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【口蹄疫】「マニュアルは机上の空論」大阪府立大向本准教授

2010.5.28 23:15
このニュースのトピックス口蹄疫

 家畜の伝染病・口蹄(こうてい)疫問題で、大阪府立大の向本雅郁准教授(獣医学)は28日、産経新聞の取材に、平成16年に農林水産省が作成した口蹄疫マニュアル(防疫指針)は「机上の空論だった」として改訂すべきだと提言した。府立大は近畿地方で唯一獣医学科を持ち、この地域で口蹄疫が発生した場合、主力研究機関となる。主な一問一答は次の通り。

 −−感染をどうみているか

 「口蹄疫はこういうものだと予想されたこと。家畜の病気では、死亡率は低いので軽いというイメージがあるが、伝播(でんぱ)力が非常に強く、恐ろしい病気だ」

 −−なぜこれだけ広がったと思うか

 「口蹄疫は牛の病気だと思いがちだが、豚に感染したのが大きかった。豚は牛よりも100倍から2千倍のウイルスを体内につくり放出する。豚の感染力が高いというのは、教科書レベルで書いてある基本的なことだ」

 −−防疫体制をしっかりしていても防げなかった

 「ウイルスの媒体が、ハエやアブなどの昆虫となると、牛舎の構造上の問題がある。鳥インフルの場合は、防虫ネットを張っていたが、牛舎を完全に封鎖するのは現実的ではなかったのだろう」

 −−空気感染の可能性は

 「空気感染だったらもっと一気に、同心円状に広がる。今回は、割と順番に南下している。媒体の可能性としては、野生動物か昆虫が大きいのでは」

 −−このウイルスの特徴は

 「伝播力がインフルエンザよりも強く、ノロウイルスに近い。長時間滞留し、消毒に強いこと」

 −−本当に人に感染しないのか

 「だいぶ昔に牛を世話をしている人がかかったという説はあるが、現在、人に感染するという科学的な根拠はまったくない。うつらないので、食べても問題はないということになる」

 −−治らないのか

 「ほうっておけば治る。抗生物質はきかないので、栄養物質を与えるなどすれば1、2週間で治る。ただ、肉質は回復しないので、商品価値はなくなる」

 −−特効薬はないのか

 「ない。そういう薬ができたとしても、元を絶たない限りには、ほかに被害が及ぶ。治療薬ができても、防疫上意味がない」

 −−防疫マニュアルをどうみているか

 「机上の空論だった。マニュアル自体が、体験からつくられたものではない。マニュアルで対応できなかったのが、感染が拡大した原因の一つ」

 −−具体的な改善点は

 「マニュアル上、口蹄疫ウイルスの判定は動物衛生研究所(茨城県つくば市)でしかできないことになっている。それでは遅い。診断は迅速にすべきで、都道府県レベルの家畜保健衛生所に判定権限を下ろすべきだ」

 −−ほかには

 「早く殺処分して埋却ということになるが、今回の大規模な処分はマニュアル上も想定されず、埋却地が足らないという問題が起きた。感染しているのに、殺される順番待ちをしている状態を改善しなくてはいけない。マニュアルは当然書き直されるべきだと思う」

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