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2010.06.01

「飲酒の健康影響」-(4)
早めの対処が肝心 
プレアルコホリック 

 アルコール依存症まではいかないが、飲酒による肝臓障害などの健康問題や、飲酒運転などの社会的問題を抱えた人は「プレアルコホリック」と呼ばれる。
 国立病院機構久里浜アルコール症センターの 樋口進・副院長は「依存症になると治療に時間がかかる。一歩手前のこの段階なら、酒をやめたり量を減らしたりすることでコントロールを取り戻せる。早めの対処が肝心だ」と訴える。
 日本酒3合に相当する量以上を毎日飲む人は、多量飲酒者と呼ばれる。樋口副院長らが2008年に国内の約4千人を調べたところ、男性の12%、女性の3%が多量飲酒者だった。
 飲酒運転の経験がある人は男性の30%、女性の8%を占めたが、飲酒運転をしたことがないグループに比べ、酒に関する問題を抱える人の割合が男性で2・3倍、女性で4・5倍と高かった。
 なかには摘発されても飲酒運転を繰り返す人がいる。樋口副院長は「事故を起こす危険があることは分かっていても、酒を飲む欲求が上回る。依存症に近い状態だ」と語る。
 樋口副院長らは、こうした「予備軍」が断酒や節酒を進めるためのワークブックを試作した。自分の飲酒量を客観的にとらえ、酒を減らす目標を立てる内容。同センターのホームページで入手できるようにする予定だ。
 NPO法人・アルコール薬物問題全国市民協会(ASK) は、乗務前の呼気検査でアルコールが検出されたバス運転手の研修を05年から手掛けている。半年から1年の間に計6回、対象者を集め、具体策を自分で考えて実行してもらう。
 「1日に缶ビール1本程度にとどめるため、みんな涙ぐましい努力をする」とASK代表の今成知美さん。例えば、酒を買い置きせず飲む分だけ買って帰る。必要以上のビールを冷やさない。食事で満腹になるまで飲むのをがまんする。休日前に飲みすぎないよう、朝から外出する予定を決めておく。20100601rensai.jpg
 減酒の効果は大きい。目覚めが良くなり、血圧や肝臓の指標が改善する。家族だんらんの時間ができ、新たに趣味を始める人も多い。
 「自分が依存症の手前だったと気付き、涙ぐむ人もいる」と今成さん。「研修を終え、生活を変えることができて良かったと多くの人が振り返る」と話す。(共同通信 吉村敬介)(2010/6/1)