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きょうの社説 2010年6月2日
◎首相退陣要求 期待を失望に変えた責任重い
鳩山由紀夫首相への辞任圧力が急速に強まっている。各種世論調査で、内閣支持率が危
険水域といわれる20%を割り込み、政党支持率や次期参院選での投票先でも自民党に差をつけられた。改選を迎える参院議員らから「このままでは参院選を戦えない」との悲鳴が上がるのも当然だ。普天間移設問題の迷走などで、国民の支持を失った責任の多くは首相自身にある。「最 低でも県外」「3月末決着」「5月末決着」などの公約を提示しながら、どれも実現できなかった。その場しのぎとしか思えない言葉の軽さ、指導力の乏しさは首相失格のらく印を押されても仕方あるまい。 だが、首相の首をすげ替えただけで、民主党への不信が払しょくされるとは考えにくい 。民意による初の政権交代の期待を失望に変えた責任は、首相にのみあるのではない。例えば「政治とカネ」の問題では、鳩山首相以上に、小沢一郎民主党幹事長の責任が重いのではないか。普天間移設に限らず、あらゆる問題を、選挙優先で決めてしまうかのような党の体質、強行採決をいとわぬ強引な国会運営なども国民の民主党離れを招いた要因である。 首相は小沢幹事長、輿石東参院議員会長との会談で、続投へ意欲を見せたという。首相 の首に鈴を付けられるのは、小沢幹事長しかいないはずだが、首相の進退について、どこまで踏み込んだ発言をしたのだろう。もし辞任を迫り、首相に「小沢さん、一緒に辞めましょう」と切り返されたら、何と答えるつもりだったのか。それとも辞任を強要する気はさらさらなく、「鳩山おろし」を鎮静化させる狙いで会談の場を設けたのか、本音のところが良く分からない。 自民党政権では、安倍、福田、麻生内閣と民意を問わぬ状況下で首のすげ替えが行われ た。民主党はこれを厳しく批判してきたこともあり、閣僚からは「鳩山続投」を支持する声も相次いでいる。 「小鳩体制」が続くのか、終わるのか。おそらく数日中に方向性が出るだろう。ただ、 民主党に責任政党の自覚と覚悟が生まれぬ限り、誰が首相になっても支持率の急回復は難しいのではないか。
◎新幹線行動計画 実行に移し加速させる年
北陸新幹線の開業効果を全県に波及させる行動計画「STEP21」の実行策として、
県は民間の取り組みを後押しする補助制度を新たに打ち出した。全県的な推進組織となる「STEP21県民推進会議」(仮称)は7月にも発足する見通しであり、民間への財政支援は、2014年度の金沢開業へ向け、県民の意識を高め、具体的な行動を促すうえで欠かせぬ措置である。県は昨年、行動計画を策定し、それに合わせて庁内の推進体制を整備してきた。県民推 進会議がスタートする今年は、計画を実行に移し、さまざまな取り組みを加速させる節目の年となる。 民間の知恵や力を結集するためにも、県は行動計画の内容を県民に周知させる必要があ る。県が思い切った施策を打ち出すことで、民間の奮起を促す視点も大事である。新幹線の行動計画は地域の成長戦略ともいえ、官民が一丸となって実現を目指したい。 「STEP21」では、重点プロジェクトとして「おもてなしの向上」「食文化の魅力 向上」「歴史・景観を生かした地域づくり」の3テーマが定められた。県はそれぞれの趣旨に沿った事業を募り、補助金で支援する。事業が決まれば、できるものから迅速に実行に移す必要がある。民間からも積極的にアイデアを出したい。 今年は東北新幹線八戸−新青森間、来年春には九州新幹線鹿児島ルートが開業し、これ らの先行例を通して金沢開業後の姿もよりイメージしやすくなる。開業効果をどれだけ長く持続できるかは、この4年間の取り組みにかかっている。すべての施策が新幹線時代に通じると言ってよいだろう。10月には60歳以上の約1万人が集う「ねんりんピック」が県内各地で行われる。そうした大規模イベントも、もてなしの力を磨き、食文化を発信する絶好の機会となる。 新潟県が独自の主張をして開業遅れが懸念される場面が続いてきたが、沿線県の足並み の乱れは、県民の機運の盛り上がりに水を差しかねない。広域連携を含めた今後の自治体間の調整は、県に課せられた極めて重要な役割である。
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