きょうのコラム「時鐘」 2010年6月4日

 随分乱暴な宇宙からの帰還に見えた。野口聡一さんの乗った宇宙船は、着陸というより墜落するように地上に戻ってきた

大気圏で火の玉になる。着陸寸前、減速のためのエンジン逆噴射で、宇宙船が炎と黒煙に包まれる一幕もあった。滑るように地上に戻る米国のシャトルの方が、よほどかっこいい。が、「火だるま落下」方式は40年間無事故というから、物事は見掛けによらない

そんな帰還に耐えた野口さんは、笑顔で親指を立てるしぐさを見せた。大任を終えた喜びが伝わるが、困ったことに、門外漢にはその大任の大切さがまるで分からない。巨額の「旅費」を払って宇宙旅行に便乗するより、日本独自の無人探査に金を回した方がいい、という話も聞く

そんなことを思うのは、やはり親指を立てて見せた別の人のせい。あの人も、どんな仕事をしたのだろう。同じように、火だるまになってドスンと落ちた

効率の悪い米シャトルは、もうすぐお払い箱。これからは「火の玉落下」が帰還の定番となる。自慢じゃないが、われらが首相の大半もそう。きょうは新たな「火の玉候補」のお出ましである。