検察審への接触 民主党は政治介入を厳に慎め

読売新聞2010年6月1日(火)02:08

 民主党の小沢幹事長に対する不起訴処分の是非を審査している検察審査会の事務局に、民主党幹部が接触した。

 政治的中立が要求される検察審に、国会議員が接触を図ることは、「政治的な介入」と受け取られても仕方あるまい。不穏当な行為であり、厳に慎むべきだ。

 接触したのは辻恵民主党副幹事長だ。5月26日に、東京地裁の中に設けられている東京第1検察審査会の事務局に電話を入れた。

 審査手続きなどについて尋ね、衆院議員会館の自室に説明に来るよう求めたが、審査会側はこの要請に応じなかった。審査会側が拒否したのは当然だ。

 辻氏本人は否定しているが、その際、第1と第5検察審の事務局長を呼ぼうとしたという。この二つの検察審は、現在、小沢氏の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件の審査を行っている最中である。

 特に第5検察審は、4月に「起訴相当」議決を行い、その後、東京地検の再度の不起訴を受け、第2段階の審査に入るところだ。再び「起訴すべき」との議決が出れば、小沢氏は強制起訴される。極めて重大な局面だ。

 辻氏は起訴相当議決の直後、検察審査会制度の見直しを訴えた。自身のホームページでは、「(小沢氏を)魔女狩り的手法で葬り去ろうとするもの」と起訴相当議決を批判している。

 一方、かつて、日本歯科医師連盟を巡る事件では、自民党の橋本元首相らの不起訴を不服として、検察審に審査を申し立て、「不起訴不当」の議決が出た時は、非常に重い決定だと評価している。

 制度の是非を論じること自体に問題はないが、自らの政党に不利な議決が出た時だけ批判するのは政治的なご都合主義である。

 辻氏は今回、一般論として制度の説明を求めたというが、にわかには信じがたい。

 弁護士出身の辻氏は自らの行為が検察審の独立性を犯しかねないことを、法律家として認識できたはずだ。

 今年1月、小沢氏の資金管理団体に絡む事件の捜査が進展した際、民主党は「捜査情報漏えい問題対策チーム」を作り、検察への 牽制 ( けんせい ) とも取れる行動をとった。

 それが、小沢氏が不起訴になると、一転して検察への批判の矛を収めた。

 都合が悪くなるたびに、政治が司法に干渉すれば、三権分立の基本が崩れてしまう。

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