広島湾の西岸にあるアメリカ軍岩国基地で、この週末、新しい滑走路の運用が始まりました。空母艦載機の移転の「受け皿」ともなっているこの新滑走路―。アメリカ軍機の飛行コースに近い県内の住民らの間では低空飛行などの被害に懸念がくすぶっています。
瀬戸内海に点在する島々を一望できる宮島の弥山山頂―。
「ここが世界遺産の島・宮島の山頂なんですが、そのすぐ目の前に岩国基地の新滑走路はあります」（藤原大介記者）
山頂には、新滑走路の運用開始を見守る基地反対派の市民グループの姿がありました。
「あれが飛行機だな、動きよる、動きよる」（基地を監視するグループ）
そのころ、岩国基地では―。
「この新滑走路の運用開始式に出席できて、とても光栄です。新滑走路は、緊密な日米関係の象徴です」（アメリカ ジョン・ルース駐日大使）
運用開始式で、アメリカのルース駐日大使は日米同盟の重要性を強調しました。
新滑走路は長さ２４００ｍ、幅６０ｍ―。総事業費２５００億円は日本側が全額負担しました。
式典の最後には、アメリカ軍の戦闘機と自衛隊が新滑走路に記念の着陸―。しかし、この２機が閉鎖されたはずの旧滑走路から離陸したため、市民グループは「約束違反だ」と反発しました。
「旧滑走路は一切使いませんって住民説明会で（説明）したのに、もう、そこでも約束守っとらん」（瀬戸内ネット 坂本千尋事務局次長）
不信感の背景にあるのが、新滑走路を「受け皿」にした在日アメリカ軍の再編―。岩国基地には２０１４年までに空母艦載機５９機が新たに移転する予定です。沖縄の嘉手納基地を抜いて「極東最大」の基地になり、県内など中国地方各地で低空飛行や騒音の被害が増えるとグループは懸念しています。
「今、現状、この通り飛んでりゃまだしもね、飛んでないわけじゃけえね、ありえない。今まで以上に大野とか大竹とかの上空を飛ぶことが増えるんじゃないかな」（瀬戸内ネット 坂本千尋事務局次長）
― すぐそばに米軍基地があるのは知ってた？
「いや、知らなかったです」
「アメリカ軍とかと宮島はやっぱり合わないとは思いますけど」（観光客）
防衛省によると、新滑走路の運用によって、アメリカ軍機の飛行コースは、次のように変化します。黄色で示したのがこれまでのコースで、赤で示したのが新しいコースです。世界遺産の島・宮島により近いところを飛ぶことになります。
地元では、観光への影響を懸念する声も出ています。
「特に観光地宮島、原爆ドームが控えているわけですから、穏やかじゃないですわね。どうなんでしょうかね、普天間の問題があって、きのうのきょうですからね」（宮島の商店主）
アメリカ軍再編の見直しを公約にしていた鳩山政権―。先週金曜の日米共同声明では普天間基地の辺野古移設とともに、岩国基地の再編を計画通り進める方針を示しています。
「わたしたちは広島から、本当にこの米軍基地をアメリカに引き取ってほしいという声を強めながら、きょう抗議行動をしていきたいというふうに思います」（憲法と平和を守る広島共同センター 利元克巳事務局）
３１日、原爆慰霊碑前では、反核平和団体が日米共同声明に抗議し、座り込みをしました。
岩国基地への艦載機移転の中止や、普天間基地の無条件撤去を求める声明文を鳩山総理らに送りました。
「今回の合意でアメリカにものが言えない、主権国家として誇りも自主性もない卑屈な姿を浮き彫りにした」（声明文）
普天間移設を巡る混乱のなか運用が始まった岩国基地の新滑走路―。基地反対派の市民グループは、アメリカ軍機の低空飛行などの監視を今後も続けることにしています。（5/31 19:18） |