養護施設を出てからの問題

　夫の事ばかり書いているうちにソウルメイトへの気遣いを忘れていた。Mariaにも親記事を書かせてしまうほどひどい事をしているとわかった。ただ、何故自分の態度が問題かと考えても考えてもまだ整理できていない、でも「イヤだから変えてほしい」という事へは対処すべきだと思う。不快と感じている事に対してはやめようと思う。

　その他大勢のうちの１人　というのが自分の人付き合いの根底にあるような気がする。いくら施設で集団から距離を置いていたといっても、施設では本当の意味で１人になれない。その影響かはわからないが、自分は固定された１人の人と親密な交流をする事が大変苦手だと気付いた。その交流を重く感じたり、出来る限り時間を短く切ってしまう癖がある。自分にはリミッターがあり、そこを超えられなかったのかもしれない。

　その他大勢のうちの１人という無責任な関わりならば、気兼ねなく付き合えるけれど、固定された人とある期間交流を続けているうちにタイムリミットになってしまい、何故まだこの同じ人と交流しているのかが単純に分からなくなるようだ。

　わたしは施設で育ちきった大人としての課題も突きつけられている。家庭生活を通して夫のような愛着があるのが当たり前と言い切る人がいるのを知った。知ったけれど、自分がその愛着を身につけられるかというと簡単にはいかない。夫も「普通にあるものをどうして必要かいちいち説明する事はできない」とまで言う。

　誰かから「側にいてほしい」「側にいる」と言われても、それも何だか実感が湧かない。そういう事を自分に言う人間が目の前にいるのがピンと来ないのかもしれない。言われた瞬間はそうかもしれないと思うのに、少し時間が経つと又、理解が薄らいでしまう。

　わたしからも人を求めなくてはいけないという単純な筈の行為が何か非常に難しく感じる。今まで禁止事項だった事をやるのは抵抗がある。まじめで問題行動をした事がないのだから、そう感じるのかもしれない。

　Ａ子のように後追いが止まらないような気分を今は知っておけば良かったと思うが、対象者がいなかった。最初は彼女の体験話を聞いて内面で小ばかにしてしまった。『誰も居なくてもわたしはやれているのに何故この子は集団に迷惑を掛けてまで、保母をそんなに求めたんだろう』と少し冷ややかな目で見ていた。ところがその自分が今、人との固定された人間関係が作れなくて、周囲の人に不快感を与えているなんて。

　Ａ子に対するわたしの冷ややかな視線は、施設にあって愛着を作ろうとしていた彼女に批判的であった証拠だし「自らは集団生活に順応・適応していた結果、問題行動を起こさなかった」と暗に彼女に伝えたくて仕方なかったのだと思う。「わたしは誰もいなくとも十分ちゃんとやっているんだから」と何度も思っていた。

　彼女はそんなわたしを信頼できるはずもなく、今は行方も知れない。わたしは施設を批判しながらも施設に適応している自分像から抜けられないという事かもしれない。

　わたしの書くブログ記事が、しばしばバッシングされる事があるのは、「子どもには固定された愛着関係が必要である」と、安定した家庭の必要性を語りながら、一方で、わたし個人の日々の人間関係は「せつな的で、無愛着である実情を放置したままにしており、その事について何ら問題視せずにいる事」が、読む人によっては違和感を生じさせるのではないかと、Mariaは彼女が思うところを言ってくれた。

　わたしは、WolfやMariaと絆を作る事さえ、どこか逸脱行動で問題行動と感じているのかもしれない。「いつも施設の体質を批判している記事を書いている自分がまさか、施設で１人で生き抜いた過去を肯定している」とは信じがたい事だったが、そういう自分像に依存しているという事もまた事実なのだろう。

　まずはそこを認めないといけないのだろうと思った。