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ホンダ中国スト、外資系に飛び火懸念 賃金上昇で“世界の工場”転機
【上海=河崎真澄】部品工場のストでホンダが生産の全面停止に追い込まれた中国で、外資系製造業にストが飛び火する懸念が出ている。中国紙「京華時報」(電子版)は31日、北京にある韓国現代自動車系部品工場でも1千人規模の賃上げ要求ストが起き、完成車の生産に影響が出たと伝えた。出稼ぎ農民の減少による労働力の不足も背景にあり、外資にとっては賃金コストの上昇は避けられない。スト多発は、安くて豊富な労働力を背景とした「世界の工場」の転機を象徴している。
同紙によると、ホンダ系に続いてストを打った韓国現代系の自動車部品メーカーは北京星宇車科技。同社の部品供給先である完成メーカーで特別手当が支給されたことから、同様の手当を求め、生産がストップした。現代側の調停でストは収拾に向かっているが、大幅な賃上げ要求は撤回されていない。
ホンダと韓国現代のケースで共通しているのは、完成車工場と部品工場の待遇差だ。外資系企業では、より高い付加価値を産み出す労働にはより高い賃金で報いるとの考え方が一般的。だが、計画経済時代の意識が残る中国のブルーワーカーからすれば、同じ工場労働にもかかわらず部品工場が冷遇されているとの差別感がある。
中国内の急速な需要拡大に対応するため、完成車工場での厚遇を進めたこともあだになった。しかも、工場労働者は日本や韓国など本国から派遣された管理職や駐在員とのケタ違いの給与格差が中国メディアで報道されたことで、被害者意識を増幅させている。
経済成長率よりも低い工場勤務の賃上げ率に、現場の不満がここにきて一気に噴き出した格好だ。
中国に進出している外資系製造業の給与格差問題は、ほぼすべての業種に当てはまる。労組の全国組織である中華全国総工会が、外資系の製造業をターゲットに厳格な労使交渉を進めるよう指示しているとの情報もある。
工場従業員の大半は「農民工」と呼ばれる農村からの出稼ぎ労働者だが、少子化と高学歴化の影響で、供給が減少。しかも4兆元(約52兆円)にのぼる景気対策で内陸部の公共工事が増大し、「沿岸都市部に出稼ぎする労働者に不足感がでている」(みずほ総研上席主任研究員の鈴木貴元氏)。
中国では2008年の労働契約法施行で労働者の権利意識が高まり、昨年は約60万件の労働争議が発生している。06年の倍の勢いで、今年も増加傾向にある。また「同一労働、同一賃金」を明文化する「賃金法」の年内成立も検討されており、鈴木氏は「中国人従業員とのあいまいな労使契約が多い日系企業に紛争が広がる懸念がある」と警告している。