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社説:哨戒艦沈没事件 日本は中国説得強めよ

 韓国哨戒艦の沈没事件への対応を話し合った日中韓首脳会談は、日本・韓国と中国の間の温度差を残しながらも3カ国が緊密に連携していくことを確認した。中国の温家宝首相と今日会談する鳩山由紀夫首相には中国が国際社会と歩調を合わせるよう働きかけを強めてもらいたい。

 沈没事件の原因については多国籍合同調査団が「北朝鮮製魚雷による水中爆発」と断定し、韓国の李明博(イミョンバク)大統領は国連安全保障理事会に提起して国際社会とともに北朝鮮の責任を問うと明言している。これに対し、北朝鮮は韓国側の発表を「捏造(ねつぞう)」「謀略」と非難し、日中韓首脳会談に合わせ平壌で大規模集会を開くなど反発を強めている。

 しかし、合同調査団の調査結果と北朝鮮側の反論を比べれば、説得力がどちらにあるかは火を見るより明らかだろう。国際社会でも韓国を支持する国は増えている。北朝鮮への圧力強化に慎重だったロシアも最近、専門家チームの派遣を決定したという。

 韓国側の説明によると、首脳会談で温首相は合同調査団の調査結果に対する直接的な評価と判断は避けながら「中国は責任ある国家だ。合同調査団の調査結果と各国の反応を注視する」「朝鮮半島の平和と安定を破壊するどんな行動にも反対し糾弾する」と述べたという。国際社会との協調に配意する姿勢を示したものとして注目したい。

 鳩山首相はいち早く「韓国が国連安保理に決議を求めるなら日本として先頭を切って走るべきだ」と韓国支持の立場を表明しているが、首脳会談でも「国際社会全体で韓国を支持していくことが大切だ」と改めて強調した。中国に協力を促すうえで日韓の結束は不可欠だ。今後も米国を加えた3カ国連携を強めていく必要がある。

 また、鳩山首相は「合同調査団の調査と科学的な物証を通じ、北朝鮮の魚雷攻撃で哨戒艦が沈没させられたことが明確になった」とも述べ、北朝鮮に対する日本の追加制裁措置に言及した。

 先週決定した追加制裁は北朝鮮への送金や持ち出し金の規制強化が柱だが、以前から実施している輸出入禁止や船舶入港禁止などの措置と合わせても効果は限定的だ。韓国も開城工業団地と人道支援を除く南北間の交流・交易の中断を発表したが、北朝鮮に効果的な圧力をかけるにはやはり中国の協力が欠かせない。

 韓国側の発表によると、3首脳は朝鮮半島の非核化の重要性を指摘し6カ国協議を通じた共同努力を続けることも確認した。しかし、沈没事件の責任をあいまいにしたままではその努力が実を結ぶはずはない。

毎日新聞 2010年5月31日 2時30分

 

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