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人工生命、完成見えた 米研究所、ゲノム合成し人工細菌

2010年5月21日3時2分

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写真:人工ゲノムを持った「人工細菌」の電子顕微鏡写真=サイエンス提供人工ゲノムを持った「人工細菌」の電子顕微鏡写真=サイエンス提供

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 自己増殖をする「人工細菌」を作ることに、米のチームが初めて成功した。DNAをつないで、ゲノム(全遺伝情報)を人工的に作った。生命の設計図であるゲノムが働くことが確認でき、「人工生命」ともいえる成果だ。医薬品づくりなどに役立つ技術と期待される一方で、安全性の確保や悪用防止が課題になる。生命とは何かを問うことにもつながりそうだ。

 作ったのは、人間のゲノム解読に携わったクレイグ・ベンター博士が代表を務める研究所のチーム。遺伝情報にあたる塩基配列が少なく、操作しやすい「マイコプラズマ・マイコイデス」という細菌をモデルにした。

 この細菌のゲノムをまねて、ゲノムを構成するDNAの断片を化学合成した。これを大腸菌などの中で1本につなげて、人工ゲノムを作った。この人工ゲノムを、ゲノムを除いた別種の細菌の細胞膜を器にして、移植した。

 人工ゲノムは14の遺伝子が欠けていたものの、「人工細菌」は、モデルにした細菌と同じたんぱく質を作り、自己増殖を繰り返すことも確認できたという。

 この成果は、21日付の米科学誌サイエンス電子版で発表される。(杉本崇、福島慎吾)

     ◇

 〈ゲノム〉生物のすべての遺伝情報をゲノムという。情報が刻まれている物質がDNAで、複数の化学物質(塩基)が連なってできている。塩基のつながりの中にある特定の部分が、体を構成する様々なたんぱく質を作る遺伝子として働く。

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