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「光の道」とNTTの構造分離(まとめ) - 松本徹三

電力系の会社やCATV事業者の立場は、勿論考えなければなりません。これについては、更なる詳細な議論が必要ですが、基本的には、これらの会社に下記の「三つの選択肢」を与えることで、公正な共存共栄がはかれるものと考えています。

1.NTT系のアクセス回線会社と競合する。(都市部?)
2.必要に応じNTT系のアクセス回線会社から回線を借りることも出来る。(地方?)
3.必要があれば、自らの既存施設をNTT系のアクセス回線会社に買ってもらうことも出来る。

4)ソフトバンクの提案は話がうますぎる。そんなにうまく行く筈がない。どこかに「誤り」や「見落し」がある筈だ。

これは「単なる感想」に過ぎず、議論とは言えません。一応の計算根拠はソフトバンクから既に提出されているのですから、単純にこれを検証すればよいだけのことです。もし、検証の結果、「誤り」や「見落し」が発見されれば、ソフトバンクは陳謝して訂正すればよいだけであり、こうして修正された「最終案」のフィージビリティーをあらためて検証すればよいだけのことです。

(ソフトバンクは、NTTの内部の状況について色々想像しながら、かなり無理して「計画書」を作っているのですから、当事者のNTTが精査すれば、修正すべきところが多数出てくるのはむしろ当然でしょう。)

5)何故「全国一律」でなければならないのか? 何故「当面使う当てもなさそうな人」にまで100Mbpsもの能力を供給せねばならないのか?

この答は、既に上記1)と2)の答として出されています。例外をつくると、却って高いものにつくのが普通です。途中で必要になった場合に追加するのも、長期的な観点から見ると大きなコストアップ要因となります。

6)何故「光」と決め付けるのか? 選択肢の幅を狭める必要はない。

伝送能力としては、少なくとも数十年は「光」を超えるものはありません。また、100Mbpsは、30年ぐらいまで先を見越せば、当然必要と考えるべきです。(将来はそれ以上が必要となるでしょうが、その時には回線を張り替えずともアップグレードが可能になるようにしておくべきです。)

モバイルの技術を固定環境で使うのは無駄(コスト的に高くつく)ですし、能力的にも100Mbpsは当分の間はとても無理です。(「ユーザーが一人だけで、たまたま基地局の近くにいる」ことを前提とした「ピークデータレート(仮想的な最高瞬間風速)」と、実際の「一人当たりの平均スピード」がよく混同されており、これが多くの人達の誤解の源となっていますので、先ずはこのあたりの啓蒙が必要です。)

DSLの将来技術でも、距離による減衰を考えればとても無理です。WiFiは、そもそも独立したものではなく、「有線回線の最後の10−20メートルを無線化するのに最適の技術」なのですから、光回線などでサポートされていなければ意味がありません。(アクセスポイントが光回線でつながれていて、初めて100Mbpsが出せるのです。)

そもそも、技術の問題を、素人が聞きかじりの知識をベースにして議論しても何の意味もありません。「最も効率的な国の通信システムのグランドデザインはどういうものであるべきか」は、NTTの人達を交えた技術者の間で大いに議論させて、報告させればよいと思います。(ずっと以前から「光通信の最も熱心な信奉者」であり、その為に長い間「中間技術としてのADSLの可能性」を否定してきたNTTが、この問題について沈黙を守っているのは、極めて奇異です。)

7)ソフトバンクがそんなに熱心なのなら、自分達でやって、競争を仕掛けていけばよいではないか。何故自分達は汗をかこうとせず、NTTにさせようとするのか?

「競争」でユーザーの求めるコストレベルを実現出来るのなら、誰でも「競争」を仕掛けるでしょう。しかし、そんなところで競争をしていたら、とてもコストの壁は破れず、「日本中に分け隔てなく高速通信網を張り巡らせる」などという理想は実現出来ないのです。この仕事はNTTしか出来ず、また、NTTでさえ、今の体制や経営理念では実現出来ません。だからこそ、こういう分野では「国家政策」が必要なのです。

(ソフトバンクの場合は、ADSLでは蛮勇を奮って価格革命を引き起こしました。光時代においても、当然同じことをしようと試みましたが、どうしても競争出来る状態ではなかったので、涙を呑んで断念したのです。)

8)メタル回線はいざ知らず、光回線は「民営化後のNTT」が自分の力で先行投資し、営々と構築してきたもの。それを今になって国が取り上げるのは理不尽。憲法で保証された「財産権」の侵害である。

率直に言って、このような話を聞くと、私は本当に怒りを感じます。国が何時何かをNTTから「取り上げる」と言いましたか? 国は、単に、「国策に合致するように、組織構造を変えたり、経営のやり方を変えたらどうか」と言っているのです。それに反対なら、「こういう組織、こういうやり方の方が、国策により合致すると思いますよ」ということを、筋道を通して「逆提案」すべきであって、間違っても「我々は民営化された私企業なのだから、国は口を出すな」等と言えた筋ではないのです。

そもそも、「NTTの分離分割論」は、その必要があったからこそ、1990年の初めから議論されているのです。この過程において、「先送り」こそ何度もされては来たものの、一度として否定されたことはありません。ましてや「財産権の侵害」等という事が、何故今更言い出せるのでしょうか? それなら、これまでの議論の中で、法律家を総動員してでもそのことを徹底的に議論して、白黒をつけてしまっておけばよったではないですか。

話は簡単です。これまで延々と「先送り」をしてきた「NTTの分離分割論」を、今度こそ徹底的に議論して、はっきりと決着を付ければよいだけのことです。国からとやかく注文を付けられるのが嫌な部門があるのなら、その部門は「国が大株主である持ち株会社」から自ら離脱し、自主独立の道を歩めばよいのです。

それから、NTTは、事あるごとに「光回線は民営後に自力でつくりあげてきたもの」と言いますが、NTTがやってきたことは、「先送り」によって「持ち株体制」「寡占体制」を温存した上でやってきたことであり、多くの「普通の会社」がやってきたこととはとても同列には語れないことを、自覚しておいて頂かなければ困ります。

「自力で光回線を敷設してきた」と言われますが、それは、明治以来の「規模のメリット」、「顧客ベース」、「局舎」や「とう道」、「架空線施設の権益」などがあって、はじめて出来たことであり、一から始めたものではない事を、よく噛み締められるべきです。

NTTが現状では「普通の会社」ではないことは明らかです。ですから、そういうことを何時までも言われない為にも、この辺で、「公益的な特殊会社」と「普通の会社」の二つに、きっちりと自らを分離してはどうなのでしょうか?

9)NTTしか出来ないという事で、この仕事はNTTが引き受けるとしても、どうしてNTTの嫌がる「構造分離」までしなければならないのか? どのようなやり方でやるかは、NTTに任せればよいではないか?

そもそも、何故NTTは「構造分離」をそんなにまで嫌がるのでしょうか?「構造分離」を行った場合に、具体的にどのようなデメリットが、ユーザーやNTTの各ステークホルダーに生じるというのでしょうか?
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