最後のあいさつを終え、一礼する鳩山由紀夫首相。左端は民主党の小沢一郎幹事長=2日午前10時22分、国会内、川村直子撮影
首相官邸に入る鳩山由紀夫首相=2日午前8時44分、首相官邸、川村直子撮影
鳩山由紀夫首相と会談するため幹事長室を出る民主党の小沢一郎幹事長=1日午後6時1分、国会内、河合博司撮影
鳩山由紀夫首相は2日午前に開かれた民主党の両院議員総会で辞任を表明した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を巡り、社民党が連立政権を離脱。7月の参院選での選挙協力に亀裂が入り、参院民主党を中心に「このままでは参院選が戦えない」といった辞任要求が噴出。内閣支持率も10%台に落ち込み、首相はこれ以上の政権運営は不可能だと判断した。同時に、民主党の小沢一郎幹事長にも辞任を促し、了承を得たことも明らかにした。
鳩山首相は、公開で行われた両院議員総会の中で、「引かせていただきたい」と表明。辞任の理由として、普天間移設問題を挙げ「普天間問題では、(移設先に決めた)沖縄県や鹿児島県・徳之島のみなさんにご迷惑をかけた。社民党にも連立政権離脱という厳しい思いをさせたことを残念に思う」とも述べた。また、自らの政治資金管理団体の政治とカネの問題を挙げ、「議員のみなさんには迷惑をかけた。クリーンな民主党を作り上げていこうではありませんか」と述べ、政治とカネの問題も辞任の背景にあったことを明らかにした。
鳩山首相は1日夕、国会内で小沢幹事長、輿石東参院議員会長と会談した。輿石氏は進退について首相の決断を促す一方、首相は続投の意思を伝えたとみられていた。小沢氏は会談後、記者団に「明日(2日)以降、継続して協議するということで別れた。協議の結果を受け、必ず記者会見という形でみなさんにご説明する」とのコメントを出していた。
だが、7月の参院選で改選を迎える議員を中心に、首相の退陣を求める声は収まらず、首相は1日夜から2日午前にかけて周辺と協議した結果、参院選での惨敗を避けるためには退陣もやむを得ないと決断したとみられる。
昨年9月の政権交代を経て発足した鳩山内閣は、8カ月でその幕を閉じる。民主党はただちに後継首相を選ぶ代表選挙の準備に入り、早ければ、週内にも両院議員総会を開いて新代表を選ぶ。代表選には、菅直人副総理兼財務相らの立候補が浮上している。鳩山内閣は新代表が決まり次第、総辞職し、衆参両院の首相指名選挙を経て新首相が選ばれる。代表任期の途中での辞任になるため、新代表の任期は、鳩山氏の任期満了である今年9月までになる。
普天間移設をめぐって、首相は自ら設定した「5月末決着」のため、米国との合意を優先。日米の外務・防衛担当閣僚(2+2)の共同声明に、移設先を沖縄県名護市の辺野古周辺とする方針を明記し、共同声明に基づく政府方針を閣議決定しようとした。
だが、閣僚だった社民党の福島瑞穂党首が反発して署名を拒否。首相が福島氏を罷免したため、社民党は連立離脱を決定し、選挙協力に亀裂が入り、参院の民主党議員を中心に首相への不満が噴出していた。
民主党は新首相のもとで、今国会での最重要法案と位置づける労働者派遣法改正案や郵政改革関連法案の成立に全力を挙げる。また、新内閣のもとで内閣支持率を回復させ、7月の参院選に向け、態勢を早急に立て直したい考えだ。
だが、民主党は野党時代、自民党政権で行われた短期間での首相の交代を厳しく批判してきただけに、新内閣が有権者の理解を得られるかは不透明だ。また、参院で過半数を大きく割り込んだ場合、新しい連立政権の枠組みを作ることができるかどうかも問われる。連立政権で与党が過半数を確保できなければ、「ねじれ国会」となり、厳しい国会運営が予想される。