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「光の道」とNTTの構造分離(まとめ) - 松本徹三

成程、初期においては、ある程度のリテラシーを持った人達や、オタクっぽい人達が主な利用者になるので、「一般人がそんなものを使うのかなあ」という考えを持つ人達も多いでしょうが、市場がある程度まで広がってくると、サービスの提供者がもっと利用者層を広げようと考えて、関連機器やサービスの手順を簡素化していくので、実際に利用者層が広がっていくのが常です。

「インフラ」と「利活用」を、その「重要性」や、現時点での「不十分度」から静的に比較してみれば、成程、後者の方が前者より数倍「重要」であり、且つ「不十分」であるのも事実です。しかし、これを動的に見ると、「インフラ」がなければ何も始まらないので、これだけは政治的に引っ張っていかねばなりませんが、「インフラ」さえ整備されれば、後はほぼレセ・フェールで動くでしょう。

「インフラ」は鶏、「利活用」は卵です。つまり、「インフラ」は「とりあえず確保しなければならない数羽の鶏」であり、「利活用」は「毎日生み出されて食卓に供せられる大量の卵」なのです。従って、今、とりあえず論議を鶏(インフラ)に集中することは、意味のなることであって、全然おかしいことではありません。

(尤も、「利活用」の面でも、一つだけ政治的なプッシュが必要なことはあります。それは既得権者の抵抗で一向に進まない「コンテンツの二次利用、三次利用」の問題です。これは「通信と放送の融合」の問題とも絡み合った問題であり、今すぐにでも「政治主導」が必要とされている事柄です。)

2)現時点で既に日本全体の90%に対して光回線敷設が可能な状態になっているのに、実際の利用者は30%程度にとどまっている。一部の地方都市等では、地方自治体が金を出して全戸に光回線引き込みを可能にしたのに、やはり加入率は30%程度にとどまっている。これは、「インフラを整備しても利用は進まない」ということの何よりの証左だ。

先ず、NTTが言っている90%という表現は、非常に誤解を生む表現であることを指摘したいと思います。実際には、局舎設備と地下埋設の「とう道」部分で約90%、架空部分で約80%、引込み線で約30%です。

利用者の声を集めてみると、架空部分が完成している地域で、実際に引込み線を注文しても、「すぐに応えてくれる保証は全くない」との事です。「道路の同じ側で6件の加入者が集まらないとやってくれない」という例もあったようです。ですから、NTTは「全国の90%は既にカバーされている」等という抽象的なことは言わずに、正確に現状を説明すべきですし、この事を引き合いに出す人達は、実態を正確に把握した上で参照すべきです。

次に、現状で利用者が30%もあるということは、考えてみれば相当な利用率と言えます。現状では、光回線のスピードを必要とするアプリケーションがそんなに多く存在しているわけでもなく、また、その存在が周知されているとも言い難いにもかかわらず、この数字であることは、「将来については相当楽観的な見通しが可能だ」とも言えます。

今後下記のようなことが起ると、この数字が70−80%まで増えるのにはそんなに時間はかからないでしょう。

1.UStreamのような、魅力ある新しい映像系インターネットアプリの増加
2.メールやブログ、ツイッターなどへの画像、映像の添付率の増加
3.VOD(Video on Demand)サービスの充実と低価格化
4.「見落としTV放送番組の再送サービス」の充実
5.WiFi装備の携帯端末の増加(携帯電話機並の小さなスクリーンサイズのものから、パソコン並の大きなスクリーンサイズのものまで)
6.家庭におけるWiFi環境(Home LAN)の普及
7.テレビ受像機への「インターネットアクセス機能」の追加と「簡単操作」の開発
8.FTTHサービスの低価格化と手続きなどの簡素化
9.サービスの周知徹底

なお、この事に関連して、「FTTHの普及を進めた地方都市におけるサービス利用率の低さ」がしばしば引き合いに出されますが、これはいわば当然のことです。人口の多くない地方都市だけの為に、新しくサービスやコンテンツを開発してくれる奇特な会社はありませんから、アプリの数は自ずと限られ、従って、「インフラが整備されたからといって、利用者にとっての魅力はすぐには生まれてこない」ということになるからです。

ところが、「光の道」構想などによって、全国規模の巨大マーケットが生まれると、既存のサービス業者や多くのベンチャービジネスが、「都会向け」「地方向け」「若者向け」「年配者向け」を問わず、我先きに新しいアプリを開発しますから、これらの先進的な地方都市のユーザーも、その時点でやっと報われることになると思います。

3)都市部では、NTTと電力系の事業者、CATV事業者間の競争が既に存在しているのだから、このような競争に任せておけばよいではないか。せっかく民間でまわっているものを、何故今更時計の針を逆回しにするように、公営化せねばならないのか?

この問題に関する議論には、二つの側面があります。

先ず、国(民主党政権)の立場からいくと、「全国民に分け隔てなく」サービスを提供出来ないのなら、「電子政府」「遠隔医療」「電子教科書(ネット授業)」等を政治目標にすることは出来ません。従って、最初からこれを前提条件にせざるを得ないのです。つまり、「先ず目標がある」という議論です。

NTTに任せておけば、当然彼等が考える範囲内での「経営合理性」の枠内でしか新規回線の敷設は出来ませんから、現状の如く、当初の3000万回線の目標が先ず2000万回線に減り、その後も時間が経つ度に目標が下方修正されているわけです。従って、「全国民に分け隔てなく」という理想などはとても実現出来そうになく、当然、「何らかの政治主導が必要」という結論になります。(後は、「関係者が知恵を絞って、それを可能にする方法を考えろ」というわけです。)

ソフトバンクは、いわばこの要請にこたえて知恵を絞ったともいえます。その意味で、ソフトバンクの議論は、「問題解の為の議論」です。

先のブログでも述べたとおり、ソフトバンクの孫社長は、「税金は一切使わない」「高度サービスを必要としないユーザーの負担は一切増えない」ということを初めから至上命令としました。そこから、「計画的に全てのメタル回線を例外なく光に変え、短期間内に光とメタルの二重保守構造を全廃すれば、この目標は達成できる。そうでなければ不可能」という結論が導き出されたのです。

そして、ここから、「現状では、国の目標は達成できないから、大胆な施策を行う必要がある。NTTが自主的にやってくれるならそれが一番よいが、そうでなければ、国の方針に従ってもらうしかない。NTTの現在の株主構成や従業員は何も変えず、単純に二つのオペレーションを切り離して、新しい経営理念でそれぞれを運営するだけでよいのだから、全ての関係者の利益がそれぞれに増える形で、国の目標も達成できる」という提案が生まれました。

(もし、「アクセス回線会社の方は、『国営に近いような特殊法人』にした方がよい」ということになるのなら、それはそれでもよいかもしれませんが、「コストを下げ、公正競争環境を担保する」だけの為なら、「経営を徹底的にガラス張りにする」だけでよいわけですから、恐らくその必要はないだろうというのが現在の考えです。)
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