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施設育ちにとっての「過去の探索」を今一度考えてみる

養護施設を出てからの問題

 少しばかり言い訳を。

  わたしは自分の過去を探す為の努力を現実生活で怠ったわけでなく、数年前、極度の無愛着人間である事が分かり、必然的に自分の育てられ方を考えざるを得なくなった。

 「親の顔が見てみたい」と姑が言いかけてやめた事もその動機だ。彼女は本来ならわたしを育てた親に会いたいのに、その親がいないのだから彼女は姑としても非常に困っていたそうだ。(夫・談)

 その際、初めにリアル世界で出身施設の職員に自ら連絡を取り「自分は昔からこうであったのか」「無愛着の為、周囲の人から迷惑がられているが、昔から自分はそうであったか?」という趣旨の質問を何人かの当時の職員にぶつけてみた。

 それまでは施設にいく事が気が進まず、職員と会うなんて尚更考えもつかなかったが、その時期だけは何としても過去の自分が、今の自分に繋がっている確信がほしかった。

 しかし答えは得られなかった。というか「真面目で大人しくいい子だった」という、要するに覚えてないという事を示されただけだった。そのほかの具体的な話は一切聞けなかった。
 
 その当時一緒に住んでいた卒園生の元を訪ね、自分の事を聞いてみたが、彼らは「自分の事さえよく分からないのに人の事なんて覚えてませんよ♪」と言われてしまった。自分の事さえ曖昧なのはよく分かる。

 職員は「何人もの子ども達が巣立っていったので、一人一人覚えていない」と言った。確かに養護施設には多くの児童がいる。まして「担当じゃなかった」と言われれば、たとえその時期に顔を合わせていたとしても印象に残っていないのは当然なのだ。わたしはその頃、施設というものがよく分かっていなかったから、こんな場違いな質問をしてしまったのだ。

 結局、複数の職員全てから何の過去のデータも引き出せなかった。唯一の情報である過去の「児童票」「成績表」なども施設を出る時に閲覧できなかったし、成績表は後で取りに行っても笑って相手にされなかった。結果、自分の情報を手に入れる事ができず(※後に成績表は用意すると言われたが、どうしても施設へ足を運べなくなり、手に入れてない)今に至っている。

 家庭と違い、養護施設は個人的な場所じゃないし個人的な関わりを持てない場所。自分だけの為の場所ではない。夫の実家が夫の専用の博物館のようだと衝撃を受けたが、各家庭にはその子の歴史が捨てられずに残っている。(*機能不全家庭じゃない事が前提)

 今回、カウンセラーさんのレスに答えてみたけれど、養護施設出身者が自分の育てられた養育環境を考える作業や、過去を探すという意味は、一般の人の、育った環境は覚えているが「観念的な自分探し」をしたいのと違い、本当に過去を探す旅の事を指している。自分の事を語ってくれる親戚縁者・親・兄弟誰一人いない者が、自分の育てられ方を考える事を後ろ向きな姿勢とは思っていない。

 それに、児童養護施設の問題は「過去は過去」と切り捨てられない。今も養護施設の問題は過去にならず、家庭から救われた子が施設でも虐待を受けてしまう。虐待のない施設と言われている施設でも、愛着の問題が普遍的にあり続ける。

 無愛着というのが分かりにくい為、虐待されている人を見てきているカウンセラーから見ると、何を甘えているの?と思うかもしれない、もっと大変な人がもっとがんばっているのよという怒りを持っておられるだろう事も容易に想像できる。

 わたしは、確かに後ろ向き発言をしているように感じられ、不快に思う人もいるかもしれない。しかし、これもわたしに関する少ない情報や思考を発信することで、いくらか似ている思いをしている施設育ちの方や、少し興味がある里親さんなどに向けて発信できればと思う。
 
 何より、わたしはリアル世界で自分の情報1つ引き出せない現実に疲れを覚えつつ、それでも、思考は止まらないし、養護施設の世界を主観的に書き続ける事や、主観に捉われず、別ブログにある資料など(資料を送って下さる方々へ感謝)を通して現実的な側面からも語っていこうと思う。

 ただ、児童票については思う事があるので後で改めて記事を起こそうと思う。児童票で自分の情報を知りたい施設出身者は情報開示請求ができるとの事なので、自分の事を知る権利を大いに使えるように、まずはこの請求をしてみようかと思案中だ。
 
・・・この話は又、いづれ。

 この親記事がカウンセラーさんへの答えになり切れるかは判らないけれど、養護施設全部育ちの心理は少し違う角度から見る必要もあると思いますので、書かせていただきました。

|  養護施設を出てからの問題 | 08時50分 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

sachiko.t さん、

 カウンセラーという肩書きを使って書くのであれば、クライアントの情報を漏らさないという「守秘義務規定」はあると思うのよ。

↓(参考)学校カウンセラー倫理規定
http://www.jascg.org/counselor_rinri_kitei.pdf

あたしなりに整理したことを書きました。
参考になさってくださると嬉しいですわ。
http://prayermaria.blog74.fc2.com/blog-entry-88.html

 本当は、あなたのブログにトラバしてもよかったけど、そこまで関わるつもりもないし、ここでのお返事のみとさせていただきますわ。

| Maria | 2007/05/13 23:50 | URL | ≫ EDIT

言外に感じてしまうもの

 Sachikoさん、親記事を書いてみました、お返事をどうもありがとうございます。養護施設のイメージが「保護先」であるのだから、家庭で不幸に遭い続けるよりは施設で保護されてほしいと思う事自体、責められるべきものではないと思っています。

 ただ、養護施設という器の質、そこで働く職員の資質、そこへ送致・措置される子ども達の必要なケアや矯正に応じて細分化されていない措置後のケアプラン・更正プランなど、問題が山積みである事を、発信しています。(#それどころか本来なら違う対応で望まねばならない子ども達を乱暴に一箇所に収容して、それで保護しているつもりでいるとわたしは捉えている)

 sachikoさんが、上から言おうがどうであろうが、それを取捨選択するのは大人である自分です。その情報に応じて受け取れますので安心して下さい。

 ただ、言外に感じてしまうものが、過去にあった事と似ている時、どうしても反応せざるを得ません。反応したという事は、あなたの言葉には「それそのものは言っていないながらも」受け手にとっては、似たパターンを感じさせるものがあったという事です。

 わたしは誤解をされそうなときはなるべく()で括ったり、#シャープで説明を加えたりしているつもりです。家庭と一言で言いきらず、なるべく機能不全家庭という追加の説明をしたり・・・。
 
 というように、なるべく誤解について、神経質になる必要はないと思いますが繊細な話が多いので、気付いたら配慮していただけたらと思います。どうもありがとうございました。

| レイ | 2007/05/13 19:17 | URL | ≫ EDIT

こんにちは。

 前回、私がコメントしたことで、皆さんのお気持ちを害してしまったことが、ずっと気になっていました。
 言葉というものは、本当に関係がつながっていないとなかなかうまく伝わらないことを、今回とても考えるきっかけになりました。本当に言葉が足らなくて、ごめんなさい。。。
 私は皆さんをまだましだとか、もっと辛い人もいるから我慢しろとか言うつもりは全くなかったんです。むしろその逆で、幼少期の時から辛い環境にいるのに、こんなにいろいろなことを勉強されて、おまけにその連鎖を防ぐためにどうすればいいのか真剣に考えている姿勢に、とてもすごいと感動というか、自分の無知だったこともはずかしいというか、言葉にできなくなるくらいだったのですが、コメントを置かずにはいられなくなったんです。
 でも、元々の信頼関係もないままに、いろいろなことを上から(私にはそのつもりはなくてもそうとられますよね)いわれれば誰でも気持ちの良いものではないと思ったんです。
 でも、今回の記事で、私は本当に施設というものを間違って認識していたことに気がつきました。
 虐待やネグレクトなどで、命を落としてしまう子供が後を絶たない中で、もっと施設にはいることで命が助かっていたならと思っていたんです。
 もちろん、その気持ちは今も同じですが、それだけで解決ではないですよね。
 私は施設に見学や勉強をしに行ったことはありません。でも、何人か施設出身の人や親から捨てられてしまった人を見ていたので、以前のコメントのように悪いことばかりではないと思っていたんです。
 それに、施設で働いている人ともお話をしたことがあったんですが、愛情を持って接しているように受け止めていたので本当に残念です。
 子供を育てるということは、本当に大変な作業だと思います。
 大勢の子供を、少ない職員が面倒を見るということに限りはあると思いますし、現在虐待だけでなく、震災や事故などで親を亡くしてしまった子供も多くいますし、予算の関係もあるのかもしれないですが、もっと愛情を持って育っていける施設が必要なのだと感じました。
 それには、施設の人の人数や、数ももっと必要なのだと思います。
 そういう意味では、介護施設も同じで、人が人を見るというのは、本当に大変だけど大切なお仕事だと実感してほしいと思います。

 本当にいろいろなことが、勉強不足でごめんなさい。

| sachiko.t | 2007/05/13 15:03 | URL |














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