2010年5月30日12時19分
ラッシャー木村さんの思い出を語るアニマル浜口さん=台東区浅草3丁目
生き方は不器用でも、温かさを秘めた人だった。腎不全による誤嚥性(ごえんせい)肺炎のため、24日に68歳で亡くなった元プロレスラー・ラッシャー木村さん。「金網の鬼」の異名をとり、ユニークなマイクパフォーマンスで人気を集めた。昭和を駆け抜けた名物レスラーの死をレスラー仲間たちは悼んでいる。
「木村さんはどんなに酒を飲んでも愚痴や悪口を言ったことはなかった。どっしりと構え、静かに飲んでいたね」
国際プロレスの後輩にあたるアニマル浜口さん(62)は浅草の自宅でそう語りながら、古いアルバムを見せてくれた。
大きな体を前かがみにしながら木村さんがカラオケでよく歌ったのが、森繁久弥の「銀座の雀(すずめ)」だったという。
♪たとえどんな人間だって
心の故郷があるのさ……
北海道北部の小さな町で生まれ育った木村さん。華やかなネオン街より、ひっそりとした路地裏を愛した。
浜口さんにとって木村さんは「終生の恩人」でもある。
1970年暮れ。浅草の体育館で試合中に右足骨折の大けがをし、入院した木村さんを若手が交代で見舞った。
ある日、「ハマ、飲みに行こう」と誘われ、病院を抜け出して浅草の街に。向かった小料理屋で紹介されたのが、当時店で働いていた妻初枝さん(69)だった。
「おれたち夫婦が出会わなかったら、娘京子も生まれなかった。木村さんは縁結びの神様なんです」