2010年6月1日0時3分
GDP、輸出額、企業収益のいずれを見ても今回の世界経済危機で最も打撃を受けたのは日本であろう。日本の将来にかかわる最も重要な問題は、輸出額、企業収益の大幅な落ち込みが象徴するように、日本企業の国際競争力の低下である。
その原因は、(1)パソコン、薄型テレビ、携帯電話などの電子機器や自動車、造船、プラントなどにおけるアジア企業のシェア拡大(2)世界経済を牽引(けんいん)する中国、インドなど新興国市場への対応の遅れ(3)医療、電子書籍、再生可能エネルギーなどの新たなシステム製品への取り組みの遅れである。
現在、日本企業は競争力回復のために、懸命な企業構造改革に取り組んでいる。その大きな流れが、(1)電子機器や半導体などの国内生産からの撤退と海外企業への生産委託と現地生産(2)新興国市場をターゲットとした製品・サービスの開発と徹底した現地マーケティング(3)単なる製品販売からシステム・サービスの提供や、電気自動車、スマートグリッドなどにみられる内外企業提携による新規市場の開拓であろう。
サムスン電子、アップル、シーメンス、IBMのように、この世界経済危機の中でも成長を続けている企業がある。これらの企業の共通点は(1)経済危機以前から競争優位な分野・能力を見極め競争力強化を図るとともに、グローバル競争を勝ち抜く企業戦略を素早く実施していたこと(2)新興国市場の将来性を早くから見越して製品開発・市場開拓を行っていたこと(3)効率的な組織作りや人件費などのコスト削減を大胆に行い、将来に向けた投資を行っていたことである。
我が国企業には、これら企業を上回る競争力回復への努力が求められている。(創)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。