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【社説】

年金工程表 不安一掃へ詰めを急げ

2007年7月7日

 政府が年金記録不備を是正する工程表をまとめた。作業をできるだけ前倒しする方針は評価できる。だが、「五千万件の名寄せ」だけでは作業が終わらない。全力で取り組まなければならない。

 工程表によると、社会保険庁のコンピューターオンラインシステムに入力されたまま該当者不明の約五千万件の加入記録について、当初は来年五月までに名寄せを終了するとしていたのを遅くとも来年三月までに前倒しする。

 加入記録が正しいかどうかを加入者・受給者本人に確認してもらうために加入履歴を全員に送付する作業も、当初予定の二〇〇八年九月以降を、同年四月以降に繰り上げる。

 作業のスピードアップ自体は当然である。少しでも早く年金受給権の回復を急ぐ必要があるからだ。

 忘れてならないのは、五千万件の名寄せは年金番号の統合ではなく同一の加入・受給者のものと思われる記録を拾い出す作業にすぎないということだ。通知を受け取り、確認後、申請して初めて統合される。

 しかも工程表によると、名前の濁点・半濁点の有無、生年月日の一日違い程度ならば名寄せできるが、入力された名前や生年月日の間違いがひどいと、名寄せができない。過去の杜撰(ずさん)な作業で記録自体の入力漏れも少なくないといわれている。

 安倍晋三首相が言うように「最後の一人まで年金を支払う」には、社保庁や市町村が保有する紙台帳との照合が欠かせない。だが、どのような方法でいつまでに終了させるかについては見通しが立っていない。

 社保庁改革関連法の成立で、社保庁は二〇一〇年一月に解体され、年金業務は非公務員型の「日本年金機構」に引き継がれる。その際、職員の削減が計画されている。

 工程表の実施状況などのチェックは、総務省にあらたに設ける「監理委員会」が担うが、委員会の設置は「日本年金機構」に移行するまでの期間と決められている。

 機構では作業を極力民間委託する方針とはいえ、通常の年金業務に加えて紙台帳との照合作業を最後まできちんと行えるのかどうか疑問が残る。この点についても政府は明確に説明すべきだ。

 政府が「社会保障カード」の導入を打ち出したのは唐突である。

 年金、医療、介護の保険料の納付記録を確認するのに便利になるとしても、個人の詳しい医療情報まで盛り込まれたりすると、漏洩(ろうえい)した場合、取り返しのつかないことになりかねない。どのように漏洩を防ぐのか、導入するとしても、国会で慎重に議論する必要がある。

 

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