(cache) 植村花菜「トイレの神様は本当にいると思う」…インタビュー(スポーツ報知)

　シンガー・ソングライターの植村花菜（かな、２７）が、亡き祖母との思い出を歌った９分５２秒の楽曲「トイレの神様」が社会現象化している。「誰もが泣ける歌」と口コミで人気が広がり、同曲を収録したミニアルバム「わたしのかけらたち」が発売から２か月で１０万枚を突破し、早くも小説化が決まった。植村は「おばあちゃんからのご褒美」とヒットを感謝している。

　―トイレには　それはそれはキレイな女神様がいるんやで　だから毎日キレイにしたら　女神様みたいにべっぴんさんになれるんやで

　トイレ掃除が苦手だった植村に、おばあちゃんが諭した言葉が、そのままサビになり、シンプルなアコースティックギターのメロディーとともに繰り返される。小３の時、隣に住んでいた祖父が他界。祖母ひとりでは寂しいだろうと家族が案じ、４人きょうだいの末っ子で、祖母に最もかわいがられていた植村は、祖母と２人で暮らし始めた。

　五目並べで遊んで、トイレ掃除に励んだ幼き日々。反抗期の衝突、おばあちゃんを家に残しての上京。おばあちゃんの入院の知らせと死…。祖母との心温まるエピソードや感謝をつづった「トイレの神様」は、涙なしでは聴けない“おばあちゃんの歌”として大ブレークの兆しを見せている。

　植村は０５年５月にデビュー。実力派の女性歌手と期待されたがヒットに恵まれず、昨年は本気で引退を考えていた。

　「自分ではどれもいい曲だって思ってるけど、頑張りとは裏腹に結果が出ない。どういう曲を書いていいのかわからなくなって、向いてないのかなと。やめたらどれだけ楽かなって。でも、まだやり残したことがある。２０１０年、死ぬ気で音楽にかけよう」。最後の１枚と覚悟したミニアルバムの１曲として生まれたのが「トイレの神様」だった。

　きっかけは音楽プロデューサー・寺岡呼人氏との雑談だった。「おばあちゃんと一緒に住んでいて、トイレの神様の話をしたら『超いい話だね、曲にしたら』って。ただの思い出話で、こんなん曲になりますかねって感じでした」。感謝と後悔、祖母との思い出をありのまま歌詞に込めた。メロディーは、祖母とよく聴いていた「テネシーワルツ」を思い浮かべた瞬間に完成した。歌っている間もおばあちゃんを思い出し、レコーディングでは何度も涙した。

　曲は９分５２秒。異例の長さだが、事務所社長は「曲を切ると、この曲の良さが全く伝わらない。１０分で意味を分かってくれる人にプロモーションしよう」と、テレビやラジオでフルコーラスでのオンエアにこだわった。レコード会社は「どのラジオ局も、曲が長すぎてかけてくれない。短いバージョンを作ってくれ」と猛反対。当初はほとんどのラジオ局もオンエアは無理だと判断した。

　だが、今年１月に関西ではＦＭ８０２、関東ではＮＡＣＫ５で曲が流れると、関係者が「開局以来」と驚くほど問い合わせ、称賛の声が殺到。４月にはフジテレビ系「とくダネ！」で歌い、ジワジワと人気が広がった。つい最近のテレビ局のアンケートでは、曲の認知度は８０％にも上り、テレビ、ラジオの出演オファーが相次いでいる。

　自身最大のヒット曲に「おばあちゃんのご褒美かな」とはにかむ植村。「トイレの神様は、当時は言われたまま信じてたけど、本当にいると思う。トイレはいつもキレイにしてるけど、今は『ありがとう』って言いながら掃除してます」。さらなるブレークが、大好きだったおばあちゃんへの恩返しになる。

　◆夢は紅白出場　大きな夢のひとつが、ＮＨＫ紅白歌合戦への出場だ。「出られたらホンマうれしい。親孝行になるし」。紅白では歌手の“持ち時間”は曲紹介も含めて４～５分ほどだが、フルコーラスにこだわるという。新人で歌唱１０分となると極めて異例だが、大みそかの夢舞台は実現するか。

　◆９月に絵本も　植村は６月１１日の東京・日本青年館公演からワンマンツアー（４か所４公演）をスタート。また、「トイレの神様」は予想を超えるヒットを受け異例の書籍化が決定。初の著書となり、曲と同タイトルで７月９日に発売される。植村が祖母と暮らすことになった背景や、楽曲の誕生秘話など赤裸々に告白し「歌詞の行間が明らかになります」。９月には絵本も発売予定だ。

　◆植村　花菜（うえむら・かな）１９８３年１月４日、兵庫・川西市生まれ。２７歳。１９歳から路上で音楽活動を始め、０２年のオーディション「ザ・ストリートミュージシャン・グランプリ」でグランプリ。０５年５月にシングル「大切な人」でデビュー。これまでシングル９枚、アルバム５枚を発売。身長１６１センチ、血液型Ａ。