「口蹄疫(こうていえき)」問題に揺れる宮崎県など九州南部の梅雨入りが近い。国や県は、感染して殺処分される家畜の埋却作業を「梅雨入りまでに終えたい」としていたが、感染疑いの家畜が増え続ける一方で埋却地探しは難航し、実現は困難な状況だ。作業関係者や専門家は「雨により埋却がさらに遅れ、危険度も増す」と不安を募らせている。
鹿児島地方気象台によると、九州南部の平年の梅雨入りは5月29日ごろ。宮崎県内では強い雨に見舞われた6月1日は、作業のペースが大幅に落ちた。現地対策本部長の山田正彦農林水産副大臣は1日の記者会見で「梅雨前の感染家畜の全頭処分は、現状では難しい」との認識を示した。
長雨はどんな影響を及ぼすのか。殺処分された家畜は通常、3-4メートル掘った穴に埋めるが、埋却作業をする川南(かわみなみ)町の畜産農家河野宜悦(のりよし)さん(48)は「穴に雨水がたまると汚染物質を広げる可能性もあり、雨量が多い日は作業が止まる。重機も使いづらくなる」と話す。
消毒や防疫への影響を懸念する宮崎大農学部の堀井洋一郎教授(獣医学)は「大雨で消毒用の液が薄まったり、石灰が流れたりする。補充作業の負担は増えるだろう」と指摘する。
感染家畜の埋却後は、ワクチン接種後の家畜の殺処分も必要になる。西都市の橋田和実市長は「(埋却は)1日500頭が限界だが、ワクチン接種の約1万8千頭はまだ手付かず。梅雨どころか、台風が到来すれば作業は8月まで長引くかもしれない」と心配している。
=2010/06/03付 西日本新聞朝刊=