アゴラブックスの第1弾として、片山さつきさんと私の共著『構造改革は終わらない』を発売した。これは3月と4月に3回にわけてやった対談をまとめたものだが、A5判80ページで150円。新書版なら150ページぐらいだが、中途半端なサイズなので普通は本にはならない。本にするには半年ぐらいかかるので、政治のような動きの激しいネタはむずかしいが、電子出版なら印刷・製本を省けるので1ヶ月で完成できる。逆に数千ページある資料も、原型のまま出せる。物理的な大きさとは関係なく、本質的な情報の重要性だけが出版の基準である。売り上げの半分は著者および版元に還元する。
鳩山首相が辞任した。片山さんが強調しているのは、鳩山政権が根本的な錯覚から出発したということだ。90年代の経済危機に自民党政権や霞ヶ関は遅ればせながらも対応し、橋本政権が経済財政諮問会議や官邸中心の意思決定システムをつくり、財務省がバックアップし、それを小泉政権が最大限に活用して不良債権を処理し、財政を建て直した。これは小泉首相と飯島秘書官の政治家や官僚を掌握する「芸」によるところが大きい。
竹中平蔵氏によれば、小泉氏は数ヶ月前に「鳩山さんも小沢さんも6月はじめに辞めるのではないか」といっていたそうだ。小泉氏は政策の中身にくわしいわけではないが政局には動物的な勘が働き、「**君を**に使え」というように固有名詞で人事を動かした。そこまではよかったのだが、彼の手法があまりにもに個人的な名人芸に依存していたため、そういうスキルのない安倍政権はすぐ行き詰まり、あとの政権は昔の自民党に回帰してしまった。
だから民主党が「政治主導」をめざすなら、橋本政権から小泉政権へ継承されてきた官邸主導を制度化し、政治家が官僚をコントロールできる人事システムをつくるべきだった。ところが小沢氏も鳩山氏も「バラマキ福祉を約束して選挙に勝った」と錯覚し、官僚を敵視してバラマキ路線を守った。このため予算は史上最大規模に膨張して収拾がつかなくなり、選挙に関係のない外交はどうでもいいと思っていたため、社民党をつなぎ止めるために適当なリップサービスをしてきた。そのひずみがここに来て、一挙に爆発したわけだ。
民主党の失敗は、こうした錯覚にもとづいて「小泉改革で格差が広がった」などと宣伝し、古い自民党のバラマキ路線に回帰したことだ。菅原琢氏も指摘するように、今でも都市住民の多数は構造改革や財政再建を支持しており、バラマキがありがたいとは思っていない。一人区はバラマキでないと勝てないという「小沢神話」を脱却しないと、民主党は立ち直れないだろう。
だから鳩山氏の後任に、バラマキ路線の共犯者である菅直人氏がなるのは最悪だ。彼が首相になっても民主党の支持率は上がらず、参院選ではボロ負けして1ヶ月半で菅首相は退陣し、短命内閣の記録を塗り替える公算が大きい。そのあとは民主・みんな連立政権で「渡部喜美首相」もありうる。渡辺氏も財政再建の見通しを示さないポピュリストだから民主党と馬が合うだろうが、これも破綻する運命だ。構造改革を継承するしか、本格政権になる道はない。
竹中平蔵氏によれば、小泉氏は数ヶ月前に「鳩山さんも小沢さんも6月はじめに辞めるのではないか」といっていたそうだ。小泉氏は政策の中身にくわしいわけではないが政局には動物的な勘が働き、「**君を**に使え」というように固有名詞で人事を動かした。そこまではよかったのだが、彼の手法があまりにもに個人的な名人芸に依存していたため、そういうスキルのない安倍政権はすぐ行き詰まり、あとの政権は昔の自民党に回帰してしまった。
だから民主党が「政治主導」をめざすなら、橋本政権から小泉政権へ継承されてきた官邸主導を制度化し、政治家が官僚をコントロールできる人事システムをつくるべきだった。ところが小沢氏も鳩山氏も「バラマキ福祉を約束して選挙に勝った」と錯覚し、官僚を敵視してバラマキ路線を守った。このため予算は史上最大規模に膨張して収拾がつかなくなり、選挙に関係のない外交はどうでもいいと思っていたため、社民党をつなぎ止めるために適当なリップサービスをしてきた。そのひずみがここに来て、一挙に爆発したわけだ。
民主党の失敗は、こうした錯覚にもとづいて「小泉改革で格差が広がった」などと宣伝し、古い自民党のバラマキ路線に回帰したことだ。菅原琢氏も指摘するように、今でも都市住民の多数は構造改革や財政再建を支持しており、バラマキがありがたいとは思っていない。一人区はバラマキでないと勝てないという「小沢神話」を脱却しないと、民主党は立ち直れないだろう。
だから鳩山氏の後任に、バラマキ路線の共犯者である菅直人氏がなるのは最悪だ。彼が首相になっても民主党の支持率は上がらず、参院選ではボロ負けして1ヶ月半で菅首相は退陣し、短命内閣の記録を塗り替える公算が大きい。そのあとは民主・みんな連立政権で「渡部喜美首相」もありうる。渡辺氏も財政再建の見通しを示さないポピュリストだから民主党と馬が合うだろうが、これも破綻する運命だ。構造改革を継承するしか、本格政権になる道はない。
コメント一覧
それより、郵政改革法案なんて通して大丈夫なんでしょうか。
郵政改革法案はWTOの内国民待遇規定違反に触れる危険があると思うのですが。
菅総理でも、渡辺総理でもWTOからの批判の矢面に立たされる。
どちらの総理も短期で終わると思う。
アゴラブックスがどうなるかわかりませんが、クラウドに本棚が作れるのは面白いので、この本は購入しました。今後、図書館より有用な文書を配布していただけるとありがたいです。廃版の学術書とか大歓迎ですよ。
PCに入力しながら書籍を参照したい私にとって、電子書籍は有力なツールです。
この記事みると、売った電子書籍もクラウドにした方がいいのでは?もし誤字脱字があってもリリース後に変えられますし。
これまで、出版物は全て国立図書館に保管されるシステムですが、電子書籍の場合も「知の集約」は機能するのでしょうか?
電子書籍はどこまで保存するかの線引きが難しそうに思えます。
新聞の電子化と組み合わせると面白そうですね。コラムや連載特集を遅滞無く電子書籍化し、月額4000円で購読すれば2000円分までの書籍も読める、とかなら(気分的に)三方一両得になりそうです。
政局・官僚については言及しません。
誤字ありますよ、[渡部善美]じゃなくて[渡辺喜美]ですかね。
今回の記事を拝読して、池田先生御自身の以下のポストが思い起こされました。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/f6b17fba2ea94d859f8afe4a9dd58de3
たしかに民主党は数々の失敗を積み重ねてきましたが、であれば、それに代わるような断行のできる政党は見つけられません。なおかつ政策にまで射程をひろげれば尚更です。
今般の日本の政治状況について、われわれ有権者にはどのような選択肢が残されているのか? 御意見を賜りたく存じます。
ありがとう。誤字を訂正しました。
今度の選挙の民主党の候補者はどうなっているんでしょうかね。小沢さんが選んだ人たちがそのまま出ちゃうのなら、党の顔だけが変わってもちょっと意味がないですね。派閥政治や利権政治を止めさせるには、衆院なんかは議席をもっと削減しないといけないと思うのですが。
あと関係ないですけど、地方の首長選など、決選投票をやらないと、投票率が低かったり似たような政策を言う候補者が乱立すると、結果的に組織票だけで当選してしまいますので、選挙制度の改革は必要ですよね。
電子書籍なら本にするには賞味期限が短い情報の本でも本として出せますね、ブログやtwitterのように速報性が高くても内容の裏がとれているか不安だったりするので、編集の手がはいるような安心感が欲しいですね。電子書籍でも責任編集の名は前面に出して欲しいところ。
管総理候補は20年来経済政策の失敗をしていると言っていますね、また小泉総理もデフレ時に人を切るような政策をとって悪化させた、カルロスゴーンの名前を出して、リストラする事によって経済を立て直したのは間違いだというような事も言ってました。人を切ったからこそ立ち直ったのであって、あのとき人を切らなかったら、財政破綻してたんじゃないかと思うんですが。