活動だより


・西大阪水平社創立80周年記念事業
 「全国部落めぐり」報告
  (2004.4.9up)


 第1回(2003.8.29) 放置された部落―兵庫県・西山 

       西山部落の全景

@過疎化――兵庫県宍粟郡千草町の中心部を流れる千種川の西側、山の急斜面に西山部落はある。人口は39世帯・約100名。高齢化率は40%と千草町13集落中最も高い。小中高校生は合わせて8名。


A厳しい生活実態――安定就労は数軒だけ。仕事がないため、若者はみな出ていく。家の敷地内の墓だけが残る。急勾配の道は歩行も困難。冬場は霊柩車、救急車も登れない。戸板で運ばれる途中亡くなった方もいる。


B差別行政――町には同和対策の窓口がない。職員が「隣保館」の意味も知らなかったという。改良住宅は未改修のまま30年間放置され、著しく老朽化している。そんな千種町だがツチノコの懸賞金には2億円をかけている。

       急勾配な道は歩行も困難


C進まぬ交流――地図上は「西山」は一つだが、部落以外は「奥西山」、部落は「口西山」と呼ばれ、自治会も分かれる。昔から西山と町の子が遊ぶことはまずなかった。今も交流は進まない。ある女性は「商店街では買い物だけですぐ帰る。一般の人と口をきくのが怖い」と。


D運動の再建――2年前から週1回の識字学級を始めた。2002年兵庫県連に正式加盟した。20年のブランクを埋める努力が続けられている。

                              

                                  


 第2回(2003.9.4)@人口激減から協同のまちづくりへ―京都七条・柳原銀行資料館

@人口激減・高齢少子化――七条部落は、行政的には崇仁地区と呼ばれ、JR京都駅のすぐ東、鴨川のほとりに位置する。1960年の住宅地区改良法施行後まちづくりが進められてきたが、河川の付け替えに伴う利害対立や人口減少の問題などにより、多くの事業が残されている。事業の遅れの影響もあり、かつては1万人以上の人口が今は4分の1に激減し、1250世帯2300人。うち65歳以上が700人、70歳以上が520人と高齢化が激しい。崇仁小学校の生徒は全体でわずか67人(50世帯)と少子化も著しい。

         柳原銀行資料館

A組織の違いをこえて――「部落差別はあるのに部落の人間はいなくなる」という危機感から、運動団体の違いを超えたまちづくりを展開する。1996年崇仁自治連合、部落解放同盟七条支部、全解連の三者で「崇仁まちづくり推進委員会」を設立し、まちづくり構想を発表した。高瀬川の整備、小学校へのビオトープ設置、ワークショップによる住宅建て替え計画の策定などに取り組んでいる。

B柳原銀行記念資料館――コミュニティセンターの横には、明治時代に地元有志が設立した柳原銀行が移築され、記念資料館として公開されている。柳原銀行は、部落内に作られた全国唯一の銀行として、歴史的価値が高い。国道24号線の拡幅工事によって取り壊されることになったことから、保存運動が展開された。




 第2回(2003.9.4)Aせせらぎのまちづくり―滋賀県甲良町呉竹支部

@町の約半数が地区住民――甲良町の集落13のうち2地区が被差別部落。町人口9000人のうち部落の人口比率は44.51%。

         せせらぎのまちづくり

A運動の中心――呉竹支部は滋賀県の部落解放運動の発祥の地といわれる。現在も支部長が県連の委員長であり、その他数人が県連執行委員を勤めるなど、中心的な支部である。加島支部とは中3合宿の交流や米の交流などでゆかりが深い。支部の課題としては若い世代の活動家が育っていないこと。

B全国的に注目されるまちづくり――1985年呉竹支部の山本支部長が町長に当選し、現在に至るまで5期連続当選。1990年から「躍進するせせらぎ遊園のまちづくり」を住民参加のもとに進める。各集落に「むらづくり委員会」が設立され、整備したせせらぎの維持・管理を住民自身が行なっている。各委員会には100万円の予算を町が出している。また、人材養成の観点から「せせらぎ夢現塾」を開設し、専門家を講師に招いて取り組んでいる。

C合併問題――甲良町のまちづくりは、全国的にも有名で外国からも視察に訪れる。しかし、2005年に彦根市などとの合併が決まっており、これまでの町独自の取り組みをどう継承するかが課題になっている。


 第3回(2003.9.20〜21) 住民主体のまちづくり・少数分散型部落−長野県・木島平村

@少数点在――長野県の北部、新潟県との県境に位置する中野市・山ノ内町・木島平村・野沢温泉村を中高地区という。中高地区にある被差別部落は、長野県の中でも典型的な少数点在型部落で、1地区あたりの平均世帯数は5世帯前後。そのうち解放同盟の組織率は約50パーセントを切る。木島平村支部には11戸の部落世帯のうち5戸が解放同盟に加盟している。

活動は他の3市町村の支部を加えた中高地区協議会を単位に進めている。

 

中野市

山ノ内町

木島平村

野沢温泉村

合計

  全人口

43,600

16,300

5,700

4,700

70,300

  地区数

11

4

4

1

20

 地区世帯数

89

16

11

5

121

 地区人口

230

45

26

13

314

        村内をフィールドワーク

A警察・役人の末端の役割――中高地区の被差別部落が形成された理由としては、旧街道沿いの集落の出入り口に住まわされ、地元や近隣の村の警備・治安維持、牢番、処刑の手伝いなど、警察・役人の末端の役割を担わされたていたと考えられる。身分名は「エタ」ではなく「チョウリ(長吏)」と呼ばれていた。

B差別撤廃総合計画――1995年〜96年にかけて中高地区の市町村で制定された人権条例を具体化するため、差別撤廃総合計画づくりを進めてきた。まず、同和行政・同和教育の担当職員のほとんどが後ろ向きの意識だったことから、「この仕事はおもしろい」と思えるように「職員を運動体が育てる」ことを意識的に追求した。計画策定も策定後の取り組みも被差別当事者(部落差別だけでなく)の参加・交流を軸に進めている。




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