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「ハットリくん」の声・堀絢子さん、被爆少女演じ20年

2009年2月8日

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写真一人芝居「朝ちゃん」で被爆した少女など4役を演じる堀絢子さん=広島市中区

 テレビアニメ「忍者ハットリくん」や「新オバケのQ太郎」で知られる声優・堀絢子さん=東京都=が、広島で被爆した少女ら4役を演じる一人芝居「朝ちゃん」が今年で20年になる。自身も原爆で父を亡くし、反戦・反核や命の大切さを全身で訴えてきた。7、8日に平和記念資料館(広島市中区)で無料公演を行う。

 堀さんには父の記憶がない。山口県内で町医者をしていた父は軍医として招集された2カ月後の1945年8月6日、陸軍第五師団(爆心地から約1キロ)で被爆。重傷を負い、トラックで三次市の中学校に搬送された。2週間後、母が駆けつけると、「待っとった」とせきを切ったように自分の死後の指示を話し、翌朝、息を引き取ったという。堀さんが3歳の時だ。母は夏が来るたび号泣し、父の最期を語った。堀さんの脳裏に、原爆に痛めつけられた父のイメージが焼きついた。

 堀さんは大学卒業後、俳優や声優として活躍。明るいアニメの仕事は充実していたが、次第に「子どもたちに原爆のことも伝えたい」という気持ちがわいた。89年、原爆の惨状を描いた児童書をもとに「朝ちゃん」の台本を書き上げた。

 舞台は、原爆投下翌日の広島。被爆した少女・秋子が足を引きずりながら街をさまよっていると、死体と思った塊に声をかけられる。人一倍はつらつとしていた友人「朝ちゃん」だった。秋子は朝ちゃんの母と兄を連れてくる。朝ちゃんは息も絶え絶えに言う。「母ちゃん、待っとった」「うちは死にとうない」

 セーラー服にもんぺ姿の少女にいつでもなれるよう、20年間、おかっぱ頭を貫き、全国各地の学校や公民館、文化センターで演じてきた。

 6日、同資料館で袋町と本川小学校の5、6年生約190人を前に164回目となる公演を行った。広島での公演は3年ぶりで、スタッフ7人は手弁当だ。役によって声色を使い分ける様子に最初ははしゃいだ子どもたちは、すぐに真剣な表情で見入った。

 堀さんは「演じていると魂がほえる。特に数知れない人が命を奪われた広島は反戦の原点で、ここで公演できるのがうれしい」。反戦にかけて半千=500回の公演を目指し、声がかかればどこへでも出向きたいという。

 7、8日の公演は午後1時半から。いずれも先着312人。問い合わせは、同資料館啓発担当(082・242・7828)へ。(秋山千佳)

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