人権・人道

「第3回児童の性的搾取に反対する世界会議」の概要と評価

平成20年12月

(写真)


1. 2008年11月25日-28日、ブラジル・リオデジャネイロにて、ブラジル政府、UNICEF(国連児童基金)、国際ECPAT、児童の権利条約NGOグループの共催により、第3回児童の性的搾取に反対する世界会議が開催されました。

 ルーラ・ブラジル大統領夫妻ならびに第1回世界会議のホスト国であるスウェーデンのシルヴィア王妃ご臨席の下に開催された開会式では、第2回世界会議の主催国である日本政府を代表して、西村康稔外務大臣政務官ステートメントを行い、我が国が児童の性的搾取の問題に対し国際社会と共に積極的に取り組む決意を示しました。

 本会議には、55名の閣僚級(大臣及び副大臣)を含む約140カ国からの代表団及び国際機関、NGO等170カ国から登録総計3145人の参加者が出席し、これまでの会議では最大の参加者数となりました。また、ブラジル国内外から300人の児童・若者代表が参加しました。

2. 概要

(1)25日に行われた開会式では、冒頭、バヌーシ・ブラジル大統領府人権特別問題庁長官より歓迎の挨拶と本会議の意義についてのスピーチがあり、続いて、インドネシアとセネガルの児童・若者の代表から、児童の視点を常に意識した政策への要望が発言されました。また、各共催団体の代表者は、具体的な行動への力強いコミットメントを呼びかけました。第1回、第2回会議の主催者として、シルヴィア・スウェーデン王妃は1996年以降の国際社会における意識の向上と、本会議の特徴である政府、国際機関、NGOのパートナーシップの重要性について述べ、続いて西村外務大臣政務官より、我が国の取組と国際社会の協力の必要性につき言及し、会議参加者全員の取組への決意を確認したいとのステートメントを行いました。最後に、ルーラ・ブラジル大統領は、児童ポルノ犯罪の法定刑を引き上げる国内関連法の改正を承認し、新たに、児童ポルノの取得、保持及び販売を目的とする広報を犯罪とする法律に署名した上で、我々が取り組もうとしている問題は世界共通であり、その根底には貧困をはじめとする社会が抱える問題が存在している、欺瞞を根絶し、この問題に対し共に取り組もうではないかとの力強い呼びかけを行いました。

(2)本会議では、「児童の権利保障と性的搾取からの児童の保護-組織的アプローチに向けて-」をオープニングテーマに掲げ、全体会合では「児童の商業的性的搾取の新たな形態」、「法的枠組み・説明責任・法の執行」、「セクター間の包括的政策」、「企業の社会的責任」、「国際協力の戦略と目標」の5つのテーマのもと、それぞれのテーマ毎に、専門家によるプレゼンテーションと児童代表によるスピーチに続き、各国の取組に関するステートメントを行うハイレベル政府間対話が行われました。また、ハイレベル政府間対話と併行し、各テーマに基づいた20のワークショップが開催されました。

 我が国は「児童の商業的性的搾取の新たな形態」についてステートメントを行い、前回2001年の横浜会議以降の我が国の取組を紹介するとともに、IT技術の発達等に伴う新たな課題について言及しました。また、「国際協力の戦略と目標」において、ハイレベル政府間対話のモデレーターを務め、会議の議事進行に積極的な役割を果たしました。

(3)閉会式では、カルメン・オリベイラ・ブラジル大統領府人権特別庁児童の権利促進局長がテーマ毎に行われたプレゼンテーションの総括を行い、インターネットの普及によって児童の性的搾取問題が新たな局面を迎えていること、また、その解決のためには民間セクターを含めた社会全体の協力が不可欠であることを述べました。また、本会議の全体報告者であるジープ・ドエッキ博士より、児童の性的搾取根絶に向けたロードマップとしての成果文書案が紹介され、前文、進展のレビューと教訓が読み上げられた後、「行動計画」の章については、閉会式後30日間、各国・各団体からのコメントを聴取の上、成果文書作成委員会にて調整を続行する旨説明がありました。

 最後にバルバドスとブラジルの児童・若者代表がステートメントを行い、「私たち子どもは性的搾取の対象から、自ら行動する者になる。私たちの声を聞いてほしい。大人たちに訴えたい。私たちの将来を約束するのであれば、現在が保障されなければならないのだと。助けてほしい。私たち子どもは今を生きているのだから。」と力強く訴えかけました。

3. 第3回世界会議の評価

(1)2001年に我が国が主催した横浜会議から7年が経った今次世界会議においても、引き続き世界中から多数の参加者を得て、児童の性的搾取問題が一刻の猶予も許さない重大な人権侵害であるとの認識を共有し、すべての社会セクターが協力し責任を持って取り組むべきとの決意を新たにしました。

(2)世界会議に先立ち、東アジア・太平洋、南西アジア、アフリカ、欧州、ラテンアメリカ、北米等で準備会合が開催され、より多くの参加者を得て、個々の地域に特有の問題について事前に協議し、状況を認識した上で世界会議へ反映することができました。

(3)各国政府代表によるステートメント及び児童の性的搾取問題に精通する有識者、国会議員、NGO、人権条約体委員、法曹界、法執行当局関係者、国連機関職員等によって、当該問題に関する現状認識や克服すべき障害、今後の課題等につき精度の高いプレゼンテーションが多数行われました。

(4)世界96カ国より約300人の児童・若者の代表が参加し、当事者である子どもの視点から性的搾取の問題を真剣に議論し、各パネルにおいて積極的かつ有益な発言を行いました。

(5)インターネットの普及やIT技術の発展により、児童の性的搾取問題がより急速化・匿名化しており、グローバリゼーションの影響に伴い、先進国・途上国の区別なく急激に拡散を続けているという危機感を共有することにより、国際社会全体が一致団結し、具体的なアクションを促進する重要性を認識しました。

(6)今次会合で採択が確認された(2009年4月最終案確定)成果文書「児童の性的搾取を防止・根絶するためのリオデジャネイロ宣言および行動への呼びかけ」(英文)(PDF)PDFは、法的拘束力はないものの、第1回世界会議「ストックホルム宣言」及び第2回世界会議「横浜グローバルコミットメント2001」をふまえ、児童の性的搾取問題の根絶に向けた今後の具体的な目標を設定しており、各国政府、国際機関、NGO等すべての関係者が当該問題に取り組む際の指針となる国際文書となりうるものです。

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