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7月6日   ワールドプロレスリング実況四銃士の闘魂コラム#122
〜旅立ち実況〜

一人のアナウンサーがプロレス班を離れます。
そのアナウンサーは、とにかく不器用な男でした。
普通の人が10回でできることを、
100回しなければできないぐらいの不器用でした。
ただ、その男は100回練習できる男でもありました。
怒られても、怒られても「プロレス実況」に果敢に立ち向かい、
そして、何度も強烈なKO負けを繰り返してきました。
でも、その男は不死鳥のように立ち上がり、汗をかき、手を動かし、
自分の実況ノートに注意書きを書き込んでいきました。
実況用のヘッドセットが大量の汗で、びしょ濡れになるなか、
ただひたすら、男の持てる力を結集し、
「プロレス実況」に挑んでいました。
10回実況して、10回KO負けを喫っすることもありました。
ただ、男は不屈の闘志で立ち上がり、勇気を振り絞り、
11回目の実況に猛然と挑んでいきました。
男は3歩進んで2.9歩下がることを愚直に繰り返しながら前進してきました。
プロレスラーに水を掛けられ、ボコボコに殴られたこともありました。
でも男は、マイクを離しませんでした。
不器用ですが、決して後ろを見せて逃げるようなことはしませんでした。
数え切れないほどの失敗と成長を繰り返し、
男は確かな前進を果たしました。
ある時から男の実況には「心」が通うようになりました。
小手先の技術はありませんが、
心の芯が太くなっていることは間違いありませんでした。
そして、ついに、プロレス班から
「あいつの実況、最近良くなってきたよね。」
この言葉を引き出せるようになりました。
男は気が付けば、プロレス班に
「なくてはならない存在」になっていました。

「中村昭治アナウンサー」にとって、旅立ち実況となる、
「7月6日後楽園ホール」

最後の実況ではありません。
あくまで旅立ち実況です。
当日は、私も耳と心を澄まして
セルリアンブルーのリングサイドで
「中村昭治アナウンサー」の旅立ち実況を聞きたいと思います。



右から中村アナ、私、古澤アナ。
以前、プロレス出張の道中で撮りました。
 
 
    
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