2004年09月
9日の海老沢会長の参考人招致を前に、週刊誌では「NHKバッシング」が花盛りだが、光ファイバーの開放義務をめぐって、「NTTバッシング」も始まったようだ。その代表格が、町田徹『巨大独占・NTTの宿罪』である。
著者は、日経の記者だったころにも「NTT完全分割論」をとなえて、竹中平蔵氏のナンセンスなIT政策の応援団だった。「ドミナント規制は世界の常識だ」などという嘘を書き散らすので、私が批判したらGLOCOMにやってきて「名誉毀損で訴える!」と叫んだ。
しかし、ちゃんと話すと事情はわかっていて、「ドコモの公式サイトが独占の原因だから、それをつぶすために総務省はドミナント規制を持ち出している。まあ別件逮捕みたいなもんですよ」という。「それは、あなたの記事の趣旨とまったく違うじゃないか」と私がいうと、「公式サイトなんてわかりにくくて、産業新聞ぐらいにしかならない。やっぱり料金のようなわかりやすい問題でたたかないと・・・」というのであきれた。
この本の大部分も、そういうセンセーショナルなNTTバッシングだが、さすがに新聞記者でなければ聞けない当事者の話があって、ルポとしてはよく書けている。2次情報の切り貼りで「孫正義バッシング」をやっている某ルポライターの本などより、はるかに読む価値がある。しかし結論に、また「東西会社の完全分離」が出てくるのにはうんざりだ。インターネット時代に、市内電話網を長距離から切り離すことに何の意味があるのか。
取材力のある記者だから、あとはもうちょっと通信政策の基本を勉強してほしいものだ。参考文献としては、私の論文をおすすめする(これは学会賞をもらうことになった)。
著者は、日経の記者だったころにも「NTT完全分割論」をとなえて、竹中平蔵氏のナンセンスなIT政策の応援団だった。「ドミナント規制は世界の常識だ」などという嘘を書き散らすので、私が批判したらGLOCOMにやってきて「名誉毀損で訴える!」と叫んだ。
しかし、ちゃんと話すと事情はわかっていて、「ドコモの公式サイトが独占の原因だから、それをつぶすために総務省はドミナント規制を持ち出している。まあ別件逮捕みたいなもんですよ」という。「それは、あなたの記事の趣旨とまったく違うじゃないか」と私がいうと、「公式サイトなんてわかりにくくて、産業新聞ぐらいにしかならない。やっぱり料金のようなわかりやすい問題でたたかないと・・・」というのであきれた。
この本の大部分も、そういうセンセーショナルなNTTバッシングだが、さすがに新聞記者でなければ聞けない当事者の話があって、ルポとしてはよく書けている。2次情報の切り貼りで「孫正義バッシング」をやっている某ルポライターの本などより、はるかに読む価値がある。しかし結論に、また「東西会社の完全分離」が出てくるのにはうんざりだ。インターネット時代に、市内電話網を長距離から切り離すことに何の意味があるのか。
取材力のある記者だから、あとはもうちょっと通信政策の基本を勉強してほしいものだ。参考文献としては、私の論文をおすすめする(これは学会賞をもらうことになった)。
私は、月産わずか4万台という超少数派になったPHSのユーザーである。ふだんはちゃんとつながるのだが、私の自宅(自由が丘)ではどういうわけかよく切れる。どうやら隣にコンクリートの建物があるせいらしい。
PHSユーザーは、中国では5000万人を超え、携帯電話をおびやかしているというのに、日本で不振なのは、10mWという低出力に制限したためだ。こういう規制を緩和して、携帯なみのエリアで使えるようにすれば、復活するはずだ。最近、DDIポケットをカーライル・グループが買収したから、外圧を利用して規制緩和を実現してほしいものだ。
PHSユーザーは、中国では5000万人を超え、携帯電話をおびやかしているというのに、日本で不振なのは、10mWという低出力に制限したためだ。こういう規制を緩和して、携帯なみのエリアで使えるようにすれば、復活するはずだ。最近、DDIポケットをカーライル・グループが買収したから、外圧を利用して規制緩和を実現してほしいものだ。
『モジュール化』がベストセラーになって以来、「アーキテクチャ」についての議論が盛んになっている。その代表は、藤本隆宏氏の「すり合わせ」と「組み合わせ」だ(『日本のもの造り哲学』日経新聞社)。
トヨタに代表される日本の自動車メーカーは日本人得意の「すり合わせ」型産業で、コンピュータは日本人の苦手な「組み合わせ」型だ、という彼の話はわかりやすいが、なぜアーキテクチャが二つにわかれるのか、また二つしかないのか、あるいは日本人がすり合わせに強く組み合わせに弱いのはなぜか、といった理論的な根拠がはっきりしない。
こういう図式は「つまみ食い」されやすい。経産省の「新産業創造戦略」でも、「日本はすり合わせの比較優位を生かして」という類の話がよく出てくるが、情報産業に関するかぎり、すり合わせ型は「すきま産業」でしかありえない。特に中国がモジュール型で日本を急追しているとき、みずから土俵をせばめるような「戦略」は有害である。チャンドラーの言葉をもじっていえば、アーキテクチャは戦略に従うのであって、その逆ではない。
私の博士論文(第3章)では、こうしたアーキテクチャの違いがなぜ生じるのかを理論的に説明することを試みた。うまく行っているとはいえないが、この問題を「国民性」や「文化」に解消せず内生的に説明することは、政策的にも重要なテーマだろう。
トヨタに代表される日本の自動車メーカーは日本人得意の「すり合わせ」型産業で、コンピュータは日本人の苦手な「組み合わせ」型だ、という彼の話はわかりやすいが、なぜアーキテクチャが二つにわかれるのか、また二つしかないのか、あるいは日本人がすり合わせに強く組み合わせに弱いのはなぜか、といった理論的な根拠がはっきりしない。
こういう図式は「つまみ食い」されやすい。経産省の「新産業創造戦略」でも、「日本はすり合わせの比較優位を生かして」という類の話がよく出てくるが、情報産業に関するかぎり、すり合わせ型は「すきま産業」でしかありえない。特に中国がモジュール型で日本を急追しているとき、みずから土俵をせばめるような「戦略」は有害である。チャンドラーの言葉をもじっていえば、アーキテクチャは戦略に従うのであって、その逆ではない。
私の博士論文(第3章)では、こうしたアーキテクチャの違いがなぜ生じるのかを理論的に説明することを試みた。うまく行っているとはいえないが、この問題を「国民性」や「文化」に解消せず内生的に説明することは、政策的にも重要なテーマだろう。