鳩山由紀夫首相は、5月1日に熊本県水俣市で開かれる水俣病犠牲者慰霊式に出席する意向を固めた。水俣病の公式確認から54年になるが、慰霊式への出席は歴代首相で初めてとなる。複数の政府関係者が明らかにした。
政府は3月、損害賠償を求めて熊本地裁に提訴していた未認定患者と、一時金支払いなどの和解案の受け入れで合意。同月に首相と会談した水俣市の宮本勝彬市長が慰霊式への出席を要請していた。首相は中国政府から、4月30日の上海万博開幕式への出席を求められていたが、慰霊式を優先させた。
未認定患者の救済をめぐっては、水俣病不知火患者会の約2千人が国、熊本県、原因企業のチッソを提訴。3月末、1人当たり一時金210万円と療養手当を支払うなどとする和解案を双方が受け入れることで合意した。政府は5月1日にも、和解案に沿って救済に向けた申請手続きを始める方針だ。
1994年に水俣市長として初めて被害者に謝罪した吉井正澄さん(78)は「遅すぎた感があるが、歓迎したい。国が自らの責任を認めず、不作為を重ねてきた結果、水俣病施策は矛盾を重ね、市民も分断された。一国の代表として真摯(しんし)な反省と償いの言葉をもらいたい」と話した。