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きょうのコラム「時鐘」 2010年5月31日
煙の出ない、においを嗅(か)ぐたばこが先日、東京だけの地域限定で発売された。きょうは世界禁煙デー。この無煙たばこが禁煙ゾーンでどんな扱いを受けているのか知りたいところだ
現代人は清潔好きである。においに敏感な人も多い。煙は出なくても、においのするたばこは「遠慮願う」という場所が多いとも聞く。が、他人のにおいには敏感でも自分のにおいには気づかないのが嗅覚(きゅうかく)というもの。難しい問題が潜んでいるともいう 潔癖症だった文豪、泉鏡花は女性の美しさをたたえた作家だが「白粉を塗って垢をためるな」などと言い、髪油のにおいにもうるさかったという。半面、自分はたばこ好きで、ドテラを着てキセルを持って座る写真が有名。自分のたばこの煙とにおいには気が回らなかったに違いない 自戒を込めて言えば、他人に厳しく自分に甘い人間の身勝手さは昔も今も同じ。立場がかわれば同じことをする。どこかの政党のように、前者の失敗は責め立て、自分のミスはほっかぶり。だが、煙は消せてもにおいは消せない 煙にまいたつもりでも批判や責任論はきっちり後に残っている。 |