きょうの社説 2010年5月31日

◎社民が連立離脱 安保を軽視した政権の帰結
 社民党が政権離脱を決めたのは、国の根幹をなす外交・安全保障政策で、考え方の一致 しない党が手を組んできた政権が、いずれはたどり着く当然の帰結といえる。連立の破綻を招いたのは、そうした与党の深い溝を覆い隠すように、普天間問題で「最低でも県外」と繰り返し、社民党の主張に沿うかのような対応を取ってきた鳩山由紀夫首相の責任でもある。沖縄の期待をあおってきた構図とまったく同じである。

 民主、社民両党は選挙協力を前提に参院選の準備を進めてきた。選挙への危機感が強ま るなかで、民主党内からも首相退陣が公然と語られ始めた。共同通信社の世論調査では、普天間問題の「5月決着」を果たせなかったことで「首相を辞めるべきだ」は過半数に達し、内閣支持率は20%台を割り、19・1%に落ち込んだ。普天間問題はもはや、首相の資質が問われる「鳩山問題」になっている。

 社民党としては、党首の罷免に加え、普天間問題の政府方針を組織として拒否した以上 、連立に残る選択肢はなかった。護憲など従来の主張を明確に訴え、参院選で支持層を固める狙いもあるのだろう。社民党が曲がりなりにも筋を通したことで、けじめをつけない首相の無責任さが一層浮かび上がる構図になってきた。

 鳩山首相は福島瑞穂党首を罷免しながら、連立の継続を求め、社民党から新たな閣僚を 迎え入れる考えも示していた。閣議後の会見で、あれほど安全保障政策の重要性を強調しながら、内閣不一致の状況を再び招くような発言は理解に苦しむ。連立政権の構造的な欠陥がすでに覆い隠せなくなっている現実を、どこまで理解しているのだろうか。

 普天間問題は、沖縄や米国の信頼を失った鳩山首相のもとでは、解決の糸口を見いだす ことさえ困難な局面に陥っている。首相が続投すれば、参院選で首相としての資質が問われるのは必至である。党内で「鳩山降ろし」の動きが表面化すれば進退の決断を迫られることになる。自ら約束した「5月末決着」の破綻は、首相の思いをはるかに超え、政治の混乱と有権者の不信を加速させかねない深刻な状況を生み出している。

◎退職校長ボランティア 豊かな経験を若手に伝えて
 石川県退職校長会は、校長経験者の会員がボランティアで教育活動を支援する「人材バ ンク」の設立に乗り出す。多様な課題を抱えて教員の負担が重くなっているといわれるなかで、「即戦力」となる退職校長の活用は、学校全体の指導力向上につながると期待される。

 県教委の来年度の教員採用数は過去20間年で最多の350人程度で、今後の大量退職 とそれに備えた大量採用によって世代交代が加速する。退職校長の豊かな経験とノウハウを若手教員にしっかり伝えてもらいたい。

 教育現場は長年の経験と専門的知識が求められており、全国的に退職教員の活用が大き な課題となっている。東京都や長崎県などでは、退職教員を含めた外部の人材を登録して、教育活動を支援する事業に取り組んでいる。石川県でもこれまで退職校長・教員らが学校ボランティアや学習サポーターなどを務めているが、県退職校長会の「人材バンク」構想は、より広く組織的に人材を活用できる仕組みといえる。

 今回の「人材バンク」の計画では、支援する分野は補習の指導や理科の実習補助、部活 動の指導補助などで、6月に会員約1800人に参加申込書を配布し、各会員が自分のできる支援内容や連絡先などを記入する。意欲のある会員が得意分野で積極的に力を発揮することは、学校の負担を軽減して教育効果の向上を図り、教育への変わらぬ熱意が経験の少ない若手教員の刺激になるだろう。

 ただ、ボランティア側と学校側のニーズが合わなければ、せっかくの試みも思うような 効果は見込めない。「人材バンク」では集まった情報を県内の小中学校などに提供し、それを参考に学校側が必要に応じて退職校長にボランティアを依頼することにしている。思惑の違いが生じないように双方への十分な情報提供が求められる。

 県教委も連携して、ボランティアの成果が上がる仕組みを整えてほしい。今後も退職校 長をはじめ、教員OBや外部の人材をより積極的に活用する取り組みが欠かせない。