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スポーツ報知大阪版>コラム>菊地陽子 あしたのヨー

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未来の銀河系集団を育てる井岡会長の手腕

2月21日の日本ライトフライ級タイトルマッチで、負傷引き分けで初防衛に成功した井岡ジムの宮崎亮

 若くて生きのいい選手の発言はこうあって欲しいと思う。関西ボクシング界では、井岡ジムの勢いが目覚ましい。元2階級制覇王者・井岡弘樹会長(41)が02年に設立。プロ3戦目でWBC、WBA世界ライトフライ級にランク入りし、年内の世界挑戦を目指すおいっ子の井岡一翔(20)のみならず、同世代の金の卵がごろごろいる。

 2月21日に日本ライトフライ級王座の初防衛に成功した宮崎亮(21)は一翔と並ぶジムのホープの一人。試合結果は負傷ドロー防衛とすっきりしなかったが、試合後のコメントは威勢が良かった。3回、宮崎の「悪い癖」であるバッティングで相手の側頭部の出血がひどくなり、相手の応援団から「また頭だよ」とヤジられた。これに若い宮崎は「うっせえ」とリング上で応酬。スポーツマンとしては褒められた行為ではないが、終わった後に聞くと「(挑戦者が岐阜の選手で)名古屋とか東京の奴らに負けたくないんっす」と口をとがらせた。その浪花節はどこか好ましく、「下位じゃなくて上位ランクの選手を倒して、ちゃんと日本1位を証明したい」というあたりも気持ちがいい。

 宮崎と一翔は名門・興国高の同級生で、ほかにも西日本新人王のバンタム級・橋詰知明、同スーパーバンタム級・上谷雄太、ウエルター級・水本昌寛が同じ88年生まれ。さらに91年生まれで国体王者のスーパーフライ級・石田匠ら10代も充実。興行は若い女性でいつも満員だ。年が近いとライバル意識もあると思うが、一翔と同級の宮崎は「みんなで世界王者になりたい」「僕らはサッカーでいうレアルマドリードみたいな銀河系集団になりたい」とあっけらかん。突き抜けた表現が出てくるのも、井岡ジムならではの気がする。

 井岡会長の普段の「ゆるさ」と、ボクシングに対する「情熱」のギャップが、若い選手を伸び伸び育たせているのかもしれない。普段の会長は、関西人ならご存じ、テレビ番組で見せている通りの天然だ。何を話しているかよく分からないことも多いが、ここ一番の取材ではこちらの期待以上のリップサービスをしてくれる。実際のマッチメーキングは意外と慎重派。一翔には世界王者になるまでアルバイトを続けさせることを決めている。ベルトさえとればお金が稼げることを身をもって体験してきたからだ。飛ぶ鳥を落とす勢いの一翔は叔父と同じくボクシングに関しては「今年中に世界王者」「3階級制覇」とビッグマウスだが、普段はうぬぼれる様子は一切ない。だから同僚も目標にできるのだろう。

 宮崎の試合があった日、一翔の父でジムのプロモーター兼トレーナーの一法さんが「実は一翔は(一番は)フライ級でやりたいんです」とこぼした。ライトフライ級より体がより良い状態でできるからだという。現在同級に君臨するのはあの兄弟だ。現実的にはタイミングがずれるかもしれないが、あり得なくはない対戦。国内最短世界奪取記録(8戦目)の更新を最優先させる一方、一翔と亀田兄弟が同じ土俵に上がった近い将来、会長はどんなマッチメークで真のスターに育て上げるのだろうか。会長自身、2階級制覇した年に辰吉丈一郎にMVPを奪われた苦い経験がある。若き才能たちをどう導いていくのか、井岡会長の手腕に注目していきたい。

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(2010年2月27日12時47分  スポーツ報知)

筆者略歴  菊地 陽子(きくち・ようこ)

02年入社。大阪府出身。文化社会部での宝塚歌劇、運動部でのオリックス担当などを経て、07年12月からボクシング担当。リングサイドでの初取材では、ボクサーの鮮血が顔にかかって卒倒しそうになったが、今ではすっかり拳闘の魅力にハマっている。

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