牧太郎の大きな声では言えないが…

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牧太郎の大きな声では言えないが…:無名庵川柳の「教え」

 地検が「不起訴」にしても、検察審査会が「起訴相当」としても、地検が再び「不起訴」と決めても……万が一、国会で小沢一郎さんがどう上手に言い訳をしようと……多くの日本人は「政治とカネ」に関しては「もうだまされないぞ!」と思っている。

 例えば(若干、過激な文句だが)昨今、永田町かいわいで歌われる童謡「黄金虫(こがねむし)」の替え歌。

 小沢の一ちゃん金持ちだ

 金蔵建てた蔵建てた

 ゼネコン脅してぼろもうけ

 ゼネコン脅してぼろもうけ

 これほどストレートに金権政治を批判した替え歌は珍しい。「コンクリートから人へ」の民主党のリーダーが実はゼネコンから多額の献金を受けている。この矛盾をズバッと突いて……新聞、テレビよりも痛烈だ。

 これには民主党関係者は怒り心頭。「名誉棄損で捕まえろ!」と色めき立ったが、誰の作詞なのか? 皆目分からないから手の打ちようもない。

 作者不明は(良い意味でも、悪い意味でも)「言論の自由」を確保する“武器”になっている。

 川柳の創始者・柄井川柳は江戸時代中期、連歌・俳諧の優劣を付ける点者だった。宝暦7年8月25日(1757年10月7日)、自らを「無名庵川柳」と号し、大々的な句会を開き、総句1万句を超える偉業を達成した。

 同じ五七五だが、俳句とは違って季語や切れ字の制限もない川柳はこのころから大流行した。

 今ではサラリーマン川柳のブーム。今回で23回目。2万9215句の応募から主催者の第一生命が100句を選んだ。「仕分け人 妻に比べりゃ まだ甘い」「『先を読め!』 言った先輩 リストラに」

 厳しい世相が反映されている。

 サラリーマン川柳がブームになった秘密は初代川柳期の無名性に似た作風が大衆の共感を呼んでいるからだろう。ブラックユーモアもある。

 で、最近、ネットで見つけた傑作は……「秘書は城 秘書は石垣 秘書は堀」。

 小沢さんも、鳩山由紀夫さんも「秘書」が捕まり、「秘書」に助けられている。

 さて「無名庵」を名乗った柄井川柳の辞世の句は「木枯らしや 跡で芽をふけ 川柳」。

 川柳という「無名の自己主張」は300年近くたっても、コトの本質は見事にとらえている。(専門編集委員)

毎日新聞 2010年6月1日 東京夕刊

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