滞納家賃の支払いを求める督促状を自宅玄関に張られ精神的苦痛を受けたとして、大阪府柏原市の会社員の男性(29)が家賃保証会社に110万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。窪田俊秀裁判官は「家賃の支払い状況はプライバシー情報で、不特定の人に知られる状態にするのは名誉を損ねる違法な取り立てだ」として、保証会社に慰謝料など6万5千円の支払いを命じた。
消費者金融などの取り立てをめぐっては、貸金業法がこうした張り紙を禁じているが、滞納家賃については規制する法律がない。支援団体「全国追い出し屋対策会議」によると、同様の訴訟で、督促状の文言は問わず玄関に張るだけで違法と認めた判決は初めて。同会議代表幹事の増田尚弁護士は「張り紙は入居者に与える心理的な圧力が強い。安易な取り立てを防ぐ意味で貸手に与える影響は大きい」と評価する。
判決によると、男性は2008年9月分のマンション家賃8万5千円を滞納。保証会社は同月以降、家主に滞納分を立て替えたうえで、男性宅の玄関ドアに督促状を張りつけたほか、電話で「出ていけ」などと退去を要求。男性はその後、家賃を支払った。
窪田裁判官は「督促状は郵便受けに入れれば足りる」と指摘。高圧的な口調の取り立てについては「社会通念上の限度を超える」と判断した。
強引な家賃の取り立てに刑事罰を科すことを盛り込んだ「追い出し規制法(通称)」案は今月25日に衆院国土交通委員会に付託された。先に審理した参院は全会一致で可決しており、6月にも成立する見通しになっている。(室矢英樹)