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【主張】小沢幹事長 なぜ証人喚問に応じない
自らの資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、国会招致を拒み続けてきた民主党の小沢一郎幹事長が、一転して衆院政治倫理審査会(政倫審)に出席する意向を表明した。
検察審査会が「起訴相当」を議決し、東京地検特捜部が改めて小沢氏の事情聴取を要請するなど事態が進展したために、説明責任を果たす姿勢を示し、改めて潔白を主張するねらいだろう。
だが、特捜部の不起訴処分を根拠に疑惑や違法性がないと改めて主張するのは通用しない。20億円を超える虚偽記載は「元秘書らの判断で自分は関知していない」などの説明には多くの疑問が残る。国民が求めるのはそれらの疑問に答えることにほかならない。
非公開が原則で、偽証罪に問われることもない政倫審での弁明は強制力に欠け、不十分である。過去をみても政治家のみそぎの場に使われてきた例が多い。真相解明には証人喚問が不可欠だ。政倫審による幕引きは許されない。
政倫審への出席について、小沢氏は「選挙民、国民にしっかりと話をすることで理解と支持を獲得できる」と語った。
党幹部に対して「いつでも(政倫審に)出る」と伝え、「政倫審はおれがつくった」とも語っているという。確かに、政倫審は小沢氏が衆院議院運営委員長だった昭和60年に両院に設置された。だが、同時に作られた政治倫理綱領は「疑惑をもたれた場合にはみずから真摯(しんし)な態度をもって疑惑を解明」することを定めている。
元秘書の石川知裕衆院議員らの逮捕以来、小沢氏は説明責任を果たさないまま幹事長にとどまり、開き直りと批判されてきた。そうした姿勢が、自ら作ったルールをいかにむなしいものにしてきたかを小沢氏は考えてほしい。
「政治とカネ」をめぐる国民の厳しい批判に対し、小沢氏と鳩山由紀夫首相の不誠実な対応が政権や民主党への信頼を損なってきたのは明白だ。参院選を控え、小沢氏としても政倫審出席に方針転換せざるを得なかったのだろう。
政府・与党内には小沢氏の対応を歓迎する声が出ているが、疑惑の徹底解明よりも世論の逆風をかわすことしか考えていないのでは情けない。
政倫審を公開する議論も必要だが、まずは疑惑解明が最優先だ。自民党など野党は証人喚問実現を引き続き要求すべきである。