昨年8月の衆院選に北海道5区から出馬して当選した民主党の小林千代美議員陣営の選挙違反事件で、公職選挙法違反(買収約束、事前運動)の罪に問われた連合北海道札幌地区連合会の元会長・山本廣和被告(61)の控訴審判決公判が、1日午後1時30分から札幌高裁(小川育央裁判長)で開かれた。
小川裁判長は、札幌地裁が2月12日に山本被告に言い渡した「懲役2年、執行猶予5年」の1審判決を支持し、山本被告の控訴を棄却した。
山本被告は、昨年5月下旬から衆院選公示後の8月下旬までの期間、運動員35人に時給700~900円の報酬を支払うことを約束し、電話で有権者に小林氏の投票を依頼させたとして起訴された。
1審で山本被告は、公示前の運動員に対する依頼を「選挙運動に当たらない」として起訴事実の一部を否認。弁護人は最終弁論で「罰金刑が相当」と主張していたが、札幌地裁の辻川靖夫裁判長は「公示前の運動も公職選挙法違反にあたる」と認定し、有罪判決を言い渡した。
山本被告は、1日の公判に黒のスーツ姿で出廷。小川裁判長は「本件控訴を棄却する」とした上で、理由を次のように述べた。
「提出された控訴趣意書では、公示前の電話掛けは小林千代美のパンフレットの送付の可否を確かめるもので、投票を呼び掛ける選挙運動に当たらないため、1審判決は事実誤認と述べられているが、公示前の電話掛けが選挙運動に当たることは明白であり、事実誤認ではない。パンフレットの送付は小林の知名度を上げることに有効な手段であり、選挙活動に当たると認定したことに何ら問題はない。本件は計35人に金銭供与をすることを約束し、有権者に投票を呼び掛けることを依頼した組織的犯行であり、支払われる予定だった報酬総額は261万円で規模も大きく悪質、被告が候補者を当選させるために行った手段を選ばない犯行は、民主主義の根幹とも言える国政選挙の適正な実施を侵害したという1審判決の事実認定・評価に誤りはなく、量刑も被告人の酌むべき事情を考慮してあり適切である。以上のことから1審判決が不当であるとは言えず、控訴には理由がない」
札幌地検は、小林陣営の選挙対策委員長代行を務めた山本被告が連座制の対象となる「組織的選挙運動管理者」に該当すると判断。山本被告の刑が確定すれば、札幌高検が小林議員の当選無効を求める行政訴訟を起こす見通しだ。
小林陣営を巡っては、北海道教職員組合(北教組)による違法献金事件で、陣営の会計担当者だった木村美智留被告(46)と、選挙資金を提供した北教組委員長代理の長田秀樹被告(50)が政治資金規正法違反の罪に問われており、木村被告は9日、北教祖と長田被告は14日に札幌地裁で判決が言い渡される。(文、写真・糸田 1日午後3時25分更新)