鳩山由紀夫総理の人柄については、誰一人悪くいう方はありません。また、私の昨年の補欠選挙でも総理としての公務が大変にお忙しい中で横浜駅西口にまで応援に来ていただきました。そういう意味では、大変お世話になった方です。
しかし、米軍普天間飛行場移設問題などをめぐって、鳩山総理ご自身の政治家としての資質に疑問を感じざるを得なくなりました。以下、簡潔に述べます。
まず第一に、安全保障に関する無知です。具体的には、「抑止力」について、これまでその重要性に気がつかなかったことがあげられます。
「昨年の衆院選当時は、海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった。学べば学ぶほど(海兵隊の各部隊が)連携し抑止力を維持していることが分かった」呆然とする発言です。もちろん、ずっと気がつかないままよりは遙かにましですが、このような状態では米軍の再編についても理解のしようもないはずで、自衛隊の最高指揮官としての内閣総理大臣としてはこの一点だけでも失格です。実に残念としかいいようがありません。
第二に、リーダーシップや根回しの欠如です。自民党政権の下では、各省庁間の利害の調整も含めてすべて官僚のお膳立てに乗っていればよかったので、政治家はなにもせずともただ与えられた紙を読んで発言をしていればよかったのです。この現象を自民党が優れていたなどと受け取って懐かしむ人々も多いようですが、その官僚から主導権を奪い取った民主党政権では、各の政治家のリーダーシップがあらわになります。
この問題でも、残念ながら拙劣さがめだちました。例えば、徳之島案自体、私自身はそれほど荒唐無稽な案ではないと思いますが、その案が公になる前に徳之島の3町長には密かに打診をしておくべきでしたでしょう。また、なんでもかんでもマスコミにしゃべる必要はないでしょう。話せないことは「まだお話しできません」といっておけばいいことです。「腹案、腹案」と連呼する必要はありませんでしたし、自分から「五月末決着」などと発言することも必要ありませんでした。内閣官房の役人をうまく使えばよかったのです。
この結果、連立政権にひびが入ってしまいました。社民党の離脱は、この夏の参議院選挙での一人区の帰趨に大きな影響を及ぼすことでしょう。沖縄の人々の感情を踏まえ、きちんと情理を尽くして根回しをすれば、この事態は防ぐことができたのではないでしょうか。
普天間の問題だけではありません。これは以前からの思いですが、鳩山総理ご自身の経済政策に対する理念を聞いたことがありません。以前のエントリーでも書きましたが、最近、またぞろ「理念なき財政再建」を目指す動きが党内でも出てきました。円高、失業や倒産で厳しい経済情勢が続いている中で、のうのうと消費税上げを議論することなど、財政再建至上主義に乗せられる愚かなことだと私は考えます。また同時に、デフレ脱却に対して根強く反発する勢力もそこかしこで暗躍しています。こうした中で普天間の問題では聞こえていた総理の肉声が聞こえません。これまでは「そんなことではダメだ」となんとかよい判断を下していただけるだろうと期待して、じっと待っていたのですが、その兆しすら見えません。参議院選挙も間近です。もう待てません。
外交は無知、根回しもできない、経済政策にも定見がない。厳しい表現ですが、これでは政治家に要求される能力のほとんどがないということではないでしょうか。
「一将功なりて万骨枯る」という言葉がありますが、このままでは参議院選挙はそれ以上のひどい結果になりそうです。総理は、無為無策のまま選挙に臨むという郵政解散選挙の轍を踏み、大勢の仲間たちが敗北することを座してみているだけなのでしょうか。それは昨年の総選挙でわれわれを支持してくださった大勢の国民の皆さんを裏切ることになることに気がついていらっしゃらないのでしょうか。
人間としては、決して総理を嫌いではありません。「いい方だなあ」と思うことが多いのです。それだけに、鳩山総理ご自身の勇気ある決断を心から願ってやみません。