Aさん。長いことごぶさたしていますが、お変わりありませんか。非礼を顧みず突然の手紙を思い立ったのは、21日の党首討論をテレビで見て、強い違和感を覚えたからです。
ご承知のように米紙ワシントン・ポストはコラムで、核安全保障サミットに出席した鳩山由紀夫首相のことを「このショーの最大の敗北者」だと言い、「愚か」だと酷評しました。自民党の谷垣禎一総裁がこれを取り上げ、「暴言だが、原因は首相にある」と追及したのです。
鳩山首相は「私は愚かな首相かも知れない」と、弱音とも取れる発言をしてしまいました。無防備といえば、あまりに無防備。首相発言は、窮地に追い込まれた孤立感と、容易に解決策の見いだせないいら立ちを際だたせる結果になったと思います。
普天間問題をめぐる新政権の迷走は確かに目を覆いたくなるものがあります。支持率は急落し、党首討論でも防戦一方でした。
ただ気になるのは、最近の普天間問題をめぐる中央メディアの報道が「5月末政局」に終始し、ことの本質からだんだん遠ざかっていることです。
混乱の現象面だけを見て鳩山政権を批判し、「現行合意案が最善」だと主張するのは、一見、現実的なように見えますが、地元沖縄の民意の変化を無視した考えであり、それこそ非現実的だと言うしかありません。
現在のきしみを「同盟の危機」だとおあり立てるだけでは、問題は何も解決しません。
日米合意案を覆すというのは途方もないリスクを伴うもので、政権の命取りになりかねません。日米合意案を放棄し、猛烈な政治的嵐の中に突っ込んだ首相の決断を、どう理解すべきなのでしょうか。
その背景にあるのは、米軍基地を取り巻く歴史的変化です。
冷戦時代の日米安保は、それを認めるかどうかはともかくとして、役割や目的がはっきりしていました。しかし、冷戦後の今、海兵隊が何のために駐留しているのか、正確なところはよくわかりません。
沖縄の海兵隊が日本防衛の任務を負った部隊でないことは米国防総省高官の証言や、現実に安保条約の極東条項を超えてイラクやアフガニスタンまで活動範囲が広がっていることからも明らかです。
県内移設反対の世論が与野党の別なく一気に、後戻りできない勢いで広がったのは、なぜなのか。日米両政府はよくよく考えてほしいと思います。
これからの日米同盟は、住民意識の変化を前提に、住民が受け入れられるようなものでなければなりません。
冷戦時代の古い発想で、アメとムチの政策によって、離島や辺地に米軍基地を押しつけるやり方は、明らかに限界にきています。
舌足らずな説明になってしまいましたが、25日、26日の社説でもあらためてこの問題を取り上げ、一緒に考えたいと思います。