大阪・泉南地域のアスベスト(石綿)による健康被害をめぐり、国の「不作為責任」を認めた大阪地裁判決を受け、政府は31日、関係閣僚会議を開き、控訴する方針を決めた。
出席者らによると、長妻昭厚生労働相は、裁判中にも亡くなる原告がいることなどを挙げ、早期解決のためにも控訴断念を訴えた。しかし、仙谷由人国家戦略相らが、他の被害者らへの影響や検討期間の短さなどを指摘。最終的には仙谷国家戦略相に対応を一任した。
仙谷国家戦略相は会議終了後、「短時間でこの問題を確定させてしまえば、後々出てくる問題点について合理的な解決策を示す余地がなくなる。全体的な解決策を、裁判所に入っていただくこともありうる前提で検討する」と控訴の理由を説明。長妻厚労相は「政府全体の話し合いで色々な意見が出た。政府全体の結論だからのみ込んだ」と述べた。
一方、原告団は「被害者の期待と信頼を大きく裏切るもので絶対に容認できない。原告団・弁護団は控訴手続きを取るが、引き続き判決をふまえた政治解決を求めて全力を尽くす」とのコメントを出した。
国の方針をめぐっては、5月28日にも関係閣僚会議が開かれ、長妻厚労相が「控訴断念」の意向を表明。小沢鋭仁環境相は支持したものの結論は出ず、仙谷国家戦略相らが再協議を求めていた。
裁判は、泉南地域にあった石綿紡織工場の元労働者や元周辺住民らが、肺がんや石綿肺などにかかったのは国が石綿の規制を怠ったのが原因だとして、計9億4600万円の賠償を求めて提訴。判決では国の規制の不備を認め、元労働者らに総額4億3500万円を支払うよう命じた。