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養護施設出身者の読むメンタル本がない

コラム

 前回紹介した心理本のレビューに驚きが覚めやらない。常日頃、養護施設出身者と家庭で育てられた人のメンタルの傾向は違うと思ってたから、その気持ちを具現化したようなレビューを見ると、ますます児童養護施設出身者としての、生き難さに関する本はないと思い知らされる。

 もし、自分がカウンセリングを受けたら、わたしという心理を持った相手に対して精神科医や心理学者やカウンセラーはどう対処するんだろう、どういう、整理&認知&行動療法の方法を模索できるだろうか。

 「見捨てられる不安・恐怖」一つとっても、わたしには理解しがたい不安感だ。捨てられ切った(その自覚すらなかったが)その先の施設という現実を生きてきたという心理をもっている自分にとっては全く違うカテゴリだと感じた。

 紹介しといてなんだけど本のレビューを読む限り期待できる情報はなさそうだ。

 わたしは以前、他の精神科医の本を読んでがっかりした事もあった。題名はすっかり忘れたけれど、新書サイズの本だった。

 精神科医である筆者は認知について体験を書いていた。

 彼は1人の不良少年とつきあい、悪い事をくり返して鑑別所に送られる彼が「幼い頃、父親から『お前みたいな奴は施設へいれちまうぞ』と言われ続けていた事、それから「自分はいつ施設へ入れられるんだろう?と戦々恐々と過ごした事、思春期になってその怒りが爆発した事、自分は親からずっと心を殴られ続けていたという気持ち」を告白する少年と対峙した時の様子が書かれていた。

 筆者である精神科医は

「でも、あなたは実際は捨てられたのではないんですよね」と捨てられなかった認知を促していた。

 確かに捨てられなかったかもしれないが・・・少年はこんな答えで納得しただろうか。さすがにわたしの目にも「捨てられるかもしれない不安」を親からずっと与え続けられた事は心理的虐待だと思うし、その時期を見捨てられる不安と過ごした少年にとって、捨てられなかった事実などは意味を成さないと思う。そんな事を言い続けた親への怒りがあるから思春期に爆発したんだろうし。

 そしてその「捨てられた事実」をもって養護施設に長期入所していた自分は又、何とも苦笑してしまった。この医者は、施設の子を前にするとどんな事を言うのだろうかと。「あなたの親は泣く泣くあなたを施設へ預けたんですよ」と言うのだろうか。
 
 施設育ちの課題はむしろ捨てられた事実を生きてきた事で生じている。家庭や絆や愛着作りの壁などは、現在の精神科の医師やカウンセラーの守備範囲を超えているのではないかと感じている。とはいっても、一度もカウンセリングも精神科も受診した事がないのも事実なので、あまり体験に基づかない主観は語りきれないが、本のラインナップを見る限りは期待できそうにないと思った。

| └ コラム | 09時53分 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑














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