シンポジウム「アジアのなかで沖縄現代史を問い直す―新崎盛暉『沖縄現代史』中国語版・韓国版刊行記念―」(主催・沖縄大学地域研究所)が29日、沖縄大学であり、韓国や中国、台湾など東アジア各地の歴史・文化研究者らが参加した。登壇したパネリストは、28日に那覇市で開かれた5・28県民集会に参加したことを報告。新崎氏の著書を読み解きながら、東アジア関係の中で沖縄の基地問題をとらえ直す必要があるなどと多角的に議論した。
パネリストで、中国社会科学院研究員の孫歌氏は沖縄に新たな基地建設を強いる日米共同声明に触れ、「28日は東アジアの研究者らと県庁前の抗議集会、デモに参加した。みなさんは決して孤独ではない」と話し、会場から拍手を受けた。
その上で、中国語世界で沖縄現代史への関心が高まっていると説明。「今後、中国社会の中で沖縄を新たな思考の場所として再創造することが求められている」と強調した。
台湾交通大学教授の陳光興氏も、抗議集会に参加したことを報告。
「日本と沖縄、朝鮮半島の南北分断、台中問題など、東アジアではいまだに戦後の冷戦の矛盾が解決されていない。沖縄の基地問題は日米間だけにとどまらず、国民国家の枠を超えた東アジアの地域共同体的な発想で考える必要がある」と指摘した。
同じく抗議集会に参加したソウル大学教授の鄭根埴氏は「現在の状況は、哨戒艦沈没事件と辺野古の新基地建設が同時並行して進んでしまっている」として危険性を指摘。
「沖縄の基地も南北の緊張も台中問題も互いに連動している。東アジアの分断体制を解体させるためには、市民社会の運動が寄与する部分が大きい。新崎氏の本の翻訳は、その市民連帯を活性化させるものだ」と説明した。
報告を受け新崎氏は「本が沖縄民衆に関心を持つきっかけになり、うれしい。日本では普天間問題で『抑止力』というと思考停止だが、沖縄では抑止はユクシ(うそ)だということが常識。その経験をどう生かすかが重要だ」と指摘した。