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連立与党を動物に例えたことがある。議席を目方に見立て、民主党はクマ、あとはスピッツとチワワである。「小型犬にも独自の鳴き声があり、クマの背で黙してはいられまい」と。スピッツ愛好家から「そんなに吠(ほ)えない」と怒られたものだ▼郵政「再」見直しではチワワの声がクマを動かしたが、普天間問題で鳴き続けたスピッツは振り落とされた。筋を通した党首をクビにされ、社民党が政権にとどまる理由はなかろう▼鳩山政権は本気で米国と談判するかにみえた。それが迷走の果てに、日本の安全と沖縄の安全を天秤(てんびん)にかける論法となり、日米合意に辺野古の名がねじ込まれた。普天間の危険を残したまま、怒る地元を「米国と本土」がなだめる構図は、沖縄が日本でないかのようだ▼北朝鮮の仕業とみられる韓国艦の沈没事件も、同盟重視の背景とされた。だが、沖縄に海兵隊がいてもいなくても北は暴走するのかもしれない。抑止力なるものの現実をしっかり検証し、安保論議を深める好機だろう▼経済評論家の勝間和代さんが、紙上で〈クライマックスとエンディングが記憶を作る〉という万能の法則を紹介していた。人間関係もビジネスも映画のように、山場とラストを心すべしというわけだ▼盛り上がらぬまま「完」の字が出そうな鳩山政権。民意による政変という珠玉の筋書きがあったのに、このままでは、首相はそれを台無しにした大根として記憶に刻まれよう。民主党はトップの器を含め、滑り出しでつまずいた理由をとことん突き詰め、出直すしかない。