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【神奈川】

専門家『身内に甘い』 高津署員・児童買春事件 県警の姿勢疑問視

2010年5月28日

 児童買春事件を担当する高津署生活安全課の男の巡査長(30)が、少女に金を払ってわいせつ行為をしたとして、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で書類送検された事件。担当者自身による児童買春とあって、捜査現場から怒りの声が上がっている。その一方、逮捕せず書類送検とした県警の事件処理に、専門家たちから「証拠隠滅の可能性があるのになぜ? 身内に甘い」と疑問の声が出始めている。

 送検容疑では、巡査長は三月二十日、出会い系サイトで知り合った中学生=当時(15)=に一万円を渡し、わいせつな行為をしたとされる。同時に停職六カ月の懲戒処分となり、書類送検された二十六日付で依願退職した。

 「風俗店通いの感覚」で出会い系サイトにアクセスしたといい、日夜、少女買春取り締まりに汗をかく捜査員たちからは怒りの声が。「児童買春に抵触するリスクがあるサイトに飛び込むなんて」と話すのはネットを巡回監視する捜査員。「倫理観に問題があるとしか言いようがない」。別の捜査員も「市民の信頼を失った。やるべきことをやって、回復するしかない」と悲壮な表情だ。

 ところで、県警によると、巡査長を逮捕しなかったのは、別の児童買春事件で、容疑者の携帯電話に少女の連絡先が登録されているのを見つけた巡査長が、上司に自己申告したのに加え、十八歳未満という認識がなかったことが大きいという。少女は「十九歳」と自称していたといい「普通は男を立件しないケース。少年事件担当の警察官だから厳しくした」と“一般男性より厳しめの処分”と強調する。

 しかし、男が「十九歳だと思っていた」から逮捕しなくていい−という姿勢を疑問視する専門家も。ネット犯罪に詳しい甲南大学法科大学院の園田寿教授(57)は「弁護士として担当した事件で、『十八歳未満と知らなかった』ケースでは、裁判官に『戸籍謄本見て確認しなさい』と言われた。外見が十八歳以上に見えたというのは言い訳にならない」と指摘する。「そもそも、警察官が出会い系サイトを利用していたことが問題。世間は警察官に、自分を厳しく律することを期待している。職業倫理としてどうなのか?」

 巡査長の言い分に首をかしげるのは、新聞記者時代、大阪府警などを担当し、警察の内情に詳しいジャーナリスト・大谷昭宏氏。「巡査長は相手に生年月日を確かめたのか、身分証明書を見せろと言ったのか? 警察官は職務質問のプロ。相手の言う年齢にだまされたなんて信じられない」と断じる。

 「年齢を見破れなかったという供述は極めて信用性が低い。供述が信用できない以上、証拠隠滅の可能性がある。証拠隠滅の可能性がある場合は逮捕が妥当。普通は、こう考える。現に、一般人は児童買春で逮捕されている」。身内に対する県警の姿勢に疑問を呈した。

 

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