[PR]
ニュース:事件 RSS feed
【虐待はどんな傷を残すのか】(5)慢性トラウマ、脳に影響 性的虐待の8割に解離性障害「今、手を打たねば」 (1/3ページ)
このニュースのトピックス:児童虐待を考える
「この男の子は虐待と解離性障害。こちらの男の子はADHD(注意欠陥多動性障害)と虐待。この女の子は性的虐待…」。愛知県大府(おおぶ)市にある県立子供病院「あいち小児保健医療総合センター」。心療科部長の杉山登志郎医師(59)=児童青年精神医学=は心療科病棟に並んだ名札を見ながら、ショッキングな言葉を淡々と並べていった。
センターには、わが国にほとんどない児童虐待専門の「子育て支援外来」がある。平成13年の開院以来、1千人を超える子供が受診した。心療科に入院する子供の7割は虐待を受けた経験を持つ。
以前入院した小学3年の男児は、実父から激しい身体的虐待を受けた。両親の離婚後、男児は母親に「うるせー、ババァー」と大声を上げ、叱(しか)られると包丁を持ち出した。学校でも注意されると教室を飛び出し、前に座っていた子供の背中を鉛筆で刺した。児童相談所の紹介でセンターへ入院、ADHDや解離性障害など複数の発達、精神障害と診断された。
杉山さんは「この子のように、深刻な虐待を受けた子供は複数の診断名がつくことが多い。それは虐待による慢性的なトラウマ(心的外傷)が脳とその発達に影響を与えるからです」。
欧米での研究をまとめた新潟大学の田村立(りゅう)(33)、遠藤太郎(34)両医師らによると、子供のころ虐待を受けた成人の脳は、記憶の中枢である「海馬(かいば)」が健常者に比べ5〜18%小さかった。また、記憶と情動に関連する認知をつかさどるという「扁桃(へんとう)体」が8〜23%小さかったという。
このニュースの写真
関連ニュース
- 【虐待はどんな傷を残すのか】(1)親から認められぬ子供 「自分の存在価値が分からない」
- 【虐待はどんな傷を残すのか】(2)「お母さん!」と絵は叫ぶ 海渡君が遺した「クマの母子」
- 【虐待はどんな傷を残すのか】(3)“犬小屋”に2児を監禁1年半 「究極のネグレクト」回復の鍵は「愛着」
- 【虐待はどんな傷を残すのか】(4)「ママが来る! 怒られる!」夜泣きする子供たち 矛盾噴出の児童養護施設
- 【虐待はどんな傷を残すのか】「私はサンドバッグ…気絶するほど殴られた」「ささいな言葉が救いに」 読者の反響次々
- 【なぜわが子を傷つけるのか】(1)息子の目は鬼でも見るかのようだった…止まらぬ虐待
- 【なぜわが子を傷つけるのか】(3)泣き叫ぶ姿「面白い」 子供で遊ぶ「ペット虐待」親たち
- 【なぜわが子を傷つけるのか】(4)小さな体はミイラのようだった…ネグレクトの果てに
- 【なぜわが子を傷つけるのか】(5)子供、地域で支えて 躊躇しない態勢作り
- 【なぜわが子を傷つけるのか】「男性のサポート絶対必要」「常軌逸した親、理解できぬ」…読者の反響続々