高校受験戦線に異状あり「開成高校より日比谷高校」がトレンドに
2010年4月
日比谷高校の完全復活

▽2010年の大学入試が終わる。今年の大学受験結果は、都立日比谷高校の歴史的大復活の話題でもちきり。週刊誌でも「日比谷」の文字が目立つ。

▽日比谷高校からの東京大学、京都大学合格者は44人。数年ごとのペースで倍増している。一橋大や東京工業大の合格者数増加率もトップ。サンデー毎日のおこなった「難関国立大学合格者数伸びた高校」でも、他校を完全に引き離しての全国一であった。

▽日比谷の1学年人数はおよそ320名。早慶大への現役進学者は、真ん中より下の下位160人が中心だ。今年は学年の成績最下位層の生徒も、早稲田大や慶應義塾大に現役合格を果たした。日比谷に落ちこぼれは存在しない。また、「入学時に成績最下位だった生徒が、今年現役で東大に入りました」(日比谷高校談)日比谷の教育力の高さには驚くばかりだ。

▽日比谷高校だけでなく、日比谷と共に都立トップ校の都立西高校、都立国立高校も、前年比で東大合格者を増やした。都立高校全体の東大合格者数は、10年前の2倍にまで増え、近年最高の数字を達成した。

▽都立高校の復活が、いよいよ本格的にはじまってきた。今年の大学入試結果は、それを強く思わせるものであった。

開成高校や筑波大附属駒場高校より日比谷を選ぶ受験生

▽都立高校の復活は、高校受験生の学校選択に大きな変化を与えている。数年前から、開成高校や筑波大学附属駒場高校などに合格しても、日比谷や西などの都立トップ校を選ぶ受験生が顕著になってきているのだ。

▽2010年度の高校入試では、その傾向に拍車がかかった。開成高校や筑波大学附属駒場高校の辞退者が急増して、多くが日比谷高校や西高校に流れた。特に筑波大学附属駒場高校は、都立の合格発表後に複数の繰り上げ合格を出した。「筑駒の都立入試後の繰り上げ合格は前代未聞」と塾関係者は驚く。

▽開成高校の例を見てみよう。開成高校は近年、高校受験から入学する高入生の学力低下が指摘されている。都立トップ校躍進との関連性はあるのだろうか。

▽中高受験に詳しく「合格サプリ」などの超人気ブログを運営する銀次郎氏はブログの「開成、MARCH合格者激増のなぜ」記事にて「高校受験では開成を蹴って、日比谷等の 「都立トップ高」 へ進学する者が増えている」と指摘して、高校受験の地位低下に原因を求めている(参照)。

▽大手進学塾である市進学院も、「開成など私立トップ校に受かっても、日比谷を選ぶ受験生が増えている」と話す(サンデー毎日より)。開成高校の合格実績低下は、日比谷など都立トップ校の躍進が原因という見方は、合っていると言っていいだろう。

東大を目指すなら開成高校より日比谷高校を目指せ

▽ただし、2010年の合格実績を残した今年の卒業生が高校受験時には、「開成や筑駒より日比谷という受験生はまだ一般的ではなかった」という。来年以降、開成や筑駒蹴り日比谷が急増した世代が大学受験を迎え始める。

▽つまり、来年以降は日比谷など都立トップ校がさらに東大合格実績を伸ばして、大躍進する可能性が極めて高い。一方、高校受験から優秀な生徒が入らなくなった開成高校や筑波大学附属駒場高校は、やや後退すると予想される。

▽高校受験生にとっては、中高一貫校へ高校からの途中入学するのは、負担が非常に大きく、好まれない。部活動や行事は内進生が中心になりがち。学習面でも、中高一貫校ではない高校単独校のほうが入学後に学力が伸びる。2010年の東大、京大現役合格率で、学芸大附属高校が日比谷に負けたのも、日比谷のような高校単独校のほうが学力が伸びやすいからだ。

▽したがって今後は「中学受験から東大を目指すなら開成」「高校受験から東大を目指すなら日比谷」というように、中学受験と高校受験で最優秀層のすみ分けが進む可能性が高い。

▽来年の2011年度入試は、開成高校が第二志望、日比谷高校が第一志望という受験生が増え、一般化していくであろう。

日比谷は東大80名を超える

▽受験関係者というのは、将来の大学合格実績の予想が好きだ。口では「大学合格実績は尺度の一つにすぎない」と言いつつも、やはり最重要な指標には違いない。

▽日比谷高校は、奇跡的ともいえる復活を遂げている。6年前、日比谷がここまで復活するとはほとんどの人が予想していなかったであろう。

▽前述の通り、2010年度は日比谷高校が東京学芸大学附属高校を、東京大、京都大、一橋大、東京工業大すべての難関国立大学の現役合格率で上回った。来年は東京学芸大学附属高校志望者が激減して、日比谷志望に切り替えるだろう。

▽いよいよ日比谷が最難関となる。そうすると、3年後には、日比谷高校の東大合格者が80名というのも十分考えられる。実際、塾関係者では、それぐらいの数値を予想するものも多い。

▽中高一貫校が増え、高校からの途中入学組が肩身の狭い思いをしていると言われる中、附属中学を持たない日比谷は、高校受験生にとって、今考え得る最高の高校に違いない。

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