に付け加えてません。次回で多分追加します。

つーかあれですね。全く関係ないけど今週のネギまの最後の台詞まじ最高でした!
やっべーよ!やっぱこうゆう台詞最高だわ!


では





[19113] 二期・転生者戦争編
Name: 剣聖◆a5c84342 ID:10285d3b
Date: 2010/06/01 00:33






プロローグ




















毎日の平穏な日常。

ただただ、過ごすだけの日々。

そして俺にとっては現実では無いこの世界。

いつからだろう?





悪くないと思い始めたのは。

















全てをオレンジ色に染め上げる夕暮れの中、彼、富岡(とみおか)隆矢(りゅうや)は一人歩いていた。
普段は共に帰る幼馴染が居るのだが、生徒会の仕事やらで居ない。

町のアスファルトを踏みしめながら、学生カバンを揺らす。
太陽が眩しく、建物の影になるべく入るよう歩いていた。


「家に帰ったら何するかなぁ......ゲームでもするか?」


いやいやソレとも筋トレでも......と、唸りながら悩むその姿は青春真っ盛りの高校一年生に相応しい。

結局、


「アニメ見よう」


ということになった。
やることが決まったら後は早い。
ちょっとだけスピードを上げて、彼は家への帰路につく。


何事もない、平穏なただの日常。




だが、その平穏はたやすく壊れる物だということを彼は今日始めて知ることになる。





「キャァァァァァッ!」


甲高い女性の悲鳴が隆矢の耳を貫いた。
咄嗟に振り返ると三十メートル先の銀行店の前で人だかりが出来ており、一人の女性が黒ずくめの男にナイフを突きつけられていた。
女性を羽交い締めにする男の鼻息は荒く、体は震えている。


「......はっ?」


「日常」じゃああり得ない、「非日常」な出来事に隆矢の思考は一瞬停止する。
その間にも時は進み、男は大声で叫んでいた。


「は、早く出せ!出さねぇとこいつを殺すぞ!」


ナイフを突きつけられた女性はもはや悲鳴を上げる余裕すら無くなったのか、涙目で震えながら自分の首に突き刺さらんとばかりに光る銀色なナイフを見る。
そのナイフは確かに人を殺すために充分な力があると告げていた。

しばらくその光景をまのあたりにしていた隆矢だが、我に帰り自分の手が震えているのを自覚しながらも携帯を取り出した。
路地裏の喧嘩で一対一なら負ける気は無い。
だが、相手に武器があるのだ。しかもバットなどではない、切り裂いて殺すための武器が。

つまり、自分にあの人は助けられないと。


「だ、誰か助けて......」


だけど。

警察に少し離れたところから連絡した隆矢は、その声が何故か聞こえた。
それを聞いたら、何故か体の震えが止まる。


「......そう、だな。うじうじしてるなんて、俺らしくもない」


脳内がクリアになり、相手の状態をよく見つめる。
相手はどうやら精神的に追い詰められており、辺りを細かく気にしている。隆矢が警察に通報するのを見られなかったのは、ひとえに人だかりが出来てるからに過ぎない。


「......でも」


一つ、隆矢は気がついた。

そしてーーーー







「クソ!」


男は焦っていた。理由は簡単、逃げられないからだ。
アタッシュケースに金をありったけ詰め込んだ後には銀行の周りはすっかり人だかりが出来ていた。


「さっさと退け!」


だが男のチラつかせるナイフの力は凄まじく、周りの人だかりも薄れて行く。
これで逃げれると思った瞬間ーーーー







ダンッ!




大きな着地音が響いた。

辺りがシンッとなり、男は音の聞こえた後ろを振り返る。
そこには自分に向かって拳を振るう少年、隆矢が居た。


「ラァァァァァァッ!!」


はっ?と疑問に思うまでもなく、拳が顔面を捉える。
その一撃で男はよろめくが、ナイフは手放さない。
だが、


「フッ!」


次の一撃を同じ場所に貰い、今度こそナイフを落とす。
男の思考は混乱の極みだった。


(なぜコイツはどこからーーー!)


脳みそが揺れながらも、男は上にある物を捉えた。

銀行とは反対側に立つビル。そして開け放たれた三階の窓。


そう、隆矢が気がついたことは男が上を見ていないこと。
そして上からなら人だかりを気にせずに飛び込める。
三階ぐらいからなら、足から着地できれば人間は死なない。


「グッ......ウガァァァァァァッ!!」


ナイフという自分の唯一の武器を失った男は、人だかりをかき分け、何処に消えた。
すぐにパトカーのサイレンも聞こえ始める。


「ふぅ......」


ホッ、としながら彼は息を吐く。













まだ終わってなどいなかったのに。



キュキュ!といやな効果音が聞こえ、男が去った方から悲鳴が上がる。
ハッとなって隆矢が見ると、何かが近付いてくる。
人だかりがサッ!と分かれ、飛び出して来たのは一台のトラック。
操縦席に座る男の目は狂気に染まって血走っていた。


「おいおい!」


巫山戯た行為にツッコミながらも体は回避しようと動くが、へたり込んだままの女性......いや、少女に気がついた。

一瞬、ほんの一瞬、隆矢の動きが止まった。
自分だけ避けるのは簡単だ。だが少女を抱えて走って避けれるか?否、不可能だ。


だから、隆矢は、



屈んで少女を掴み、思いっきり放り投げた。

少女は宙を舞い、アスファルトの地面に滑り込む。
ギリギリ、トラックの走行通路から抜け出ている。
だが隆矢が動けたのはそこまで。



トラックの銀色の体が、目の前にあった。
今更死への恐怖を思い出したのか、体が少し震える。

それに隆矢は苦笑してーーーー



ドンッ!と、トラックに跳ね飛ばされた。
耳に自分の骨が折れる生々しい音が響き、体中の内臓が潰れる。
そして十メートル程血の後を地面に垂らしながら吹き飛び、地面に転がり込んだ。

やがて転がるのも止まり、地面に仰向けになる。
トラックは止まったのか、走行する音は聞こえなかった。
耳に入るのは、人々の悲鳴と、パトカーのサイレンと、かけよって来る人の足音だけ。

体の痛みはもうさっぱり麻痺して分からず、分かるのは、自分の体を照らす夕日の光のみ。

頭の中を様々な思い出が駆け巡った。
それをぼんやりと走馬燈なんだなと思いつつ、彼は夕日を見る。


夕日の光はオレンジで、あたたかった。


(意外と、夕日ってのも悪くないな......)


隆矢は、始めて、夕日が好きになれそうだった。


だがそんな夕日の光も消えて行き、意識が闇に包まれる。



こうして彼、富岡隆矢は死んだ。





そして、目がさめたら第二の人生を歩むことになる。























これが、彼の始まり。
彼にとっての、物語の始まり。













後書き
隆矢の前世での質問?っぽいのがあったので書いてみました。
隆矢はこうやって高校一年生の状態で死亡し、転生します。
喧嘩はそれなりに強く、頭はどちらかというといい方に入るようです。

これは続くかは分かりませんが、本筋のためまた書かれる可能性はあります。
いつかユーノの過去も書きたい......

では。






[19113] 説明集
Name: 剣聖◆a5c84342 ID:10285d3b
Date: 2010/06/01 20:35


説明集






魔導士陣紹介。



ユーノ・スクライア 
容姿 金髪碧眼
年 逆行前は十九歳 逆行後は九歳
魔導士ランクAAA+ 結界魔導士ランクS+
デバイス レイジングハート
ミットチルダ式 カートリッジ無し
魔力光 翡翠

今作品の主人公。
逆行前はなのはの事故の事が切っ掛けで武装隊にいた。
ヴィヴィオを助けるため、ゆりかご内で死亡。
だが何故か全く違う過去へと遡っていた。
自分を下に見て他の人ばかり気にする優しい、けど危うい少年。
攻撃魔法の適正が壊滅的だが、補助魔法の応用でカバーしている。
なのはのことを好きなようだが......?
戦い方はバインドを軸にした戦法。バインドの強度はヤバイぐらいに硬い。




高町 隆矢(りゅうや) 
容姿 黒髪黒目
年 十五歳
魔導士ランクAAA+
デバイス ソードソウル
ミッドチルダ式 カートリッジ有り
魔力光 黒

今作品初めてのオリキャラ。
なのはの兄として生まれた転生者。
剣術をやっているが本来小太刀の二刀流を太刀の二刀流にしている。
デバイスはジュエルシード事件が起こる半年前に起こった「転生者戦争」の時に手に入れた。
ユーノのことをいい義弟候補だと思っている。
兄貴風を漂わすいい男。「転生者戦争」を終焉に導いた主人公でもある。
ちなみに今は付き合ったりはしていない。
戦い方は魔法よりも剣術で戦う。魔法剣を軸に敵へと突っ込むその姿はまさしく剣士。




紅宮(あかみや)連(れん)
容姿 黒髪紅瞳
年 九歳
魔導士ランクAAA−
デバイス フレンベルグ
近代ベルカ式 カートリッジ有り
魔力光 紅色
魔力変換資質・炎

転生者。まだ細かい話がでていないがすずかと特に仲がいい。
男なら拳で語れぇ!で隆矢と戦ったこともある。
実は地球では無く、別の世界出身。
地球にいるのはたまたま親が移住したからである。そのためデバイスも持っている。
皆と仲のいい、テンションを上げる的な意味でのムードメイカー。ただしその分(?)バカなのでよく制裁される。
「転生者戦争」では隆矢とともに戦った。
時々ドキッとするようなことを言う。
すずかとの関係は......?
戦い方は「流れに身を任せる。時々逆らうけど」らしい。基本的にはナックルによる攻撃。




ハル・フォーマス
容姿 青髪碧眼
年 九歳
魔導士ランクAAA−
デバイス エアストロ 
ミッドチルダ式 カートリッジ有り
魔力光 蒼色

転生者の一人。本来、対して問題自体に関わるつもりはなかったのだが、隆矢と一緒に戦うことになる。
コミニケーションは以外と得意だが、同じツッコミ仲間としてアリサと特に仲がいい。
ミッドチルダから親が死亡したため、親戚のいる地球へとやって来た。そのため、デバイスを持っており本人は優秀なデバイスマスターでもある。
これからユーノのデバイスを強化するのは恐らく彼になるだろう。
アリサとは恋愛関係まで発展していない。今後次第と思われる。
戦い方は中~遠距離による射撃戦を中心に戦う。






オリジナル魔法


「Chain Bind Shot(チェーンバインドショット)」使用者・ユーノ・スクライア
ユーノが射撃魔法の変わりに生み出した攻撃の魔法。
チェーンバインドの魔法陣を展開、その上から自分、もしくはデバイスによる加速・回転の術式を重ねることでとてつもない速度で打ち出される。
尚、チェーンバインドにもかなりの改良が加えられている。
初登場 第一話

「Chain Bind Burst(チェーンバインドバースト)」使用者・ユーノ・スクライア
チェーンバインドを構成している魔力と術式に働きかけ、大爆発を起こす魔法。
バインドを構成する魔力と術式によって威力は変わる。
初登場 第一話

「Scroll Shield(スクロールシールド)」使用者・ユーノ・スクライア
二つの形状を持つ、移動式収束防御魔法。
本作で最初に出たのは魔法陣式だが、巻物のような帯型もある。
ユーノは自由に操作でき、そのおかげでシールドだけを先行させることも可能。
初登場 第二話

「神速一閃(しんそくいっせん)」使用者・高町隆矢
名称は最初は登場していなかったが、高町隆矢がデバイスを切り裂くさいに使った魔法。
高速機動魔法だが、直線でしか移動出来ない。
だが、そのおかげですれ違いざまに切ったりや、突撃攻撃が可能。
但し、タメの時間が少しあるし、距離の指定が細かく出来ないなど弱点も結構多い。
初登場 第二話

「Himmel Flügel(ヒメィルフルゲル)」使用者・紅宮連
ドイツ語で「空翼」という意味。
レン専用近代ベルカ式魔法で、足の裏に特殊な力場を形成。空気を蹴って移動することが出来るようになる。
発動時はブーツの踵から二枚の羽が展開される。
初登場 第四話

「Riese Faust(リエセファスト)」使用者・紅宮連
近代ベルカ式魔法。ドイツ語で「巨人の拳」。
右手に魔力を凝縮、殴って炸裂とシンプルだがその分安定した威力を持つ。
更にレンの場合、ナックルの加速機能と魔力変換資質により高い威力を持つ。
初登場 第四話

「Thousand Arrow(サウザンドアロー)」使用者・ハル・フォーマス
弓の弦に当たる部分に空中分解する魔力矢を出現させ、敵に向かって放つ。
空中分解した矢は小さいが、千もあるため爆発すると相当の威力を持つ。その代わり、直線にしか進めない。
詠唱魔法として使われていた。
「散れ夢の如く、灰となりて。放て、サウザンドアロー」
初登場 第四話

「簡易結界(かんいけっかい)」使用者・ハル・フォーマス
正式名称があると思われるが不明。
主に他の魔導師達に気付かれないようにするための隠蔽結界。
だが今回は内側に作用させたため、中での魔力反応が格段に弱くなった。
ただ、この結界はかなりの条件があるため、ハルは戦闘に参加出来なかった。
初登場 第五話

「Flash Blade(フラッシュブレード)」使用者・ユーノ・スクライア
ユーノが唯一ちゃんとした攻撃魔法として使える魔法。
魔力刃の形成はなんとか出来るようになった。
初登場 第五話

「Blade UP(ブレードアップ)」使用者・ユーノ・スクライア
フラッシュブレードを強化するための魔法。
バリア貫通能力などを付与する。
初登場 第五話

「Blade Burst(ブレードバースト)」使用者・ユーノ・スクライア
フラッシュブレードの魔力に働きかけ、指向性をもった爆発を起こす。
フラッシュブレードに込められた魔力量により、威力が変化する。
初登場 第五話

「Thunder Ghost(サンダーゴースト)」使用者・シン
雷を人型に形成。一気に突撃させる。
影分身のように連携をすることも可能だが、一度に出せるのは二体までが限界。
雷の塊を作り出し人型にして操作する。
とてつもないレベルの魔法。
初登場 第五話

「Thunder Burst(サンダーバースト」使用者・シン
サンダーゴーストを炸裂させるための魔法。
かなりの威力を持っており、ユーノのバリアジャケットの許容量を軽く超えるダメージ力を持っている。
初登場 第五話






デバイス紹介



『レイジングハート』 持ち主・ユーノ・スクライア
本来は高町なのはのインテリジェットデバイスになるはずだったのだが、今作品ではユーノの手によりユーノ専用デバイスとなっている。
見た目は紅い紅玉で、紐を使って首にかけている。
今の所モードは未来と違って少なく、シーリングモードぐらいしか無い。
これはユーノには魔法技術関連の技術があってもデバイスの部品が無いためだ。
バリアジャケットのデザインは原作通りの民族衣装。緑色の紋様が特徴的である。
武器は杖。ただなのはが使っていた物よりも持ち手が短くなっており、先から魔力刃を出すことで剣、もしくは槍のように使うことが出来る。

『Standby Mode(スタンバイモード)』
直径1.5cmくらいの小さな紅玉。
ユーノは普段紐で首から下げている。

『Device Mode(デバイスモード)』
先程供述したように、少し短めの杖を使う。普段のユーノは戦闘時にこれのみを使う。

『Sealing Mode(シーリングモード)』
原作のなのはと同じで、違うのは緑色の羽が展開されることである。
主にユーノは封印や、強力な結界、攻撃を行うさいに使う。
なので普段は使わない。




『ソードソウル』 持ち手・高町隆矢
隆矢が「転生者戦争」に本格的に巻き込まれ始めたきっかけでもあるストレージデバイス。ストレージだが、ハルの改造を受けて来たせいか、AI機能が少しだけある。
見た目は剣を象った銀色のペンダントで、大概首に掛けている。
モードは少なく、隆矢自身が封印や結界が苦手なため、主に得意な近接戦闘に特化している。
バリアジャケットのデザインは黒いコート。
武器は機械仕掛けの太刀二本。カートリッジは片方にそれぞれ四つ入り、合計八つである。

『Standby Mode(スタンバイモード)』
普段は供述したようにペンダントとして首から掛けている。

『Sword Mode(ソードモード)』
名の通り、二つの機械仕掛けの太刀を使うモード。これが基本となり、隆矢はこのモード以外を余り使わない傾向にある。
近接戦に特化しており、隆矢の剣術が物を言う。
元々ソードソウル自体がストレージデバイスなのに、アームドデバイス顔負けの頑強さを持つため隆矢も遠慮なく使っている。

『Gun Mode(ガンモード)』
名称通り銃身が巨大な機械の銃を生み出す。
モードチェンジ時にカートリッジは消費しない。
中~遠距離戦用で、主に敵に距離を取られた場合に使う。
カートリッジ装弾数は変わらず、高い命中制度を持つ。

『Slash Mode(スラッシュモード)』
ソードソウルのフルドライブモード。モードチェンジのさい、カートリッジを一つ消費する。
武器は一本の十mにおよぶ巨大な野太刀。
持ち手の部分も長く、二mはある。
柄の一番端にカートリッジを吐き出す部分があり、最大装弾数は十二。変化した瞬間自動で装塡される。余りにも巨大なため、対人戦には余り向かないが、その分集団戦や化け物相手には役立つ。
振り回すさいはまるで薙刀のように振るう。




『フレンベルグ』 持ち手・紅宮連
レンが誕生日に貰った近代ベルカ式のアームドデバイス。
見た目は指輪で、紅い色と黒い色が混じったような感じ。右手につけている。
モードは少ない。近代ベルカ式というのもあるし、接近戦以外を殆どしないため。
バリアジャケットは前を開けた半袖コートに、シャツ、ジーンズ、ブーツといった日頃の服装にしてもおかしくない物。
武器は肘まで届く手甲付きのナックル。空戦でナックルというのは珍しいが、レン独自の魔法がソレの短所を劇的に減らしている。カートリッジは片方に六個。合計十二個入っている。

『Standbyform(スタンバイフォルム)』
見た目は特に装飾の無い指輪。
普段は右手の仲指に付けている。

『Knuckleform(ナックルフォルム)』
普段はこれだけしか使わない。スバルと同じように右手左手に機械のナックルを生み出す。
レンの魔力変換資質のことも考えて作られており、一発一発のタメた拳の破壊力は砲撃魔法レベル。簡単な射撃魔法ならこの状態でも使える。

『Killershotform(キルショットフォルム)』
その名の通り、「必殺技」を放つためのフルドライブモード。
変化のさい、カートリッジを二個消費する。
武器はナックル。ただし見た目は赤色、形状も鋭く変化している。しかも噴射口からは魔力光による翼が片方に四つ展開され、殴る時の加速に使われる。
このモードでのみ、砲撃魔法が使える。カートリッジ装弾数は変わらない。
絶対速度はともかく、翼の加速によるパワーが半端では無い。




『エアストロ』 持ち主・ハル・フォーマス
ハル自作のインテリジェントデバイス。普段はカードにして胸ポケットの中に入れている。
モードは意外と多い。理由としては中~遠距離の戦闘だけでなく、様々な局面に対応するため。
ハルのために作られた物のため、ハルとの相性は抜群である。ミッドチルダ式の中~遠距離に特化している。
バリアジャケットは長袖の黒いコートに黒いズボン。コートは結構長めに形成されている。
武器は弓。だがモードをころころ変えるため、一概には言い切れない。
カートリッジは六個。砲撃の上乗せによく使う。

『Standby Mode(スタンバイモード)』
銀色のカード。
普段は喋らず、胸ポケットにいる。

『Arrow Mode(アローモード)』
最初の体系。主に射撃魔法に使われる。全長一メートル程の機械じかけの弓。弓の本体にちゃんと薬莢が出る部分がある。

『Gun Mode(ガンモード)』
両手に二丁の拳銃を出現させるモード。スピードに特化し、近寄られたら必ずこれになる。
名称が隆矢と同じなのは、隆矢のモードを作ったのがハルなため、同じ名前を流用した。

『Cannon Mode(カノンモード)』
砲撃魔法専用モード。機動性を捨て、大口径のロケットランチャーの様な両手用銃を出現させる。
距離を詰められたら使えないので、離れて使う。

『Spirit Mode(スピリットモード)』
エアストロのフルドライブモード。カートリッジ一発を、消費することにより変化する。
二メートル近い強弓になり、砲撃・射撃両方が扱える。
弓の周りには特殊な魔力力場を発生させ弾丸を強化することにより、命中率を格段にアップさせている。
カートリッジ装弾数は八個。
一撃で全ての戦況を引っくり返すかもしれない力を持っている。





その他(レアスキル、意味不明の単語など)


「転生者戦争」
半年前、様々な転生者達により起こった戦い。海鳴にて起こっていた。だが高町隆矢が仲間とともにそれを解決。
転生者達の八割が二つの団体に纏め上げられた。
「原作に関わる」「原作に関わらない」この二つは未だに議論があり、時にぶつかり合っている。
ただ問題を起こすのは戦争のことを知らない新米転生者がほとんど。


「魔力変換資質・炎」
魔力を自然の現象である炎に変える力。
魔力を電気や氷などに変えるのは術式と力があれば可能だ。
だが、レンの場合そういったプロテスを踏まずに魔力をそのまま炎に変えることが出来る。




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