ネタりか

　女子プロレスが大いに人気だった９０年代。人気レスラーは次々と写真集やＣＤをリリースし、バカスカ売れたものだ。きょう登場の脇澤美穂さんは先日、妊娠を発表した元レスラーでタレントの納見佳容との「ミホカヨ」コンビで全日本タッグ王座に君臨した元アイドルレスラーだ。今どうしているのか。

「ワタナベエンターテインメント所属の『吉川☆ミホカヨ』ってお笑いコンビ、ご存じですか？　ワタシ、このコンビ名で芸人してるんです。相方はワタナベコメディスクール同期の吉川崇。４歳年下の彼がツッコミで、ワタシがボケ役です。もともとがドジだったでしょ。天然でお笑いやれちゃいます、ハハハ」
　ＪＲ目黒駅から歩いて３分のチャンコ料理店「時津洋　目黒店」で会った脇澤さん、こう言って笑った。
「デビューして１年、当然、まだ全然食えないんですよォ。それでライブがないときは夕方５時から１０時頃までココ、それから１１時から朝の５時まで赤羽の『すしざんまい得得』の２店掛け持ちでバイト中です。覚悟はしてたとはいえ、ホント、売れっ子芸人への道はチョー厳しいですゥ」
　バイトに追われるのは生活費もさることながら、各種オーディションやライブ出演のエントリーフィに加えて自主ライブの会場費、そして交通費がすべて自腹だからだ。
「定期ライブはワタナベエンターテインメント主催が月２回、他にコメディスクールの同期会と相方の仲間の自主興行が計月４回。あと、月に５、６回、いろんなライブにエントリーしてます」
　すべてノーギャラ？
「ハイ、ずっと持ち出しですよォ。今はお勉強させてもらって名前を売るのが最優先だから、しょうがありません」

　さて、千葉県生まれの脇澤さんは地元高校を中退して全日本女子プロレスに入門。９６年７月、１７歳のとき、東京・後楽園ホールでデビューし、その後は若手のエースとして注目され、納見佳容との「ミホカヨ」コンビで人気を得た。
「お笑い芸人なのでもうオンナは捨てましたけど、当時は“ワッキー”とか“元気でカワイイ”とかいわれてファンに囲まれてました。それが今じゃブス扱い。まさに雲泥の差ですね、ハハハ」
　９７、９８年とイメージビデオを発売し、２０００年にはつんく♂プロデュースで音楽ユニット「キッスの世界」を結成、ＣＤデビューも果たした。
「でも、頚椎のケガが原因で０１年、２２歳で引退に追い込まれました。今でも雨の日はしびれるように痛くなります」
　引退してからは居酒屋やパン工場で働き、２６歳でいったん帰郷。０７年１０月、たまたま目にしたピン芸人、青木さやかのコントに感激して翌年４月、ワタナベコメディスクールのお笑いタレントコースに入学した。
「サンドウィッチマンさんが結成１０年目でＭ―１グランプリに優勝してブレークしたことを思えば、ワタシたちはまだまだヒヨッコ。今の生活が厳しいのも芸を磨くための試練だと覚悟を決めてガンバりま〜す」
　都内のワンルームマンションにひとり暮らし。
　６月６日、新宿明治安田生命ホールであるワタナベエンターテインメント主催ライブに出演予定だ。

（日刊ゲンダイ2010年5月27日掲載）