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【社会】

医療訴訟で原告側勝訴が減少 過去10年で最低

2010年6月1日 09時15分

 全国の地裁で2009年に言い渡された医療訴訟の判決で、一部でも原告側の訴えを認めた割合を示す「認容率」は25・3%(速報値)と過去10年間で最低だったことが最高裁のまとめで分かった。示談など裁判外の紛争解決の増加が一因とみられる一方、「『医療崩壊』が指摘される中、裁判所が医療側に厳しい判断を出しにくいのではないか」との見方もある。

 最高裁の統計によると、地裁の民事訴訟全体の認容率は過去10年間、82・4〜85・3%と横ばい。このうち医療訴訟では、07年37・8%だった認容率が08年26・7%へと10ポイント以上下がり、09年もさらに低下した。

 奈良県内の町立病院で出産時に意識不明となり、相次いで転院を断られて亡くなった女性の遺族が町などに損害賠償を求めた訴訟の判決で大阪地裁は今年3月、請求を棄却する一方、担当医の過酷労働に言及。「こうした医療体制をそのままにするのは、勤務医の立場からはもちろん、患者の立場からも許されない」と批判した。

 医療訴訟に詳しい弁護士は「医療崩壊が社会問題化して以来、過失と被害の因果関係が認められにくくなったと感じる。医療体制の課題は訴訟と切り離して考えるべきで、認容率に影響しているなら問題」と訴える。

 医療訴訟の提訴件数は04年をピークに減少傾向にある。だが、医療過誤を扱う弁護士でつくる医療事故情報センター(名古屋市東区)の増田聖子副理事長は「医療過誤が減ったという実感はない」とした上で、「訴訟外での解決が増えたなら被害側にとって歓迎できるが、本当にそうなのか把握、検証する仕組みが必要」と指摘する。

 医療事故をめぐっては04年、国立病院や大学病院など全国273の医療機関に報告が義務付けられたが、どう解決されたかを集約する取り決めはない。

 (中日新聞)

 

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