2010年05月30日(日)
甲州牛「品質保てるか…」 口蹄疫 子牛買い付け東北へシフト 仕入れ値も上昇、農家不安
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肉用牛120頭を育てる小沢豊さん。牛舎には宮崎県のスーパー種牛といわれた「忠富士」の子もいる=韮崎市内 |
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宮崎県で猛威を振るう家畜伝染病の口蹄こうてい疫問題は、全国各地のブランド牛肥育に大きな影を落とし、山梨県のブランド牛「甲州牛」の生産にも影響が出始めている。宮崎の多くの種牛が殺処分されることになり、子牛の買い付けは東北などに頼らざるを得ない状況。「ほかの産地で甲州牛の品質を維持できるか」という不安が付きまとう。子牛市場の価格も上昇していて、ここ数年、配合飼料の高騰に悩まされてきた農家は「採算が合わなくなれば買い付けを控えざるを得ない」と悲壮感を漂わせている。 韮崎市穂坂町の山間地に肉用牛の畜舎を構える小沢豊さん(58)は、黒毛和種、交雑種合わせて120頭を肥育する。うち2頭は殺処分になった宮崎のエース種牛「忠富士」の子牛だ。「甲州牛研究会」の会長を務める小沢さんにとっても口蹄疫問題は衝撃だった。 「感染したならともかく、元気な牛まで殺処分するなんて、つらいことだと思う。一からやり直すことは、大変な時間と経費がかかる」。宮崎の畜産関係者の気持ちが痛いほど分かるという。 約80頭を甲州牛として肥育する北杜市白州町の名取義定さん(75)は、35年前から子牛である素もと牛のすべてを宮崎から仕入れてきた。「血統が良く、太りやすい宮崎の素牛は飼いやすかった」と振り返る。 口蹄疫の発生で宮崎の市場取引がストップしたため、初めて岩手から7頭を仕入れたが「これまでと同じ品質の牛を育てることができるか」と不安を口にする。一日も早く「日本一の産地」と確信する宮崎から仕入れることができるようになってほしい、と願っている。 21日までの3日間、岩手県雫石町の全農岩手県本部中央家畜市場で行われた競りでは、子牛の平均価格が前回(4月)に比べ8・4%上昇した。全農岩手の担当者によると、これまで参加したことがない中部や関西地方のバイヤーもいたという。 子牛価格の上昇について、小沢さんは「配合飼料の高騰などでここ3年、畜産農家は利益が出ていない状態。素牛が上がれば、仕入れを控えることも考えなければならないだろう」と危惧きぐする。山梨県畜産課の担当者は、口蹄疫の影響がはっきり分かるのは、この時期に仕入れる牛の出荷期に当たる2年後といい、「今後は繁殖農家を増やす対策に力を入れていく必要がある」と話す。 同課によると、昨年度、甲州牛に認定された333頭のうち、宮崎県産は132頭(39・6%)でトップだった。産地名は、JAS法で飼育期間が最も長い場所と定め、松阪など各地のブランド牛同様、甲州牛も生後10カ月程度(体重約300キロ)の子牛を宮崎などから仕入れ、県内で30カ月程度(約700キロ)まで肥育して出荷するため、「甲州」ブランドになっている。
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