(cache) 95兆円予算要求 ムダ遣い根絶の戦略を

朝日新聞 2009年10月23日

行政刷新会議 「仕分け人」に期待する

予算の無駄遣いを徹底的になくしてほしい。政権交代にそんな思いを託した有権者は少なくないはずだ。その役割を担う行政刷新会議がいよいよスタートした。

取り組むのは、過去最大の95兆円に膨らんだ来年度予算の概算要求の削り込みだ。マニフェストの公約を意欲的に盛り込んだものの、とても財源が追いつかない。野放図な国債発行を避けるには無駄を省き、不要不急の事業に大なたを振るうしかない。

仙谷由人行政刷新相は92兆円まで削る目標を掲げ、鳩山由紀夫首相はさらなる削減を求めている。自民党長期政権下で続いてきた事業の中には、おりのように多くの無駄がたまっているに違いない。政権交代は、過去のしがらみにとらわれずに予算をリセットする好機だ。大胆に切り込んでほしい。

そのための強力な武器として期待されるのが「事業仕分け」という手法だ。民間のシンクタンク「構想日本」が開発したもので、7年前から地方自治体の事業見直し、予算の効率化に活用され、実績を重ねてきた。

自治体職員と「仕分け人」と呼ばれる外部の評価者が、行政サービスをひとつずつ取り上げ、本当に必要なのか、必要だとしても自治体が行うのが適当なのか、民間に任せられないのか、事業の規模ややり方は今のままでいいのかを議論し、分類していく。

自治体とは比べものにならない規模の国家予算を相手に、この手法がどこまで有効に働くか。複雑に入りくんだ予算や行政の深い森の中で、迷子になりはしないか。「仕分け人」の力量が問われる。

行政刷新会議は、構想日本の加藤秀樹代表を事務局長に起用し、実務に詳しい民間人のほか、枝野幸男元政調会長ら約30人の民主党議員を投入するという。

無駄の洗い出しはもちろん、地方や民間に委ねるべき事業をより分け、政策に優先順位をつける作業である。政治家が判断の責任を持つのは当然だ。

政府は、事業仕分けの作業を全面公開する方針だ。国民の視線にさらされる緊張感の中でこそ、公正な吟味が可能になる。

納税者が参加意識を持つうえでも意義は大きい。行政サービスのあり方、官と民、国と地方の役割分担を考える契機にしたい。そこに「行政刷新」の本当の意味がある。

政権交代で概算要求をやり直したため、12月末の予算案決定まであまり時間がない。今回、仕分け対象を廃止や大幅な圧縮が見込める約240事業に絞るのはやむをえないだろう。

しかし、来年度以降はぜひ予算全体に切り込んでほしい。そのための知恵や工夫を、今回の仕分けを通じて蓄積してもらいたい。

毎日新聞 2009年10月23日

行政刷新会議 予算の質高める装置に

「ムダ撲滅」「生活重視」の二兎(にと)を追うべきである。国の予算や事業を洗い出す政府の行政刷新会議が本格始動した。

概算要求が95兆円にふくれた来年度予算案の絞り込みなど、税金の無駄遣いにメスを入れる同会議に課せられた責任は極めて重大だ。同時に、国民生活に必要な支出は確保する原則はあくまで維持しなければならない。目指すべきは予算の質の向上である。

鳩山由紀夫首相を議長、仙谷由人行政刷新担当相を副議長とする刷新会議は「脱官僚依存」を掲げる内閣の看板組織だ。だが、仙谷氏が当初構想した少人数構成ではなく6閣僚も含めた11人がメンバーとなり、スピード感のある運営は難しくなった。スタッフなど体制整備がおぼつかないまま、さきの補正予算の執行停止では「成果」を迫られた。出遅れは否定できない。

年末に向けた来年度予算編成でどこまで実績を上げられるかで真価が問われる。鍵を握るのが、各省の事業を一つずつ精査する「事業仕分け」手法の導入だ。

刷新会議の事務局長に起用された加藤秀樹氏が代表を務める民間シンクタンクはこの手法を通じ、多くの自治体で支出削減に威力を発揮してきた。仕分け業務には国会議員のほか、民間スタッフのチームを編成し240程度の事業を洗い出すという。住民に身近な地方の事業と事情は異なり時間的制約もあろうが、国民の前に徹底公開し、わかりやすく必要性を吟味することが望ましい。

とりわけ、これまで放置されてきた特別会計や、公益法人への国の支出を俎上(そじょう)に載せることは賛成だ。公益法人への官僚の天下りと、国からの放漫な支出は表裏一体だ。仙谷氏は公務員制度改革も所管するだけに、並行して改革を進めてほしい。

一方で、小泉改革でみられたような歳出削減至上主義に陥らないよう、留意する必要もある。来年度予算編成にあたり大幅な税収減が見込まれる中、民主党がマニフェストに掲げた生活支援策も見直しを求める声が勢いづいている。だが、単なるコストカットの道具として、刷新会議を利用することは禁物だ。

中央官庁の痛みを伴うムダ削減に切り込む一方で、生活重視の両立に汗を流してこそ、国民は予算の質の変化を実感できる。国から地方への事業仕分けも単なる自治体への仕事の押しつけでなく、分権効果が期待できるかの視点が大切だ。

刷新会議事務局の主体である官僚が幅を利かせるようでは、こうした視点は生まれまい。仕分け作業では専門家や自治体首長らの「目利き」も大いに活用すべきである。

読売新聞 2009年10月23日

行政刷新会議 事業仕分けでどう無駄を削る

「税金の無駄遣いの根絶」を目指す鳩山内閣の目玉組織が、ようやく始動した。どこまで各府省の既得権益に切り込めるか。その成否が鳩山内閣の評価に直結しよう。

政府の行政刷新会議が初会合を開き、当面、95兆円超にも上った来年度予算の概算要求の削り込みに取り組む方針を確認した。国会議員らによる3作業グループが200以上の事業を精査し、年末の予算編成に反映させる。

民主党は、子ども手当、高速道路無料化などの新規政策に必要な財源の主要部分を、従来の予算の組み替えで(ねん)(しゅつ)するとしている。この作業の中核を担うのが行政刷新会議である。

予算の精査は、「事業仕分け」という手法で行われる。予算要求された個別事業が必要か否か。実施主体は国か、地方自治体か、それとも民間か。より効率的な改善策はないか。こうした視点でそれぞれ判定していく。

無駄の排除には国民の関心も高い。政権交代を機に、従来と違う手法で、不要不急の予算をあぶり出す試みは悪くない。

仙谷行政刷新相は3兆円以上の削減を図る考えを示した。具体的な成果につなげてもらいたい。

ただ、課題も少なくない。

行政刷新会議は9月中の発足を予定していたが、大幅に遅れた。事務局も各府省からの「寄せ集め」で、人員も十分でない。財務官僚が要職を占め、「主計局支配」が強まった、とも指摘される。

事業仕分けは既に、一部の自治体で実施され、一定の成果を上げている。だが、短期間の作業日程の中、はるかに複雑な政府予算にどこまで通用するか。

作業は公開で行われる。予算編成過程を透明化する狙いは理解できるが、官僚をたたき、「政治主導」を演出するパフォーマンスに陥らないようにしてほしい。

豊富な知識と専門性が求められる作業チームの大半が、当選1回の若手議員なのも気がかりだ。

行政刷新会議は予算編成後に、政府や独立行政法人などのより包括的な事業仕分けを実施する。国と地方の役割の再検討や、二重行政の是正に取り組むものだ。

官僚OBがいる公益法人に手厚く予算配分する、もたれ合いの構造を改革するには、公益法人のあり方や、公務員の早期勧奨退職の慣行など人事システムの見直しが欠かせない。

政府は、行政刷新会議が取り組む課題の工程表を早期に作成し、改革の全体像を示すべきだ。

産経新聞 2009年10月16日

概算要求 これでは財政が破綻する

鳩山由紀夫政権で初めてとなる来年度予算の概算要求は90兆円を超える過去最大規模に膨らむ。概算要求基準(シーリング)の廃止で歳出圧力に歯止めがかからなかったといえる。

シーリングの廃止は硬直的な予算配分をやめ、優先順位に沿って政治主導で予算を編成するのが目的だった。要求額については、先の予算編成方針で政権公約の新規政策以外は今年度当初予算を下回るよう求めた。

ところが、フタを開けると来年度分以外の新規政策や公約にない政策要求が続々となされた。今年度当初を下回ったのは公共事業くらいで、とくに社会保障費や地方交付税の大幅増が目立つ。

年末までにこれらにどう切り込むか。その査定主体が混乱している。中心となるはずの国家戦略室と行政刷新会議は陣容が手薄で経験もない。結局は財務省頼みになろうが、権限の分担があいまいで極めて不安だ。

子ども手当や農家の戸別所得補償など新規政策の来年度分約7兆円の財源確保さえめどが立っていないのも、こうした事情による。今年度補正予算削減で3兆円程度は確保したが、いわゆる「埋蔵金」からの捻出(ねんしゅつ)や所得税の控除見直しなどはこれからだ。

今年度の税収は当初見込みを大幅に下回り、国債発行額と逆転する。鳩山政権には明確な成長戦略がなく、来年度も税収増は期待できない。首相らが国債増発に言及し始めたのはこのためだろう。

消費税を4年間封印しても財源は国債増発に頼らないとした政権公約はどうなったのか。しかも、増発かどうかの基準を今年度当初予算時の33兆円でなく、補正後の44兆円に置いている。補正が景気対策という緊急避難措置だったことを考えればおかしな話だ。

菅直人国家戦略担当相は年末の予算編成に合わせて財政健全化目標を策定するとしていたのに、これも数カ月から1年先送りするという。景気見通しが不透明だとの理由である。

しかし、同じ条件下の先進各国は世界同時不況脱出後に向け財政面からの出口戦略として早々に目標を打ち出している。すでに日本は地方を含めた債務残高が国内総生産(GDP)比1・7倍と先進国で最悪の財政状況なのだ。

鳩山政権が政策決定プロセスと財政規律を早急に確立しないと、財政は破綻(はたん)に向かおう。

朝日新聞 2009年10月17日

概算要求 公約の優先順位を見直せ

鳩山政権にとって来年度の予算編成は重大な関門だ。自公政権時代の予算のあり方を根本的に変革するための試練が待ち受ける。各省の概算要求がきのう出そろい、新政権の真価がいよいよ問われる。

鳩山由紀夫首相は「要求大臣でなく査定大臣に」といい、概算要求の総額を今年度当初予算の88.5兆円以下に抑えるよう指示していたが、ふたを開ければ95兆円にものぼった。

政権公約に掲げた新政策を実現するのに必要な金額を各省が盛り込んだ結果、予想以上に膨らんだ。

一方で各省とも大臣、副大臣、政務官の政務三役を中心にムダ削減に取り組んできた。麻生政権が決めた1次補正予算を見直す作業では、3兆円近い財源を確保する成果を上げた。

国土交通省などが要求した来年度の公共事業費は前年度の実績より15%も減った。自公政権ではありえなかった大胆さだ。それでも公約実現に向けて積み上がった要求額をまかなうことができなかった。

とはいえ、政権交代からまだ1カ月。新政権は、要求額を一律に抑える自民党政権時代のシーリング(概算要求基準)方式を廃止し、官僚依存から脱して新たな編成手法に挑んだ。まずは順調な滑り出しといえる。

問題は、要求額を年末の政府案決定までにどう絞り込むかだ。未曽有の経済危機で法人税が大幅に減り、歳入の前提は大きく崩れた。46兆円が見込まれた今年度税収は40兆円を割り込みそうだ。来年度も深刻な歳入不足を覚悟しなければならない。

この状況を踏まえ、鳩山首相は「赤字国債は本来なら発行すべきでないが、税収の落ち込み具合を勘案する必要がある」と、国債増発の封印を解く可能性を示唆した。

経済危機で傷んでいる日本経済を政府が安全網整備などで下支えしていくことは欠かせない。それを考えれば、いま引き締めの方向に転じるわけにはいくまい。国債増発も一時的にはやむをえないだろう。

だが、国債をいくらでも増発していいわけではない。だからこそ鳩山政権は大局的判断に立って、政権公約の優先順位を洗い直すべきだ。

たとえば高速道路の無料化とガソリン税などの暫定税率の廃止は温室効果ガスを25%削減するという新政権の目標と矛盾する。暫定税率廃止では税収が1.7兆円も減る。これらはいったん白紙に戻したらどうか。

そのためには、多くの政権公約の実現に向けた4年間の工程表も改訂する必要がある。同時に、将来の環境税導入や消費増税など中長期をにらんだ税財政改革の方針も示してほしい。

政治主導の本領発揮を、そうしたところでも見たい。

毎日新聞 2009年10月21日

母子加算復活 この予算を生かすため

生活保護の母子加算の復活がようやく決まった。選挙前から民主党が主張しマニフェストにも明記しておきながら、10年度予算の概算要求では必要額を見積もらない事項要求に位置づけられ、実施を危ぶむ声もあった。95兆円にまでふくれ上がった概算要求を盾に財務省や行政刷新会議から厳しい査定を受けていた長妻昭厚生労働相が、鳩山由紀夫首相と直談判してやっと復活の確約を取り付けたのだ。

自民党の小泉政権時代に社会保障費の自然増を毎年2200億円削減する方針が打ち出され、生活保護の母子加算は老齢加算とともに廃止された。現在、各地の裁判所で生活保護を受給している人々が原告となって取り消しを求めた訴訟が提起されている。格差や貧困対策、子育て支援を前面に掲げて政権奪取した民主党にとっても母子加算復活はシンボル的な公約である。母子加算を廃止したまま、子ども手当は所得制限を設けずに金持ち世帯にも出すというのでは筋が通らないだろう。

ただ、母子加算を復活させるだけでは済まないところに問題の深刻さがある。まず、生活保護以下の収入しかないのに、持ち家があるなどの資産要件が壁となって生活保護を受けられない人が相当数いることである。実際に受給できているのは貧困世帯の2割にとどまっているとも言われている。母子加算廃止の理由にされたのも、加算によって一般の母子世帯よりも収入が多くなってしまうということだった。低所得の母子世帯、父子世帯対策を総合的に進めなければ、生活保護受給世帯との逆転現象は解決されないだろう。

次に、現金給付だけでは現在の貧困は容易に解決できないことである。いくら就労相談窓口や職業訓練のメニューを用意しても、そこにたどり着くには心身や生活を立て直すためのきめ細かい支援が必要だ。

全国平均の約4倍という21人に1人の生活保護受給者がいる北海道釧路市は、市生活福祉事務所とNPOや介護事業所が協力して支援に当たっている。母子家庭の母親を「高齢者世帯のご意見伺い」やパソコンなどの資格が取れる「母親教室」、病院や障害者施設での作業補助に誘い出し、孤立から脱して社会の中での「役割」を体験することで成果を上げているという。母子家庭の子の学習支援も地域ぐるみで行っている。

「コンクリートから人へ」と予算の流れを変えるだけでなく、現場の自発的な活動を刺激し支援する施策が必要ではないか。予算が生きるかどうかは現場に密着した人々の創意工夫にかかっている。民主党の改革が実を結ぶためには自治体や民間との連動が不可欠だと思う。

毎日新聞 2009年10月17日

95兆円予算要求 ムダ遣い根絶の戦略を

来年度予算は、政権交代の結果、国やくらしがどう変わったか(あるいは変わらなかったか)を国民が最初に実感する予算になる。

その出発点となる各省庁の概算要求が出そろった。総額は95兆円超と過去最大の規模に膨らんだ。

心配が現実になった格好だ。

子ども手当や公立高校の実質無償化など民主党が公約した政策の費用を盛り込むため、増額が懸念されていた。鳩山由紀夫首相が政権公約関連以外の歳出について、今年度当初予算以下に抑えるよう指示していたが、「無駄を削れ」「不要不急は後回し」の号令だけで歳出を削り込むことにはやはり無理があった。鳩山政権による初の予算にどんな特色を持たせるのか、何を基準に政策の優先順位を決めるのか、明確な基本方針や具体的な目標が示されなかったからである。

もちろん、査定作業はこれからだ。行政刷新会議の腕の見せどころといってよい。ところが政権の大きな方針作りをする場であるはずの国家戦略局(室)がまだ機能していない。何よりそこが気になる。

概算要求段階で歳出が膨らんだ分、削り込み作業は難航が予想される。早急に戦略室の体制を固めながら、わかりやすい指針を作ることである。大きな方針、戦略を詰めずに無駄の削減を頑張ろうとしても、結局、財務省頼みの査定になりかねない。政権が掲げる「政治主導」は予算1号から頓挫してしまう。

人気取りの歳出や減税を先行させ、痛みを伴う改革を先送りするようなことにならないよう、責任ある予算編成を行ってもらいたい。

次に気になるのは、早くも赤字国債の増発論が浮上していることだ。赤字国債は次の世代にツケを回すものである。鳩山首相はこれまで赤字国債を増やさないと述べてきたが、税収の落ち込みを理由に増発の可能性に言及した。その後、増発に世論の反対が強いなら公約した政策を見送ることもあり得ると修正した。

しかし、赤字国債か公約の見直しかという議論ではないはずだ。衆院選中から財源の不安は再三指摘されていたが、民主党は「予算の組み替えや削減で捻出(ねんしゅつ)できる」と説明してきたではないか。「できませんでした」では済まされない話だ。

民主党の政権公約には、一般会計だけでなく特別会計も合わせ「国の総予算を徹底的に効率化。ムダ遣いを根絶」とある。戦略室を司令塔に特会の見直しを急がねばならない。

予算編成が概算要求段階からこれほど注目されたことがあっただろうか。国がよい方向に動き出したと実感できる予算を国民は期待しているのである。

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