チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[19175] 【ネタ】混ぜるな危険(ネギま転生後『零崎』に覚醒)
Name: メディカル◆4ddecee0 ID:f35d9209
Date: 2010/05/29 22:44


調整ミスって一回ピチュらせてしまいました。


大変申し訳ございません。


さらに、リアルがマジで忙しいので、具体的な更新の目処は立っておりません。

とりあえず再投稿して置かせていただきます。



[19175] 第一話
Name: メディカル◆4ddecee0 ID:f35d9209
Date: 2010/05/29 22:45
―――――――知識は最大の………なんだっけ?



☆☆☆☆☆


「………はァ?」


 とりあえず、状況が理解できない。



イヤ、理解はしている……それも違げェ。
疑問を感じるべき所がないのだから、理解も何もない。
いやいや、疑問は感じるべきではないのか。
だがしかし、これは当然のことだよな……?



「なんだ―――――おまeh?」

目の前にいる老人が驚愕した表情でこちらを凝視し、呟いた。


イヤ、こっちも混乱してるんだ。


「すまねェけどちょっと待ってくれィ。整理したい」


ちょっと整理してみよう。
俺は現在男子高校生であり、特別な力があるわけでも信じられない能力があるわけでもない。
いたって平々凡々黒目黒髪目立たないモブキャラである。
まあ、実は転生者だったりするのだがソレは今関係ない。


えーとだ。
先生に用事を頼まれ、帰るのが遅くなった俺は森の中にある近道を使おうとしたんだ。

前世の知識ではとある物語の中心であるココだが、おかしな行動さえしなけりゃ命に危険はないと認識していたからな。

その時に偶然10人程の人間が視界に入り、ココの学園の関係者じゃねェと思った時にそいつらの一人から襲われた。
だから、なんとなく襲ってきた奴からナイフを奪いかたっぱしから殺した。
ていうか現在進行形で殺ってる。



「別におかしいことはないよな………って、ちょっと待てィ!」

「た、助け、(ザシュ!!)ぎゃっ………!!」


オレは逆手に持ったナイフを袈裟懸けに振り切りながらツッコム。
おかしい。絶対おかしい。
考えてる今の状況もおかしい。
さっきの老人はオレに質問した瞬間、血だまりに沈んでるし。


いや、おかしくはねェだろィ。



なぜ殺した。
アン?なぜ殺さねェ。


殺すのはおかしいだろう。
はて、殺さないのはおかしくねェんだっけ。



いや、待て待て。おかしい。。
なんだァ。何か、分からないことでもあるか。



分からないことだらけだ。いや、重要なことがわからない。
分かりきってんだろォが。別にそれは重要なことでもねェし。




………俺は今何をやってる?



――――見りゃ解るだろ、人殺しやってんだぜオレァ。



「なるほどォ………どうやらオレは人殺しィらしいぜ」


自分でも意味不明だが、実感として沸いた言葉を俺は気負いもなく口にした。
いつのまにかオレの後ろに血の池が出来ていた。


前を見ると、10メートル程先にいかにも魔法使いな奴が目に入ってくる。
どうやら最後の一人らしい。



「え?………え?うあ”……うわああああああ!!!!」
現状を認識したかそいつはオレに向かって光る矢を撃ってきた。

おお!これが魔法の矢かァ!
マンガでは見てたが実際には始めて見たぜ!

オレはその魔法がオレに向かって来ることなど、どうでもいいようにそんな感想を抱いた。



それは完全に致命の一撃であり、普段のオレだったならば確実に死んでいたはずだった。
だがオレの身体は何故か動き、いつも考えていたように。いや、つねに考えていたように。
すべての矢を避け、操られてこちらに向いた矢を相殺させ、そしてオレの投げたナイフが相手の喉に突き刺さっていた。



「そして誰もいなくなった………ってかァ?笑えねェ」



死体と血だまりを見る。
特に何の感慨も沸かない。
別に殺したかったわけでもない。
ただ殺しただけ。



「なんだろうなァ……自分がおかしいっつうことは把握してんだが、それをおかしいとは思わねェ」


ナイフを回収しながら、そんなことを一人ごちる。
気が触れる前兆なんてなかったんだけどねィ。
まあ、精神の異常は自分でわからないって言うしなァ。





これじゃまるで零崎………それだァ!!




オレの中でパズルがはまった。


そうだ零崎!
オレの脳で前世の本の情報が検索される。



零崎一賊。
最も忌み嫌われる殺人鬼集団。
あるいはこの世で最も敵に回すのを忌避される醜悪な軍隊。
またはこの世で最も味方に回すのを忌避される最悪な群体。
邪悪と冒涜。

理由なく殺す《殺人鬼》。



悪意や害意はなく、理屈もなく。
ただなんとなく、あるいは当然のこととして。


ただ、殺す。



なるほどねェ。

確か、今まで一般人として暮らしていた奴が、ある日突然零崎の血に目覚めるということも書いてあったなァ。


納得。納得。
どォりでねェ。

やっと違和感の正体がわかったぜ。




ただ単純に――――――異常が正常に感じたのか。
例えば、奴等の一人からナイフを取り上げた時。
例えば、そのナイフを返し驚愕する奴等に向けた時。
例えば、首筋に刃を突き立てる瞬間。

それが当たり前だと思った。
それが呼吸をするように。
特に意識も意思もなく。
さも当然の事だとオレは把握していた。
それを、その行為を、オレの脳は正常だと認識した。

無論それが強大に狂大に凶大にイカれてる事もわかってはいるのだが………なるほどねェ。



確かにこりゃ説明できないわ。

つうことはァ………


「すまん。ついなんとなく殺しちまったァ。でもオレごときに殺されるのも悪いと思う。魔法障壁とかあるんじゃねェの?」


オレは無茶苦茶な論理を呟く。
というか、魔法使いの一人が持っていたナイフなのだから魔法障壁対策ぐらいやっているだろという結論はすでにでている。
だが、そのどうしようもない考えを何故だかオレは―――――意外に一興だと思った。


「……いやあ、やっぱり狂ったねェオレ」


これからどうしようかね。
普通ならこんな状況になったら絶望するが、オレが零崎になったせいなのか、それとも元々の性格なのか、オレは特に焦ったりはしていなかった。


前世の知識によって導き出したものと言えば、非常に危うくはあるものの、敵対行動をとらない者に対しての殺人は自重できるという結論だった。

つうことは警察に出頭したら手錠とか相応のことはされるわけだからァ。
オレにはそれを敵対行動だと認識しないのは………無理だな。


「まあ、ゆっくり考えるかねィ」



オレは血まみれのナイフを死体の服で拭うと寮へ向かって歩き出した。



――――――――――――オレの服には、一滴の血も付いていなかった。









―あとがき―
発作が、発作がきたんです!

主人公が転生者で、この世界がマンガの世界であることを知っていれば、魔法使いや剣士の殺し方を考えていた零崎になるんじゃね?という発作的思い付き。


原作知識+零崎+魔法=混ぜるな危険








[19175] 第二話
Name: メディカル◆4ddecee0 ID:f35d9209
Date: 2010/05/29 22:47
自分があるものに影響を与えた事に気づかないとき。

その影響の結果を知ることはおすすめしない。

気づいた時には、どうしようもなく終わっているから。




☆☆☆☆☆


「おお。都会だァ」


電車で来た。
都会へ来た。
忌々しいほど賑わってる。


しかし、人ゴミがうっとうしいな。
ついうっかり殺しちまいそうだ。
イヤ、比喩じゃなくマジでうっかりに。


日曜。
チェックのシャツとジーンズを着込み、伊達メガネを装着したオレは都心へと来ていた。




さてさて。
昨日、罪の意識を微塵も感じることなく、寝ながら思考した結果。


―――――――目立たない。そうすりゃまあ、なるようになるだろ。ケェセラセェラァ。



という結論が出た。
まあ、なんの解決でもないどころか終わっている結論ではある。
が、オレはもうすでに人間として終わっているので問題はない。


こう言うと誤解されそうだから言っとくが、オレは自分から死ぬ気はゼロだ。
まだ読んでない小説やらマンガやら、やってないゲームがあるし、アニメも見たい。
映画も見たいし。
ニ〇ニ〇動画もあるんだぜこの世界には。



ゆえにオレは普通の人間だった頃の目標と同じように、ひっそりと人生いや、この場合は鬼生?を目指そうと思う。




ああ。
ちなみにこの世界にオレの他に零崎いるのかねェ?と思い、
知っている限りの戯言シリーズに関係しているワードをパソコンで検索してみたがこれっぽっちもヒットしなかった。
どうやらオレ以外に零崎はいないと思ったほうがいいみてェだ。



ん?つまりこの世界じゃオレは初めて零崎姓を名乗るんだろうか?
…………全然嬉しくねェなオイ。
もし、そうだったら下の名前を自分で考えないといけないな。
まあ、考えとくかねィ。


おっと話がずれた。じゃなくて、あァと。





閑話休題《それはさておき》







つまりは。
平々凡々目立たない一般常識に溢れる常識人から。
平々凡々目立たない一般常識に溢れる殺人鬼に。
ジョブチェンジしようじゃねェか!という訳。


………ツッコミどころが満載なのは気のせいだぜィ?



そこで今回、殺人を自重する特訓として。
いつでも人が殺せる状態で、人を殺さず買い物をしようと思います!!



……いやいや誤解すんなよ。
オレは常識的な殺人鬼だぜィ。
ナイフは昨日持って帰ってきた一つしか持ってきてねェよ。
どこぞの人間失格みたいに異常な量は持ってない。
しかも万が一殺っちまった場合に備えて、いつもは着ない服を着て変装した。



よし。ミッション確認。
現在の時刻は自宅で寝過ごした結果、時刻は夕方。
買う物はラノベ。
目的地はパソコンで調べた所によると駅から歩いて10分の本屋。



という訳で出ぱ「ちょっとニイちゃん。こっち来てくんない」


………ン?
後ろを見ると、5人くらいのいかにも柄と頭の悪そうな不良君達がにやにやしながらこちらを見ていた。


「………………遠慮するぜィ」
逃げようとしたら肩を捕まれて阻まれる。


「まあ、いいじゃん。ちょっとアッチに行こうぜ」
そう言って不良Aは、少し見ただけじゃ解りにくい路地裏を指差す。


……………まあオレの見た目は弱そうだからねェ。
いつものオレだったらそもそも治安の悪そうな所や都会に近づかないよう気をつけてるからなァ。
始めてだぜこんなこと。
大声を上げるか、本気で逃げれば普通に大丈夫だけど………………まあ、ね。




こういうのも、一興かねェ?




「………わかった」
オレはできる限り恐怖を感じてる表情で言う。


「くっ。そうだよな」

不良君達はにやにや笑う。


不良君達と一緒に路地裏に入る。

そしてオレはクルンと後ろを向き、こいつらのアホ面を見ながら。哂いながら。


「訓練を始める前にィ。余興に一つ―――――――零崎を、始めよう」


旋律するように。
歌うように。
宣告した。











☆☆☆☆☆



…………いきなりやってしまった。


オレは現場からダッシュで逃走し、大通りの途中にあったベンチで頭を抱えた。


なにが訓練を始める前だよ、もう始まってるよ!
しかも、場所が場所だから長居はできず走ることに。
こうなることはわかっていたのに、ついつい殺してしまった。



うう。
服も変えるはめになっちまった。
出費が痛てェ。
不良君達、全然もっていないしィ。
返り血を浴びたわけではないのだが、オレが路地に入った所を見てた奴がいる可能性を捨てきれないためである。
見られてた感覚はないのだが、念のため。


うん。ここは常識的な考え方だ。
内容は異常以外の何物でもないけど。



今のオレの服装はすぐ近くの店のセールで買った、白いワイシャツに黒いベストとスラックス―――
―――つまるところバーテンダーみたいな服―――――を着ている。
メガネは付けたままだ。



ハァ。ついに合計15人になってしまった。
これでオレも立派な連続殺人犯にレベルアップだぜ。
………くだらねェし、笑えねェ。


「あの………大丈夫ですかー?」


頭を抱えていたオレに女の子の声がかけられる。
顔を上げてみると、ピンクっぽい髪を小さいツインテールにした女の子がいた。


「具合が悪いんですか?」


どうやら心配してくれているらしい。
なんていい娘なんだ。
荒んだ心が癒されるぜ。


「イヤ。大丈夫。ほんの少しばかり疲れただけェ…………あ」

「え?どーしたんですか?」

「道がわからねェ…………」

「ええ!?」


基本的に買い物はネットで済ませる都会に不慣れなオレは、走って逃げたため目的地の本屋がわからなくなっていた。











☆☆☆☆☆



さて、あの後。
この女の子が嬉しいことに道を案内してくれたため目的の本を買えたオレは、訓練ついでに恩返しとしてにこの女の子を送ることにした。


そのシーン。


「ありがてェな。案内してもらっちまって」

「大丈夫だよ。これくらい」

「しかも、オレに声かけてくれたし」

「すごいびっくりしたんだよー。頭抱え込んでたからね」

「それは忘れてくれ…………そうだ、恩返しさせてくれねェ?」

「いや、いいよ!気にしないで!」

「イヤイヤ、それじゃオレの気が済まねェ。そうだねェ………見たところ、お前も麻帆良の生徒だろ?」

「そうだけど………」

「なら、寮まで送らせてくれねェ?」

「えと………ナンパ?」

「なんでだよ!」

「いや、送りオオカミかなって」

「確かにそう捉えられなくもねェが人の善意に向かってテメェ………」

「えへへ。ごめん」

「んでェ、ダメか?いいか?」

「いや、ホントに大丈夫だよ?」

「コレがダメならオレにはもう血生臭い方法でしか恩返しできねェ………!」

「こわっ!!………えと、恩返ししないっていうのは………?」

「…………(じっィ)」
オレは女の子を見つめた。

「…………お願いします」

「よし!解ったぜェ」

「あははは………。あ、そうだ!自己紹介するの忘れてたね」

「ん?あァ、そう言えば………」

「私、佐々木まき絵!明日新学期の中学3年だよ!君は?」

「……………!!」

なっ…………!!
原作キャラかコイツ!!
やべ。
確かにオレは殺人鬼になったけど、面倒臭いことには巻き込まれたくねェ!!
ここは………………。
オレはできる限り冷静に平静に返答した。


「オレか?オレは零崎。昨日新学期が終わった高校生2年だァ」

「下の名前は?」

「秘密だ」

「ええ!?なんでー!?」

「いや、なんとなく」

「なんとなく!?」

「おいおい。『なんとなく』を舐めんじゃねェぞ。世の中にはなァ。『なんとなく』することを生き様にしてる奴等もいるんだぞ」
零崎みたいな、な。

零崎の殺しは。
快楽で人を殺すでもなく。
仕事で人を殺すでもなく。
趣味で人を殺すでもなく。
生き様で人を殺すらしいぜ?

「へーそうなんだー。………て、良いことっぽいセリフ言って誤魔化そうとしてない!?」

「ちっ、ばれたか。まあ後で教えてやるよ」

「なんで今言わないの?」






「なんでってテメェ―――――――――――そういうのも、一興だろう?」






シーン終了。




後は適当にだべっているウチに桜通りに到着した。。
ちなみに話してた内容は。
好きな本の話やら、駅前で警察と救急車が来てたのは何でだろうとか、新体操の話とか、互いの服の話とか、そういうのである。



「ここまででいいよー。ありがとね」


桜通りの入り口でまき絵が言った。
まあ、ここまで来りゃいいか。


「ああ。こっちもありがとな。でもここってなんか出るんじゃなかったけ?」

「えー?吸血鬼の話?そんなのいるはずないじゃん」

「いやいや、わかんねェよ?血を吸うかはともかく鬼はいるかもしれん」
まあ、オレがそうなんだけどな。


それはともかく。



「大丈夫だって。あ!そうだ!名前「その前にな」ん?」



「テメェ―――――なんで、そわそわしてたんだ?」


そうなのだ。
オレ達が自己紹介をしあった時。
そこからずっと、こいつはそわそわしていた。
まるで、なにかが気になるように。



空気が凍る。


「……………」
「……………」

オレ達は互いに見詰め合う。



もしかしたら、こいつは駅前のあの現場の事に気づいたのか?
もしかしたら、オレが持つエモノのことに気づいたのか?
もしかしたら、こいつはオレが数十分に一回うっかり殺しそうになってるのに気づいたのか?


もし、そうなら―――――――――



「えっとね………」

「………ああ」



「一興って――――――――どういう意味?」

「…………はァ?」

「だからさっき零崎くんが一興だろって言ってたけど、良く解らなかったの!」

「…………」


…………脱力した。
どうやら言葉の意味が解らなかっただけらしい。
そうか。
確かこいつバカレンジャーだったっけ。



「すぐに聞けよ………はァ」

「あー!なんでため息つくの!」

「テメェは聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥という諺を知らねェのかよ」

「知ってるよそれくらい!」

「だったら脳に刻み付けて、生かすよォに」

「………はーい」

「一興の意味はな、ちょっとした遊びって意味だ。ちなみに余興っつのは盛り立てるための芸とかそんなんを指すんだぜ」

「へー。よく知ってるね」

「いやァ、オレがよく使う言葉なだけだ」

「ふーん。一興………一興………」

オレが教えると、言葉を繰り返し始めた。
どうやら覚えようとしているらしい。

ふゥん。
イッキョウ、いっきょう、一興ねェ……………。



――――――――――『興』



「あァ、そうか。それがあったな」

「……一興………え?なに?」

「いや、なんでもねェ。ありがとよ―――――――本当に」

「?うん………?あ、覚えたから名前教えてー!」

「おう、しっかり聞いてけよ」





この名前を聞くのはお前が世界で始めてだからねェ。






「――――――興識。零崎興識(ぜろざき こうしき)だ」

「こうしき?」

「おう。興奮の興に知識の識とかいて興識」

「へー。面白い名前だねー」

「そうだろォ?」





実に傑作で戯言だけど――――――こういう名前も一興だ。

この瞬間に、オレは他人の認識でも、正式な零崎になった。




「じゃあよろしくね!零崎………ううん。コウくん!」

「コ、コウくん?」

「ダメかな?」

「いいや、別に。まあよろしく?」

「うん!」



握手。
なんか仲良くなってしまった。



ま、まあそんなに深く関わらないようにして。

殺さないようにすれば大丈夫か。



「じゃあねー!」

握手し終わると、まき絵は桜通りの方向に手を振りながら走っていった。





だからオレはこう返す。


「いいかァ!!鬼には気をつけろよォ!!」





吸血鬼にも―――――――殺人鬼にもなァ。





―――――――――――――オレは返答を聞かず、背を向けて帰った。














―あとがき―
つづきを書いてみた。
主人公はぱっと見、目立たない=弱っちそう。
こういうキャラ書くのかなり楽しい



[19175] 第三話
Name: メディカル◆4ddecee0 ID:f35d9209
Date: 2010/05/29 22:48






好奇心は猫をも殺す。
人間なんて言わずもがなだ。








☆☆☆☆☆☆



放課後。
一度寮に帰り、昨日着てたバーテンダー服+伊達メガネに着替えたオレは図書館島に来ていた。



どうも皆さんこんにちは。
愉快に素敵に常識的な殺人鬼、零崎興識です。
本日はお日柄もよく、晴天です。
現在放課後ですが、学友達も楽しく学校生活を送っているようです。


が。


殺人鬼にゃァ、ちと疲れる。
何故かと言うとだ。
体中に意識を回してないと、特に何も考えていないと、すれ違う人や通りすがる人を、なんとなく殺しそうになっちまってんだよ。
だが、オレは零崎になったとはいえ、一般常識に溢れる人殺しなので、しっかりと我慢している。
そのため、微妙な疲労が溜まってきているのだ。


あ、勿論武器は持って来てないぞ。
でもなァ。
学校は、ちょうど喉が掻き切れそうなハサミとか、頭がキレイに割れそうなトンカチとか、目から脳に貫通しそうな鉛筆とか。
そんな殺人鬼に魅力的な品物のオンパレェドなんだぜ?




昨日の特訓で少しは抑えられるようになったとは言え、まだまだだな。
もっと頑張るかァ。






それはさておき。
さてさて。
なぜここに来たかというとだ。


殺人の自重特訓のついでに、調べたいモノがあるのだ。



その名も『D.L.L.Rシンドローム』
ネットには基本しか乗っていなかった。
それを図書館島で調べようと思い立ったのだ。
世界最大規模の図書館らしいし、調べる価値はあるだろう。
見つかる可能性はかなり低いが。
もしかしたら、症例――――つまりは、家賊の可能性を持っている奴の情報があるかもしれん。




何回も言ってるが手ぶらだ。
オレは学校の関係者に手ェ出すつもりはないんだからさ。



図書館の中に入る。


「デカっ!!」

初めて入ったがホントにデケェ!!
スゲー!



あ。
物凄い利用者に睨まれている。



「あははは………サーセン」

図書館ではお静かにね。常識的に考えて。





オレは壁に立てかけてある館内案内図で行き先を確認すると、ゆっくり目的地へ歩き始めた。






しっかし、良い所だなァ、ココ。
原作見てた限りじゃ、どこのテーマパークだよ、っと思ってたんだが。


一階の部分はまとも、それどころかとても静かだ。
日差しが暖かく降り注ぎ、荘厳な雰囲気が心地よい。
紙の匂いが心を落ち着ける。


ここで本をゆっくり読むのも、一興かもしれないな。




っとォ。着いた着いた。


【哲学・精神エリア】


たぶんあるとしたら、ここにあると思う。
早速、探すとしますか。






~~~~~興識君探索中~~~~~~~







………………ハッケェェェェェン!!!!
発見したぜ!マジであるとは思わなかった!


見つけた本は棚の一番上にあった。
だが、ジャンプして取るのはマナー違反。



台座、もしくは梯子はどこだ?
オレは辺りを見回す。



台座を見つけた、が。
そこには幼児体系、失礼、ロリ体系な中学の制服を着た女の子が座って本を読んでいた。


オレはすぐに声をかける。


「アァ、失礼。本を取りたいんで、台座貸してくれねェか?」

「………あ。ごめんなさいです」

「んにゃァ、ありがとよ」


台座を借りたオレは早速本を取る。


『D.L.L.Rシンドロームについて』
うん。どストレートな題名だ。



「マジであるとは…………世の中わからんモノだな」

「……D.L.L.Rシンドローム………?」


ん?
横を見るとさっき台座に座っていた彼女が本の題名を覗き込んでいた。
見つかってほんの少しばかり興が乗ったオレは、話しかけてみる。


「まあ、知らないのも当然だな。一般にはほとんど広まってねェし」

「なるほど。なんなんですか、ソレ?」

向こうも乗ってきた。



「まあ、簡単に言うと精神病の最高度(ハイエンド)だ。
悪意や害意はなく、理由や理屈はなく。ただなんとなく、あるいは当然のこととして、他人を傷付けあるいは殺してしまう病だ。
症例はほとんどないらしくてな、また性質として症状の虚実も判別がつけられねェからよ、実在すら疑われてんだよ」

確か本じゃ、零崎がこの病気の症例者なんじゃねェか、とか言ってた気がする。


「つまり………例えるなら、息をするように傷つけるってことですか?」

「オオ。一発の説明でそこまで解ったか」

「いえ、感覚で言ってみただけです。もう少し詳しくお願いします。興味があるです」

「おう、いいぞ。そうさねェ………この症例者を、あえて言うなら殺人鬼、かな?」

「どういうことですか?」


「まあ、言葉通りだ。殺人鬼。彼は………まぁ別に彼女でもいいが、彼は人を殺したくて殺しているんじゃない。
殺人鬼なのでその存在理由によって人を殺す。それはもう彼にはどうしようも無い事で、殺すとか殺さないとかじゃねェ。
彼には殺すしかない。そこには、意味も、理屈も、感情も、全てがない。ほら、殺人鬼だろ?」

「なるほど。そう考えればそうです。私のイメージだと殺人鬼というのは快楽殺人者だと思ってました」

「イヤイヤ、気持ちいいから、その行動をする。
殺したいから、殺す。
それは確かに異常だがァ、しかし紛れもなく正常だ。
やりたいから、やる。それは理屈が通ってる。だから、それはギリギリ人間だ」



なんかもっと興が乗ってきた。
もうこうなったら、戯言っぽく言ってみよう。



「しかし、ただ、殺すならどうだ?
理由もなく。意思もなく。
衝動もなく。根拠もなく。
ただ結果として、殺すのならば。
それは異常なようで、そして紛れもなく異常。
有り得るはずのない、理屈として存在しない、理屈の存在しない最悪な道理」


くは。とオレは笑い。


「それはもう人間じゃねェよ。鬼だ。いや、鬼より劣悪なナニカだ」

「でも、症例者はいないかも知れないんでしょう?」

「ああ。だが、もしかしたらいるかも知れないだろォ?」

「いるかいないかもわからないモノに怖がっても意味無いです」


………別に怖がらせるつもりで言ったんじゃないんだけどな。
後、目の前に居るぞ。殺人鬼っぽい奴なら。


「なんだ?意外と淡白な反応だなァおい」

「私は自分の目で見ないと信じないタチなんです。でも、教えてくれてありがとうございます」

「いや、どういたしまして。………自分の目で見る、か。いい心がけだとは思うがオススメはしねェぞ」

「なぜですか?」

「世の中にゃァ知らない方がいいこともあるんだよ」


ぴくっ。
彼女が反応した。
ん?


「………それは、気になっても調べるな、ということですか」

「いや、そこまでは言ってねェよ。命の危険やらなにやらがあるなら自重しろってこと」


話しながら戸惑う。
な、なんだ?この圧力は?

彼女はあくまで、ローテンションに話す。


「いえ、それはちょっと聞き捨てならないです。知的好奇心を満たそうとすることは、決して間違いなんかじゃないですよ」

「イヤイヤ、命あっての物種だろう?その考えは美しいが、安全の面から見れば正しくはないぜ」

「いえいえ。リスクがあってでも知ろうとするのは、人間の本質ですよ」

「イヤイヤイヤ。これは受け売りなんだがねェ。忘れてはいけない。
死にたくないのなら、『当然』という二文字から、『普通』という二文字から、決してはみ出しちゃいけねェんだよ」
零崎双識の言葉だ。

「いえいえいえ。アインシュタイン曰く、大切なのは、問うのをやめないことだそうです」


なぜか白熱するオレら。
いや、なんか興が乗りに乗ってきた。


「じゃあ例えばです」

「うん?」

「あなたは男性ですから…………ここに、あなた好みの女の子が居るとしましょう」

「ほう。面白ェじゃん」


ちなみにオレの好みは年下だ。


「あなたはその子の事を全然知りません。どうするですか?」

「まあ、話しかけるかァ?常識的に考えて」



彼女は手をクロスさせる。


「バツです。その子はとても性格が悪く、あなたはひどい目に合わされます」

「ええ!!なんだそりゃァ!?つか、そうわかったなら逃げるだろ!?」

「しかし あなたは まわりこまれてしまった」

「こわァ!!なんかとんでもねェ悪女を想像しちまった!!」
毒蜘蛛的なイメージの!!

「ほら、きちんと調べないからこんなことになるです」

「例えがなんかえげつねェ!!」

「でも、ありそうですよね」

「………まあ、否定はできん」

「そうです。どうせ我慢できなくなって関わってしまうんですから、最初に知っておいて、それの基本を把握する。
興味がわいたなら、対策を考えてより深く探っていく。それが探求者の一つの形だと思うです」


カッコイイな言い方が。
だが。


「ほうほう。なるほど。理解できるし、納得もするな。だが、ちと甘ェ」

「………どこがですか?」

「考えが及びもつかないモノに対してはどうすんだ?」

「?どういうことですか?」

「例えば、さっきの殺人鬼の話だ。お前は彼が殺人鬼であることを知らない。だが、お前は彼が気になるとする。
そしてさっきの言い分なら、彼に関わる前に調査するだろォ?だが、そいつは殺人鬼だから彼を本当の意味で知ってる人間なんか居ねェ。
知った奴は死ぬからな。
故に誤った情報に踊らされる。やれ、善人だ。やれ、気が回るだ。
そしてお前は近づいてェ………」


オレは右手の親指で首を切る動作をする。


「デッドエンドォになっちまうかも?」

「それこそ特殊な例ですよ。さっきも言いましたがそんな、窮屈なまでの殺人鬼が近くにいるなんて。
魔法やら超科学があると言われた方がまだ説得力があるです」


彼女の言葉につい、頬が緩んだ。


「傑作なことにあるかもよォ?」

「たわ言はいいです」

「ああ、いや、それをいうならザレゴトって言った方がいいな」

「戯言………ですか?」

「おう」

「戯言です………いいですね。今度から使ってみるです」

「くははは。そういうのも一興だなァ」




オレは笑い。
彼女は笑わなかった。


まあ。
ここまでやったらこう描写しないとねィ。














☆☆☆☆☆☆


さて、あの後すぐ。


「もう、夕映。おそいで~」


そんな声がオレと話していた彼女にかけられた。
声がしたほうを見てみると、おっとりした大和撫子風の女の子がいた。


「ああ、すいません。つい話し込んでしまいましたです」



「……………」

……………途中から原作キャラって気づいてたよ。
でもよ。何回も言ってるが興が乗っちまってなァ。


ハァ。
もう、いいや。
本筋に関わらないように気をつければいいか。
つか、キャラの名前と本筋しか覚えてねェし。


おっとりした女の子がこちらを向く。


「どうも~。近衛このかいいます」


片手を軽く挙げ、応じる。


「あ。そういえば名前を聞いていなかったです」

「そうだな……………」

「なんでそんな疲れた顔してるですか?」

「気のせいだろォ。………オレの名前か」


まあ、この格好してるし。


「零崎興識だ。興奮の興に知識の識とかいて興識」

「そうですか。私は綾瀬夕映です。よろしく、興識さん」

「…………オーケー。よろしく」


よろしくされたな。
いや、夕映みたいな女の子と仲良くなるのって嬉しい、嬉しいんですけどねェ………。

ハァ。
この世に神も仏もあるモノかァ。
いや、もしかしたら神様がいるから殺人鬼に罰を与えてんのかもねェ………。
ファンタジー乙。
あ、ファンタジーか、この世界。


「じゃ、行こか。みんな待っとるよ」

「何してたんだァ?」


気になったので聞いて見る。
確かコイツ、台座の上で本を読んでたから、本棚の整理か何かか?


「いやな、友達と一緒に勉強してたんよ」


……………。

「……………あァ、コイ「興識さん。今日は結構楽しかったです」あ、ああ」

「だから、お礼をさせて欲しいのでついて来てください」


有無を言わせない口調で夕映が言う。
オレは袖をつかまれ、ついていく。


「このかさん。この方にお礼をしたらすぐ行くですから」


このかは、なぜかにこにこしながら返す。


「わかったわ。ごゆっくり~」

「はい」



角を曲がり、このかが見えなくなった時にオレは呆れたように聞いてみた。


「サボってたのかァ?」

「違うです。お手洗いに行って戻ろうとしたら、気になる本が目に入ったので………」

歩きながら夕映は言った。


「つい読み込んじまった、と」

「うっ………黙ってくださいです」

「まあ、いいけどよォ」

それくらいなら別にィ。


「ここです」

木でできた扉の前で夕映がオレに言った。


「あァ?なにが?」

「お礼です」

「ありィ?方便じゃねェの?」

「いえ、違いますよ。本当に楽しかったです。まあ、黙ってくれるお礼も含まれてるですが」

「ああ、賄賂か」

「人聞きが悪い言い方しないでください」


そんな事を話しながら扉に入る。


中は結構広い。
だが、そんなことより気になったのが…………。


「………引き出しがびっしりだな」

「図書館探検部の倉庫です。この引き出しには探検用具が仕舞われているですが………」


奥のほうに夕映が入って行くのでついて行く。


夕映はある一角を指し。

「ここは、まったく使われない、もしくは捨てる寸前の備品があるです」

「はァ。それで?」

「ここにあるのは部員が好きなように処分できるので………どうぞ。好きなものを持っていって下さいです」

「………………なんか、いいように使われてねェ?オレ」

「互いに利点があるから問題ないです」

「まあ、いいけどさァ。貰えるモンは貰っとくわ」


適当に引き出しを開ける。


「………エロ本?」

「~~~~!!!」

夕映は全力で閉めた。


「なにか見ましたか?」

「………いんにゃ別に。男子部員もいるんだな」

「ええ。活動時間は違いますが」


オレは別の引き出しを開ける。


「…………ナイフ?」

びっしりとナイフが入っていた。
しかも全然さびていない。


「ああ、それはペーパーナイフです。部員は必ず一つは持ってるです」

「なぜに?」

「かなり便利ですよ。手紙を開けたりするのに」

「ふゥん」

まあ、文学系だから、か?


「前の部員達が忘れるのを繰り返して、溜まっていったのがこれです」



オレは無言でペーパーナイフを右手で取り、眺める。


ほう、かなり素敵な細工じゃねェか。
紳士が使うアイテムだなこりゃ。
かっこいいな――――――――――――――――!!!!!????


バタン!!!!


意識をナイフに集中しかけ、ソレに気づいたのと、扉が蹴破られたのは同時だった。



「夕映殿!!!」

「大丈夫アルか!!?」

蹴破った二人―――――忍者っぽい娘とカンフー娘が夕映の前に立つ。


「な、なんですか!?」

困惑している夕映。


「スゴイ寒気が扉の向こうからしたアル」

「寒気、ですか?」

「うむ。拙者も感じたのでござる。だが、今は何も感じない。おかしいでござるな」

「って、扉の前にいたんですか!?」

「あ………いや、違うアルよ?」

「このか殿から教えてもらい、皆で聞いていたわけではないでござるよ?」

「聞いてたんじゃないですかー!?」


そんな風に言い合う彼女らを横目にオレは、ペーパーナイフを持てるだけ一掴みし、持っていたカバンに入れる。


「んじゃ。綾瀬ェ。これ貰っとくわァ」

「え?もう行くんですか?」







「ああ。じゃ、縁が合ったら、また会おう」




オレは急ぎ足で扉から出た。

その時に、オッドアイなツインテールを見て。
コウくん、なんて言われた気がしたが、反応する余裕はなかった。
………バカレンジャー全員で勉強してたのか。












☆☆☆☆☆☆


オレは木陰で一息ついた。


「っち。オレもまだまだだな」



そんなことを独りごちる。


あの時。
一瞬だけ体から意識を外したオレは。
いや、正確にはオレの左手が。
気づいた時には、ペーパーナイフ3本を器用な事に指の間に挟んでいた。


危なかった。
後気づくのが3秒遅れていたら、殺していた。
まあ、あの武闘派娘達が突っ込んでくる前に気づけているのだから進歩はしているのか?


しかしすごいなあの二人。
零崎の殺意とも呼べない殺意に反応するなんて。
まあ、殺意だとは気づいていなかったみたいだが。
さすが原作キャラ補正。
まあ、純粋に修練の賜物だとは思うけどね。



オレはカバンの中を覗き込む。


30本はあるな。
オレって半端ないな。
片手で30本持つって。
さすが殺人鬼、ナイフの扱いもうまくなってきてる。

………自画自賛にもなりゃしねェ。



「おっと。そういえば」



零崎の強さの秘密のひとつ。
自分の体ができる、最大限の理想効率動作を本能的にできる。を使い、ほぼ最短時間で借りた本をみる。
殺人鬼の才能の有効活用だぜ。


本日の収穫を確認。


ぱらぱらぱらぱらぱら。
…………ぱたん。


「症例者の名前が書いてねェ………!!」


ただ、くだくだと症例についての考察しかない!
無駄足かよ!!


「帰るか…………」



なんか、今日は疲れた。
もう帰って、寝る。






―――――――――――オレは肩を落として帰った。











ーあとがきー
主人公は ペーパーナイフを 手に入れた。



[19175] 第四話
Name: メディカル◆4ddecee0 ID:f35d9209
Date: 2010/05/29 22:49

腹が減っては我慢ができぬ。



☆☆☆☆☆☆☆


どォも皆さん。
前世現世含め、あまり女の子と知り合いになれない零崎興識です。
肉体年齢17の青春真っ盛りなんだけど…………。
精神年齢が『禁則事項』なのがダメなのかねェ?
後、オタが少々入ってる所かァ?

まあ、んなことは置いておいて。


図書館から帰ってきたオレはその服のままベットに倒れ込んで爆睡してい『た』。
なぜ過去形かというと。


「腹減ったなァ…………」


………なんつゥかこれに尽きる。


冷蔵庫の中身?カラさ。
食材がなかったからスーパーにでも寄ろうと思ってたのにすっかり忘れていた。
疲れてんのに腹が減り過ぎて寝れん。
この時間じゃ食堂棟も開いてねェし。


「……………仕方ない。コンビニでも行くか」



着替える必要はないな。
んじゃァ出発、でっぱつゥ。











☆☆☆☆☆



道中特に何事もなく学校近くのコンビニに到着。
適当におにぎりとお茶を選択。
コンビニの兄チャンの所で購入。




結構オレがする頻度が多いこの動作、たったこれだけの動作なのに。
空腹我慢に眠気我慢に殺人我慢の3コンボがオレに疲労を蓄積させる。



コンビニを出て、やっとオレは気を抜いた。
抜いたのだ。



「あ"ァ………なんかぼんやりするゥ………」



早く帰ろう。
左手にレジ袋を持ったオレは足を急がせ――――――――――――虚空に手を突き出し、握り絞めた。


「ん…………?」


なにやってんだオレは?
オレは少し疑問に感じたと思ったが、特におかしなことはないので歩き始めて――――――――――今度は上段蹴りを放った。



「……………あァ?」


アレ?こっちは寮じゃねェぞ?
なんでこっちに歩いたんだ?
イヤ待てそれよりも…………なんでオレは攻撃してんだ?


今度は体をバネのように縮め、前方に飛び出し、心臓に肘打ち……………ん?心臓?




「……………」


おかしい。これはおかしい。
なんでオレは誰も居ない空間に向かって『殺』そうとしてんだ?
そして―――――――――『なに』かがいると確信してる?
気配なんか微塵もしねェのに。



オレは『なに』かを追いかけながら、それを凝視した。


ぼんやり。
ぼんやりと――――――――――――人の形が見え「きゃああああ!!!!!助けてください!!!!」


「うお!!耳がァ!!」


意識した瞬間、女の子の絶叫がいきなり耳に入ってきた。


オレが現在進行形で追いかけてる『なに』かは―――――肩の上辺りに、蒼白い火の玉が二つばかり浮かんでる、いかにもな女の子だった。




「あァ………ちょっとそこn「いや~!!こ~ろ~さ~れ~る~!!」

「……………いや、死んでんじゃねェか?テメェは?」


どうみても幽霊なんだが。
足もないし。


「………あ、忘れてました」

「おいおい…………」

「でも、襲われて怖いんです!!」

「すまん。わざとじゃないんだ。気を抜いたらつい」

「なんですかソレ!?…………………って、え?」



街灯の光の下で、と女の子は急停止した。
それに合わせてオレも一メートルほど離れて止まる。


ゆっくりと女の子は振り向き、オレと眼が合った。



「………………」
「………………」

互いに沈黙。


「あの………私、見えてます?」

「ばっちり」


「………………」
「………………」

また沈黙。


数秒の後、なぜか彼女が泣きだした………ってはい?


「あ、あの私どうすればいいんでしょうか?」

「はァ?」

「お話できることを喜べばいいのか、お話できても襲われるから怖がればいいのか」

「あ、あァ……襲ったのはオレの体質による事故みたいなモンだ。もう襲わねェよ」

「ほ、本当ですか?」


上目遣いに見てくる幽霊な女の子。



「ていうかオレはお前に触れられないから怖がる必要ねェだろ」


頭に触ろうとしたら手がすり抜ける。


「ほらな?大丈夫だろ。安心してくれ」

オレは安心させるようにできる限り微笑んだ。


「そ、そうですか…………」


女の子が急にぶつぶつ言い始めた。
「えと………どうしましょう?」とか「ここで仲良く……でもすごい怖かったです」とか。



どうやら混乱してるらしい。
当然だな。急に襲われたんだし。
情報整理してんだろ。







てかオレもどうしよう。
なんか成り行きで幽霊を見つけてしまった。
殺そうともしたし。無理だったけど。


てかこいつアレだよな。原作キャラだよね。
ならスルー…………は危険だ。確か、物語が進めばこいつは人と話せるようになるはずだ。
誰かにオレの事言われたらアウト。


やべェ。いつもよってるコンビニだから気を抜いていた。
どうしよう………?



「あ、あの………!!」

女の子が意を決したように話し掛けてきた。


「ん?」

「は、はじめましてっ!私、3-Aの相坂さよと言いますっ!幽霊です!」


「………お、おお。はじめまして。こし……じゃなくて零崎興識だ」

つい勢いに飲まれて返事してしまった。
危ねェ。本名を言うとこだった。


てかなにこの流れ?
しかも幽霊と断言したぞ、この相坂なる娘は。


「そ、それでですね。実は、私と…………」

「テメェと?」

「とも、いえ、少しだけお話してください!」

「いや、それくらいならいいが………いいのか?オレはお前を襲ったんだぞ?」

「意味はわかりませんでしたけど、わざとじゃなんでしょう?」

「いや、まァそうだけど」

「ならそれも含めてお話してください!お願いします!」


「………」
まあ、話すのはやぶさかではないな。
このまま逃がすのはちょっちまずい。


「あの……?迷惑でしたか?そうですよね……」

沈黙したオレに、相坂が寂しそうな顔をする。


「………いんにゃ、全然いいぜ」

「ほ、本当ですか!!」


………はァ。やっちまったモンは仕方ねェ。
どうにかして説得するか。

もしもの時は、って。
幽霊ってどうやって殺すのかな………?
流石に殺人鬼の管轄外だろ常識的に考えて。










☆☆☆☆☆☆





さてさて。
オレ達は街灯のそばにあったベンチに座った。
オレは相坂の方を見ず、前を向きながら話しかけた。


「そうだなァ………ひとつオススメしとくが」

「はい?」

「オレの話を聞かず、さっきのことはすべて忘れた方がいいぞ?」

「な、なんでですか?私が………」

「いや、お前がどうこうじゃなくて、オレが怪物だからだ」

「怪物………ですか?」

「そうりゃあもう怪物だぜ?知らないほうがいいこと代表だ」

「…………」


相坂は考えている。


唯一の計画『全部全部忘れてもらいましょう計画』実行。



「それでも………聞きます」

「後悔するかもよォ?」


意地悪く哂ってみせる。


「……私は60年、ずっと一人でした。誰も私を見てくれませんでした。お祓い屋さんも、私を見つけてくれませんでした」

「……で?」

「だから、そう簡単に諦められません。聞かせてください」

「はァ………」



やべェ。
なんか情が移りそうなんだが。
人殺しに関する倫理は消滅したオレだが、それ以外はいたって変わってないし。
つか殺人鬼が情を移すって、ツッコミ所がありまくりだ。


まあ、いくらなんでもぶっちゃけりゃヒくだろ。
逃げたら……………もういいや。どうにでもなるだろ
時間はかなりあるし。解決方法が思いつくかもしれん。



オレは気負いなく相坂のほうを向き、眼を合わせて、言った。



「オレは殺人鬼だ」


びくっと相坂は体を強張らせたが―――――――――逃げなかった。


「………ん?逃げなかったな?」

「ど、どういうことですか?殺人鬼って…………?」


声が、体が震えている。



「言葉通りだが?人を殺す鬼はオレっつゥこった」

「じゃあさっきのは……………?」

「ああ、ついうっかり――――――――お前を殺しそうになった」


まあオレからお前に、なにかすることはできないみたいだがね、とオレは付け加える。


もう、かわいそうなくらい怖がっているのがありありとわかる。



「ほら。今からでも遅くねェからさ、さっさと逃げて忘れなァ?」

「………な、な、んで人を殺すんですか?」

「あ?殺人鬼だからだろ?」

「そ、そうじゃ、なくて」

「ああ、理由?ないぞ。んなモン。零崎にとって殺人は、何処までも何でもなく何でもなく何でもないものでしかねェ」

「り、理解できません」

「アホ。殺人鬼なんて言ってしまえば、どこか壊れた、狂った人間だ。そんなモノに論理性求めてどうすんだァ」

「ひ、人を、殺すのは、いけないこと、です」

「お前スゴイなァ、オレに説教かよ…………つか幽霊なのに顔が涙とかでぐちゃぐちゃになってんぞ。………あァと。なんだっけ?ソレは知ってるよ」



殺人で人は。
悲しむということを。怒るということを。怖れるということを。喜ぶということを。
オレは知っている。


一般的な基準による善悪は理解している。
その行為が人間社会に置いて『悪』とされることも認識している。
それによって殺人者がどう扱われどう見られるかを把握している
殺人をすることの不利益を知っているし、無意味さも承知している。



「でもオレは、零崎は、人を殺す。何も考えていなければ、息をするように、な。そういう性質なんだよ」

「わ、わかりません…………」

「あァ、それでいい。理解しようとするな。納得もするな」

「……………」

「ほらほら。オレのことなんて記憶から抹消して逃げな。なァに、後いくらかたてばお前と話してくれる人が見つかるさ。
断言してやる。あ、オレのこと言うなよォ?」

「あ、なたは」

「ん?」

「罪悪感は、ないんですか?」

「はァ。まだ質問するか。………ないな。ってか持てないと言った方が正しい」

「あなた自身は、人を、殺したいですか?」

「まさか。なんで楽しくともなんともねェことを、好き好んでやらなきゃいけねェんだよ。
オレにとって殺人は結果だ。殺したから殺した、それだけの話だ」

「……………」

相坂がオレの眼をしっかりと見つめた。
オレも正面から見据える。





「あなたは――――――――人を殺したくありませんか?」

「まさか。そしたらオレは殺人鬼を名乗れないだろォが」

「………そう、ですか」

「だが、オレは無差別殺人はしたくねェ」

「え…………?」


はァ。
結局全部の質問に正直に答えてしまった。



「殺したくないわけじゃない。だが積極的に殺したいわけでもない。だからオレは、オレに危害を加えない限り殺人はしたくねェ、と思ってる。
だからお前のは正真正銘の事故だ」

「抑えられて、いるんですか?」

「ばァか。人殺しは人殺しだ。結局の所、コレは必要以上に労力を使いたくないという、打算の上に成り立ってるオレの戯言だよ。
しかもだ、零崎を零崎と知った上で立ちふさがるなら。
親類縁者知り合い恋人顔見知り隣人等関係の薄い濃いに関わらず皆殺し確定だぜェ?くははははは」

「……………」



相坂は黙った。
オレはレジ袋からお茶を取り出して、飲み始める。


「………わ、私は、友達になってください、と言うつもりでした」

「ふゥん。止めたか。懸命な判断だ」


オレはお茶を喉に流す。



「いえ、友達になってください」



ブファ!!(茶を吹いた音)



「が、ごほ…………」

「だ、大丈夫ですか!?」

「正気かテメェ!?なに言ってんだ!?」

「正気ですし、本気ですよ?」



な、なんだ?
なんか吹っ切れた感じが…………。



「いやいや。止めとけって。な?悪いことは言わねェからさ?」

「ダメ、なんですか?」

「いや、ダメなわけじゃねェんだが…………いかなる理由で?」

「私はあなたを止めたくて、仲良くなりたいからです」

「…………ホワット?」


「触ることもできない、こんな幽霊ですけど。どう考えてもあなたにとっては迷惑なだけですけど。
それでも話せるなら、声が届くなら、私はあなたを止めたいです。知ってしまったから」


「…………」
ぽかァん。である。
唖然とするオレ。


「正直に言うと、あなたのことはまだ怖いです。でも私も寂しいんです。
それに、私の思い違いかもしれないけど、あなたは本当は優しい人だと思うんです。
だからこんな私に―――――――――――友達になって、友達としてあなたを、止めさせてくれませんか?」







その、あまりの言い分にオレは。


「く、くは、くははははははははは!!!!!!」

爆笑してしまった。



「え?え?あ、あの………?」

相坂が戸惑ったような声を出す。



「いや、失礼。そうだよなァ。
オレたちは、独りでは生きていけない
いくら強かろうが、独りというのはよろしくねェ。
だから、群れようじゃないか」


くく。と笑い。


「いいぜ。よろしく頼む」

「本当ですか!!」

「こんな悪にもなれない殺人鬼となんて、物好きだなァ」

「あ、あなたも、ヒック、こんな明日になったら消えちゃうかもしれない幽霊と、う、う~なんて~」

「ああ、それからな。どうせオレは一生殺人鬼だけどな」

「…………はい?」




「ああ言ってくれて――――――――――――――ありがとな。さよ」



相坂、いや、さよは爆発するように号泣した。



くはは。
まあこういうのも、一興かな。






―――――――――――――――十六夜の月の下、殺人鬼と幽霊は友達になった。


























ーあとがきー
色々な意味で本当に申し訳ありませんでした。
土下座!!


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.311820030212