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最強進学校化する都立日比谷高校の秘密 中高一貫校でないから実現する指導力 学年最下位層でも早慶大現役合格 (東京教育ニュース) 都立日比谷高校(千代田区)の大躍進が止まらない。数年前に東大合格者数を2桁に復活させ、2007年には28名に激増させ一躍注目を集めた。そして2010年、日比谷高校は東大に37名、京大に7名もの合格者を出し、近年最多記録を更新した。その秘密とは。 高校受験を経た東大合格者は日比谷が最多 2010年3月、日比谷高校には合格の桜が満開だった。最難関の東京大学に37名もの合格者を出したのだ。東大合格者の30名超えは、あの学校群制度導入数年後に記録した1972年以来、なんと38年ぶりという快挙。東大だけでなく、早稲田大や慶應義塾大の現役合格者も創立以来最高値、京大7名は首都圏トップとなった。 「東京の高校受験から入学した生徒だけでここまで合格者を出せるとは。」都内の受験関係者が驚くのも無理はない。最近の高校受験界では、「私立中高一貫校の高校入学者から東大合格者が消えつつある」ことが問題になっていたからだ。都内の偏差値上位高校である海城高校(新宿区)や桐朋高校(国立市)の高校入学組の難関大合格実績はが激減したことが問題となり、開成高校(荒川区)や筑波大学附属駒場高校(世田谷区)でさえも「以前と比べて高入生が東大に受かっていない」のだ。 国私立高校の難関大合格者は、内進生と外進生でどれほど差があるのだろうか。都内某男子高の説明会によると、「東大20人中、一貫生は19〜20人、高入は1人受かればいいほう。」だという。女子難関高の豊島岡女子学園高校は在校生いわく「高校入学者の東大合格者が出ると騒ぎになるほど、高校入学組の東大合格者は少ない。」 日比谷高校の大躍進は、東京都内でささやかれていた「高校受験を経て入学した生徒による東大の大量合格は不可能」という受験常識を見事に覆した。高校受験を経て東大に合格した数を抽出すれば、日比谷高校のそれは開成高校や筑波大学附属駒場高校をも抜きトップだという。 中高一貫校が失った3年間で伸ばす教育を実践 日比谷高校躍進の原動力となったのが、中高一貫校ではないという強みだ。国私立高校は中高一貫校体制を強め高校募集を減らした影響で、高校入学者を伸ばすノウハウが失われているという。高校入学者を無理に中高一貫カリキュラムに編入させようとするため、大きな無理が生じてしまうのだ。 日比谷は附属中学を持っていないため、内進生の存在を気にせず、高校入学者のためだけのカリキュラムを構築することができる。日比谷の教師陣は公募制で選ばれた精鋭揃いで、3年間で伸ばすノウハウを熟知したプロばかり。3年間で学力を最大限に引き上げる指導法を知っているから、日比谷の生徒は学力がどんどん伸びる。模試で定点観測を継続では、日比谷生の学力は他校と比べて伸び率が著しいことが分かっている。 塾なし東大合格組が多い稀少な進学校 日比谷高校が東京の他の国私立高校と比較して特異な点は、塾なし合格者が多いことだ。『名門復活 日比谷高校』の著書がある鈴木隆裕さんによると、日比谷高校の東大や医学部合格者には以下のような共通点があるという。 ・塾や予備校は基本的に通わず、学校の授業と講習を徹底活用している ・先生をフル活用して、納得するまで質問する 日比谷の通常授業はレベルが高いうえ、夏休みは夏期講習が100講座が用意されているように補習や講習も充実しているため、予備校に通おうとする人は非常に少ないという。たとえ高3になって通ったとしても、「苦手教科を1つ取るだけなど単科受講がほとんど」だという。 予備校の少ない地方の高校ならともかく、東京の高校でここまで塾なし合格者が多い学校も珍しい。開成高校や東京学芸大学附属高校などが「入学時より通塾はほぼ必須」と言われるのとは対照的だ。 最下位層でも現役で早稲田大や慶應義塾大に進学 だが、日比谷の教育力の高さは、東大合格者数よりも、いわゆる「落ちこぼれ層」の少なさをもってしたほうが証明できるかもしれない。日比谷高校からの早慶現役合格者は増え続け、創立以来最多の合格者となっている、 最近の日比谷上位層は、滑り止めで早稲田大や慶應義塾大を受けないという。「東大、京大、医学部に合格すれば進学、ダメなら浪人と決めている受験生が多い」という。そのため、日比谷の早慶受験者は下位〜中位層が最も多い。驚くべきは、ほとんどの受験生が早慶の合格を確保しているという点だ。日比谷の実力試験で最下位層の生徒さえも、早稲田大や慶應義塾大に現役で進学している。日比谷の驚異的な大学進学力を象徴すると言えるだろう。 国立や私立中高一貫校は、非常に落ちこぼれ層が大きくなり、下位層だと早慶大は厳しく、MARCHクラスでさえも難しくなる。6年間で中だるみして、勉強しなくなるからだ。その点、日比谷は3年間なので中だるみの心配が少なく、しかも下位層への面倒見も良いから、最下位層でも早慶大には合格できるというわけだ。恐るべし日比谷高校。 開成、筑駒、学芸大附属蹴りが急増 3年後は東大50人超えも 2010年度の高校入試で、ある異変が起きている。都立高校の合格発表後に、開成高校や筑波大学附属駒場高校などの合格繰り上げが急増したのだ。ある大手塾は「今年は開成や筑駒に合格しても、日比谷や西などの都立トップ校に進学する生徒が多かった」と話す。学力トップ層が、中高一貫校への高校入学を敬遠して、一斉スタートで高校入学者の東大合格実績が良い都立トップ校を選んでいる。 開成高校や筑波大学附属駒場高校、東京学芸大学附属高校なども、高校入学者の大学進学実績は下がっている。2010年の実績では、東大と京大の現役合格率で、東京学芸大学附属高校は日比谷に負けてしまった。しかも、部活動や行事でも内進生が中心となり、肩身の狭い思いをする高入生が増えている。 こうした状況が、都立トップ校への流れを加速されている。来年の高校入試では、開成や筑駒よりも都立トップ校という受験生がさらに増えるのは必至で、高入生の立場はさらに厳しくなることが予想される。 塾業界では、「日比谷は年々入学者の学力が上がっている。3年後には東大50人超えもある」という見方が強い。最下位層でも早稲田や慶應に合格しているため、既に早稲田高等学院、早稲田実業、慶應義塾、慶應女子などは都立トップ校の併願校化が進みつつある。 受験生は、こうした都立トップ校回帰の流れを敏感に察して、受験校選びをすることが求められそうだ。 |